【Phase.5-3】新たなる友情と、不可視に潜む災禍

★続・今更だけど武器紹介シリーズ『射撃武器』編!


本作の主力武器であり花形の射撃武器。

一概に『銃』などと呼称するも種類は実に様々。共通するのは耐久力が皆無なことと、弾切れ時は弾装の再装填(リロード)が必要という点だろう。

弾丸数、連射、特殊機構等も吟味して武器選択を行おう。


β版では以下の武器種が用意されている。



【ライフル系】……両手推奨(片手でも持てるが精度が下がる)


►アサルトライフル(弾数:20)……攻撃力:B+/射程:A/精度:A

 大多数のプレイヤーが選択する高水準の人気万能武器。

 セミオート(単発)フルオート(連射)の切り替えが可能。


►スナイパーライフル(弾数:3)……攻撃力:A+/射程:A+/精度:A+

 高威力・長射程の狙撃用ライフル。

 セミオートでしか撃てず、汎用性にやや欠ける。


►アンチマテリアルライフル(弾数:1)……攻撃力:S/射程:S/精度:A

 単発式だがゲーム中でも最高クラスの火力と射程を誇る武器。

 反面、重すぎて持ち歩きはほぼ不可能 (パワードスーツを着てると運べる)。

 フィールド内で設置する場所を指定すると出現する変わったタイプ。



【ランチャー系】……片手/両手どちらでも可


►グレネードランチャー(弾数:1)……攻撃力:B+/射程:B/精度:C

 単発だが着弾点を中心に半径5メートルを範囲攻撃するため、追い込み等に向いている。

 イメージとしては特殊武器『爆弾/接触式』を投げるよりも遠距離に射出する銃。



【ハンドガン系】……片手専用


►ハンドガン(弾数:14)……攻撃力:C/射程:B/精度:A+

 火力は低いが扱い易く、予備武器としても人気で、ストックやスコープ等を付ける事も可能。

 『トライバースト』という瞬間的に火力UP・精度DOWNの三連射機能付き。


►マシンガン(弾数:60)……攻撃力:A+/射程:C/精度:C

 常時フルオートの特殊な銃で、直撃すれば粉々になる程の速度で連射する。

 しかし射程はなんと10メートル程度と銃系では最短。



【弓系】……一射毎に矢(本数は無制限)を番える必要有


►弓 (ロングボウ)……攻撃力:A/射程:B+/精度:B(両手専用)

 使い手の技術次第で性能が大きく変わる。

 矢が刺さると、矢を引き抜くまで持続ダメージ発生。


►弩 (クロスボウ)……攻撃力:B/射程:B/精度:B(片手専用)

 片手で手軽に使える自動巻き上げ式の弓系武器。

 矢が刺さると、矢を引き抜くまで持続ダメージ発生。



※今後のパッチで追加・調整される可能性も有り得るだろう。



──────────────────────────────



 リゼはウェアラブル端末のバイザー越しから、自分の腹上でと寝惚けまなこっすーく開いた猫一匹と目が合う。

 体重4.5キログラムの愛猫ホームズだった。



 ログイン時、リゼがベッドに横たわった際は居なかった筈。

 「いつの間に……」の言葉がこぼれたが、いずれにせよ丹田たんでん付近を寝床とされては、熱と重みで胃袋も強制的に活性化してしまうのは致し方ないだろう。

 ホームズはリゼの視線に気づき、へそを起点に伸び上がると、そのまま顔を洗いつつ舌を舐め摺っている。


「ってか、ソコに乗ってるって事はご飯の催促だよね?」

「オゥアーッ」

「ハイハイ。そんじゃ、リビングいくよー?」

「ナーッ!」



 ――流石に十八年も寝食を共にしてれば、人は猫の心中を察する事が出来るらしい。

 そして逆もまた然りの様だ。

 

 返事 (?)とともにホームズが腹上……否、ベッド上から降りると、リゼも立ち上がってと階下へ向かう。

 ホームズはその後ろをとした肉球で足音を極限にまで殺し、暗殺者さながらの音無しで自らの主人にスニーキング開始。その目は完全に狩人ハンターのソレであり、『飯を寄越せ』という純然たる欲望を只管にリゼのくるぶしへとぶつけていた。



 ……そのままの視線を受けて到着したのが、一階のリビング。


 壁にはリゼが9歳の頃にスチール撮影した写真が、マホガニー木材の額入りで飾られている……が、その前はいつもるのみで視線は送らずのスルー。

 『それよりも』と、傍らに備えたホームズのご飯皿を見ると、カリカリは数片しか残っていない。本当に腹を空かせてたのだろうと、リゼは「はいはい、ごめんねー」の言葉を添えて愛おしく目端で愛猫を捉えつつ、好物のカリカリを少し多めに皿へと盛った。



