いかがでしたか部下

オジョンボンX/八潮久道

いかがでしたか部下

「あの新規外注先評価、どうなってるんだっけ?」



先日営業担当が挨拶にきた

赤尾産業さん。

業界ではそれなりの取引実績も

あるそうです。


すでに他の競合も

発注しているという噂も!?

色々気になりますよね!



「は? うん、そうだね」



そんな赤尾産業さんの、

売上や規模、健全性や社歴を

まとめてみました!



「手短にお願いね」



もともとは電子機器の

商社をしていたという

赤尾産業さん。


なんと、取引先のメーカーを買収して

電子機器メーカーになったのだとか!


今は商社とメーカーの

両輪で事業をしているようです。

商社なのにメーカーでもあるなんて、

なんだかすごいですよねwww



「いやすごくないよ。割とそういうとこあるよ。報告中に草生やさないで」



メーカーを買収したのはいつ? どんな経緯?


商社でありながら、

メーカーにもなった赤尾産業さん。

どうやって今の姿になったのでしょうか?


調査しましたが、

経緯はわかりませんでした。

いつ買収したのか、経緯などを匂わせる情報は

私が見た限り見当たりませんでした!


苦境に陥った取引先を

立て直すために買収した。

そんなところではないでしょうか?

かっこいいですよね!



「それ君のただの想像だよね? 営業担当にでも聞けば会社のパンフの一つでもくれるでしょ。普通そこに書いてあるよね?」



社長の帽子が気になる! ブランドや取った姿は?



「いやそこ気にならないから。報告いらないよ」



赤尾産業の社長さん。

赤尾さんといいます。

そのままですねwww


SNSでの発信を積極的に行っていて、

ツイッターやインスタを頻繁に更新しています。

いつも帽子を被っています。

おしゃれに敏感なのかもしれません。



「へえそうなんだ……」



こちらが帽子を取った姿です!

なんだか、、、普通ですよねwww

普通のよくいるおじさんって感じです。

個人的には帽子を取った姿に

好感をもっています!



「何の情報を聞かされているんだよ俺は」



赤尾社長の帽子のブランドに関する情報は、

今のところ公表されていませんでした。


情報が入り次第追記していきます。



「いらないよ。追記ってなんなの」



赤尾産業さんの取引先は? どんな企業と実績がある!?



「それだよ。そこを先に教えてよ」



わかりませんでした!!


大きな会社との実績があるといいですね!!!



「いいですねじゃあないよ! 違う、ちゃんと会社訪問して説明受けて外部の評価機関も使って情報集めるんだよ!! 納期がちゃんと達成できるのか、経営リスクや調達リスクがどの程度あるか、価格や品質の優位性があるか、それを実際に自分の足と目と耳で情報を集めて構築するのが君の仕事だよ」



いかがでしたか。


電子機器メーカー赤尾産業さんについて

まとめてみました。


商社として創業し、

電子機器メーカーを買収!


社長は帽子を欠かさないおしゃれな人で

これからますます活躍が期待できそうですね!


取引も増えていくのでは

ないでしょうか!


楽しみですね!!



「どうなってる……これは……悪夢……としか言いようがない……私の話を何も……聞いていない…………係長、あなたは彼の教育係だし、この案件もサポートをお願いしてたよね…………」



まじでこの世の全ての課長に教えてあげたいんだがこいつの「いかがでしたかブログ」っぽさには全ての人間を虜にする禁断の空虚さがある。これがマジの無意味で超絶やばいからぜひ全国の「いかがでしたかブログ」好き、「いかがでしたかブログ」を愛する者たち、「いかがでしたかブログ」を憎む者たち、全ての「いかがでしたかブログ」関係者に伝われ。



「くそ、こいつはりょうくんグルメか! また仕事もせずにそんなことで時間を無駄にしてるの……? 今度からは真面目にやるって言ってたよね!? ネットのおかしなところを真似するのはやめなさーい!」



……。

……。



「なんで俺がしかるねこやったら黙るんだよ。なんか言えよ」



……。

……。



「なんなんだよ」



 係長と若手課員がお互い別々にあさっての方を向いて黙って立っているのを見つめるうち、課長は奇妙な感覚に襲われた。どういうことなんだ。彼らは何か、私にドッキリでもしかけているのだろうか。しかしいつまで経ってもネタバラシをしてくれないのはどういうわけだ。

 普段の彼らはこんな風ではない、普通の会社員だ。ここは大企業の、大手メーカーの調達部門だ。そうむちゃくちゃな人物はいない。それでも課長は考えるうちに、彼らが「今まではそうではなかった」ことに確証が持てなくなってきた。以前から、いかがでしたかブログのような、りょうくんグルメのような言い方をしていたのではなかったか。ずっと前から? 初めて彼らと出会った時から? そんなはずがない。理屈で「そんなはずがない」と思っても、どうしようもなくそんな気がしてくるのだった。



あれっ! インターネットのものまねしてる!



 課長が彼らに語りかける。



どうしたの!? そんなことしてたら仕事が進まないよ!?



 課長は自分で言葉をつむぎながら、ひどい違和感を覚えている。



それに、ものまねばっかりして内容がないと信用がなくなっちゃうよ!



 ほとんど嫌悪感に近い違和感が募っても、口から流れ出る言葉は止まらない。



インターネットのものまねするのはやめなさーい!!



 課長は自分で話しながら愕然とした。こんな言い方をしたいわけじゃない。なのに、勝手にこうなってしまう。しかるねこみたいになってしまう。インターネットのものまねをするなと言いながら、自分がそうしている。これは違う、そうじゃない。



まじでこの世の課長の現在は?家族は?年収は?

全ての人間をまじで禁断のやめなさーい!! やめなさーい!!

まじで課長がきこえますか……あなたの心に直接やめなさーい!!

直接話しかけニキ……今課長ニキのぜひ全国の課長の心に直接ただしイケメンに限るンゴ。

いかがでしたか。



 お前たちもそうなのか? 苦しんでいるのか? それともお前たちは普通に話しているのに俺がおかしくなってしまったのか?

 溶け合っていく。俺たちが、インターネットの定型文になっていく。穏やかで、安心感がある、もう何も考える必要がなくなって超絶やばいのだがわかりませーん!!

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