 黙々モグモグ。

 一心不乱に囓り付いているホームズの顔は、今や深皿の底辺に潜り込んで窺うことは出来ない。

 唯一得られる情報は、皿の中を「カラカラ」と踊るカリカリの音のみ。


「猫まっしぐら……こんな時ばっか野生に還るよね?」

「……」


 愛猫のASMR聴覚刺激をBGMとして聞きつつ、リゼもサンドイッチを行儀悪く摘まんで食べ歩きながら自室へと向かう。



 ――階段を上る直前、再び幼き自身の写真が目に入るも素通り。

 そのまま視線を反らすように窓の外を見ると、灰汁アクの様な鉛色の空が、庭に敷き詰められ咲く菖蒲アイリスへ暗い影を落としていた。


「……なんか、イヤーな曇り空だなぁ」




 ≫≫ 戦闘フィールド_荒野 ≪≪



「リーゼさんの案に乗っかった『なんとか~・かんとか』の組み合わせ、良いわね!」

「『オルタナティブ・アームズ』ね……案外上手いこと機能して、想定以上だったよ」

「呼び方に反応してくれた! もー、チョット聞いてよ。さっきエンドゥーがねぇ――」




 ――荒野フィールド、設定時刻は早朝六時、天候は曇り。



 朝日も射し込まぬ『天照あまてらさ』な空色は、彼誰かたはれ時にも等しくリーゼとミレイを薄く見下ろしていた。その要因たる雲霄うんしょうも、仄かな黒を交え漂う。

 雨雲には見えずの其れは、遥かに見える工場の煙突より排出されている煤煙ばいえん混じりの為なのだろうか?


 また地上には砂塵も時折舞い、剥き出す岩々が点在する荒れ野。

 そんな環境下には不釣り合いで愚痴にも近しい会話が、《チームチャット》として他者には聞こえぬよう密やかにこだましていた。


《――でー、私は対戦って好きじゃないんだけど……今日、男子たちがハマる理由が少しだけ解った気がするわ》

《ミレイちゃん、相手二人ともバッチリ止め刺したもんねー。やっぱ自分のイメージに近しい動きで勝つとカタルシスもあるよね》

《そうなの! エンドゥーと組んだ時なんて、アイツが全部倒しちゃうから『これ、何のゲームかしら?』ってなっちゃってたのよ!?》

《あー……想像つくかも。ハハ……》



 ――先程リーゼは軽めの昼食サンドイッチを僅か五分で摂り終えて戻り、「さて、どーするか」と思案していると、他の面子よりも一足早く戻っていたミレイに発見された。そこで「リーゼさんって対戦が好きなんでしょう? なら私と一回遊んでみようよ」と誘われたので了承し、ランダムで選ばれた戦闘フィールドの荒野へ来ていたのだ。


 そのまま二人で組み、ちょうど試合を終えたばかりであった現在――結果はほぼ圧勝。


 内訳は二人して一気に敵陣営へと攻め込む作戦……これはミレイが「銃はなんかシックリこないから」と言って、遠距離攻撃を完全にオミット排除した武器選択 (スタンガン、メイス、シールド)をしていたからだ。(ただ、スタンガンに関してはリーゼが「ある提案」をしてオルタナティブ武器に設定して貰ったものだが。)


 まずは接敵までリーゼの技術スキル、自称『ファントムブレイカー』で相手方の攻撃を無効化。

 そこから接近戦クロスレンジに持ち込んだミレイが盾を構えながら『オルタナティブ・アームズ』で設定したスタン・バトン(スタンガン+メイスの組み合わせ)で殴り込むスタイルだ。

 さきの「ある提案」というのは、スタンガンと一体化したメイスには電流が伝い、ガードされても電撃で相手へ一瞬の痺れを誘発。そこで生まれた硬直に対し、再度スタン・バトンでまた殴る……これの繰り返しで、文字どおり叩き伏せる『ハメ技』に近い案だった。


 元々ミレイの装備は近接武器としてかなり防御特化なうえ、更に追加仕様の『オプションスロット』へ防御力UPを二つセット。被弾上等な無理攻めでも耐えられるよう、ゲーム不慣れなミレイ向けの構成が地味に効いていた。

 お蔭様で彼女は、メイスに加えて豊満な胸部までも派手に振り回して勝利を掴んだ、というワケだ……対戦相手は彼女のなる胸に目が行って防御が疎かになった気もするが、事実は闇の中としておこうか。



 ――だが実のところ今回のハメ技は、NPCが販売するアイテム一つで容易に対策が出来る。

 恐らく明日には攻略法も広がって通用しなくなるであろう戦法のため『今日の内に使い倒そう!』という狙いであった。


《やー……格闘技素人の私がこんなに戦えるとは思わなかったわ》

ガー不(ガード不可能)の武器や盾まであるし、射撃偏重のこのゲームだと近接の対処法は案外少ないからねぇ》

《がーふ? ってのは良くわかんないけど、まぁ勝ったしいいや。でも何よりもさ……リーゼさんと組んでると自分が強くなった気がするわね。だって弾が殆んど飛んで来ないから相手に集中できるんだもん!》

《いやいや。シッカリ相手を抑えてたし、ミレイちゃんの実力さ》


 リーゼの台詞でニンマリと笑顔を見せたミレイ。

 とは良く言ったモノで、自身で掴んだ勝ちの喜びからメイスを砂上へと置き、その空いた手でハイタッチを求めてきた。

 勿論、味を共有するリーゼもまた、素直にほろ酔いの杯として片手を掲げて応じる。



 二人の掌がと薄暗い荒野に響くと、ミレイは笑顔のまま洩らす。


《ほーんとが増えて良かったわ。キャラが可愛く見えても、中身が男子って丸わかりなのばーっかなんだもの》

《へー、同性の友達が出来たんだ?》

《? 何を言ってるの? リーゼさんの事よ。私たち、友達じゃないの?》

《んんー? や、フレ(友達)だけど……同性って?》



 ……『はて? 同性? 何ぞ? リリィちゃん……じゃなくて自分?』と、のリーゼは困惑する。

 その様子にと気が付いたミレイが彼に一言。



《ねぇ。もしかしてリーゼさんって……女子バレしてないと思ってる?》

「――ぶぉおーっ!?」



 突然のミレイの言葉で、ついつい「オープンチャット」で噴き出したリーゼ。しかもこの後には「……なんで?」という台詞までご丁寧に添えて。

 最早、自供したと言って良いレベルだ。



《そりゃ見抜けますって。私、結構ガチのレイヤー(コスプレイヤー)で男装する事も多いのよ。こう見えても男性らしい動きとか勉強してクオリティ高いコスしてるんだから》

《コスプレイヤー様でしたか……いやいや! 椅子に座るときも足開いてたし、あぐらだってかくし――》


 ささやかな抵抗と言いながら解っているが、普段バレた事が無いので動揺から口を吐いてしまう。

 何せ普段は「リーゼはオッサンみたいだな」等と言われるシーンが(前作の相方から特に)多かった位だ。


《プッ……リーゼさん、弁明が座り方ばっかりよ? ――ええと、立ってるときや走る時とかのアクションとかでも判っちゃうわよ》

《……マジっすか?》

《マジですわよ。でも男装や女装を見慣れて無いと気付かないかもね》




 ≫≫ 14時11分_ファンタズマ中心部 中央管理棟 広場前≪≪



「リーゼ氏、ミレイ! お帰りー!」

「二人は先に戦闘ってたんだな」

「ミレイちゃんズリぃよー! リーゼクン、次は俺ちゃんと行こうゼ!」



 ――戦闘フィールドを抜けてロビーに戻るとエンドゥー、アツシ、ノースの三名が待っていた。アオイはリリィと同じく現実の用事で来れないという連絡が彼らの元へ届いていたらしい。


 そんな話をする一方、中央管理棟へ戻ったリーゼは中の人プレイヤーバレのショックで少し動揺が走っているままだが、ココでミレイから[ウィスパーチャット]が飛んでくる。



 @みれい ≫ Li_ZE [さっきの話は私たちだけの秘密にしようね!]



 ……ふとミレイの方を振り返ると、女の子同時の話を誤魔化すゼスチャーなのだろうか? 音の鳴らない口笛を「ひゅー! ひゅー!」と吹いていた(最早、空気が抜ける音のみだった)ため、リーゼは思わず『吹けないのかーい!?』と心の内側で鋭く突っ込んだ。

 そんな一面を見せられては、思わず信用の念とともに臆面なき笑みがと零れてしまう。



「お! そんなにイケメン顔を綻ばせて……ミレイと楽しめた様じゃないか?」


 エンドゥーが尋ねると、リーゼとミレイは二人、顔を合わせて笑顔で告げる。


「楽しかったさ!」

「楽しかったねー!」



 ――リーゼはその後、彼らと組みながら新要素を様々に試しつつ夜まで過ごす。

 結果、βテスト三日目を上々の『Rank.29』で終えたのだった。


 そう、明日より襲い来る悪意の渦に、今は気付かぬまま――



 ▸▸Logout……《MateRe@LIZE Nexus》.

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