【Phase.1-2】キャラクリを終え、希望あふれる世界へダイブ!
★《
発売間近のフルダイブ型VRゲーム 《MateRe@LIZE Nexus》は、シリーズ前作 《
タイトル名が長いので、今作を《ネクサス》と呼称するプレイヤーが多い様だ。
前作も対戦型VRゲームとして全世界に展開されており、個々にランキングが付けられる実力の世界。その中でリゼは、日本国内で第三位、世界ランキングでも九位の実力者。ガチNEETが本気で時間を割いた結果の現れと言えよう。
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直後、リゼの頭上には『Create Mode』という表示とともに、半透明である仮想体より仄かに光る粒子エフェクトが舞い始める。
その様子を確認したリアラックは僅かに頷くと「では、この中から選びたまえ」と手を掲げた。それを始まりの合図として、目の前にクリエイトパターンの選択肢が
1.現在の自分のまま確定
2.画像データをインポート
3.ゼロからパーツを選ぶフルスクラッチ
「んーむ……さすがに前作のデータコンバートは無いかー」
呟きつつもリゼは僅か三秒で『2』をチョイス。
まず『1』は論外。自分そのものがアバターになるなんて、恐ろしくて耐えられない。容姿に自信が無い……というよりか、長らくNEETをしている
『3』は一瞬だけ迷ったが、フルスクラッチとはパーツを選んで一人のキャラクターを生み出す作業だ。時間的余裕があるならまだしも、現在既に一時間の寝坊に加え、僅か二週間という短いテスト期間に対しキャラメイクに時間を割きたくない、という効率的理由で対象から外す。
理想はメイキングの手間が一切かからない前作のデータを引き継げるのが最高なのだが、選択肢に存在しないので、属性が近しい『2』が消去法で選ばれた形だ。
「『2』だね? では次にインポート画像を選びたまえ」
選択肢に応じたリアラックの台詞。同時に膨大な画像データがリゼの保有するクラウドデータベースよりリンク参照され、周囲をドーム状で取り囲むように展開されてゆく。
好きなゲームやアニメのキャラ画像、家族の写真、リアラックのようなゆるキャラ的なデータ、等々が実に一万以上も目の前に広がる。
「多っ! 絞らないとなぁ……前作は女キャラやったし、どうせ作るなら《
異性キャラクターになりきれる、というのもVRならではの醍醐味だろう。勿論なりきりには欠かせない声も、有名声優からのデータ提供があるので変更可能だ。
呟きつつも目に留まった男性画像が一つ。狙いを定めたリゼは「弟」とスクイーズコマンドで指定すると、眼前には実に三百枚程までディファインされた弟『桐生アレス』の画像がズラリと並んでいる。
その中より数点をタップすると写真を参照した立体モデリングが即時生成された。
目の前には身長186センチメートルの引き締まったスタイル、西欧系イケメンで金髪長身の成人男性が裸にも似た素体として立っている。流石に家族に対してなので、ほぼ裸の異性であっても特段の感情を抱く事は無い。
「昔は肥満児だったクセに、こんなふうに育つなんて……お姉ちゃん嬉しいよ」
本当は心にも無い事を棒読みで言いつつも「決定」とコマンドコールをし、リゼがゲーム内で使用するアバターのベースが決まった。
服装や髪型も変更できるので、中二ファッション嗜好のリゼは、弟を模したアバターへ黒いロングコートを着せ、髪型を赤いメッシュの入ったアシンメトリスタイルへ少し変えてみる。
声までも変えられ、人気声優名がズラリとリストアップされている。ココはリゼが子どもの頃から活躍するベテラン声優で、色気のある大人男性をチョイス。
弟アレス本人のファッション嗜好は、ネルシャツのジーパンシャツインスタイルというレトロオタクファッション。ハッキリ言ってセンスは皆無だ。
そこから大分と印象が異なったビジュアルロックバンド風のスタイルに加わるセクシーな声で、最早同一人物では無いレベルにまでカスタマイズされた。
「カッコいいじゃーん! アタシプロデュース、流石だじぇ」
と、自画自賛もそぞろ。「おっと、こんな場合じゃない……コレで決定!」と寝坊での遅れが精神的に尻を叩くので、アバターカスタマイズをこれにてフィックス。
RPGゲーム等と違い、職業選択やパラメータ割り振りも無い。自身の腕だけで戦う世界はこのへんがシンプルだと思う。
……逆を言えば完全実力主義の非情な世界とも言えるので、格闘ゲームやFPSゲームに特性は近いかも知れない。
「承知した。では最後に君の名前を登録したまえ」
「任せてっ! それは決まっているよ」
リゼはオンラインゲームをプレイする時、毎度付けているネームがある。本名を
男女キャラクター問わずに違和感無く使えるため、ここ二十年のNEET生活に於けるオンライン
「ほう、リーゼとな? 良い名前だ」
「いや、いきなしヨイショされてもねぇ……まぁ、うん」
若干渋った返答だが、実は自分のHN自体は結構気に入っているリゼ。満更でもないようでニヤニヤと口角が上がる。
……が、この瞬間に先程周囲を漂っていた粒子は身体の内へ収束。
伴い、いつの間にやらニヤついた顔は半透明だった自分自身ではなく、たった今メイキングを終えた弟ベースの『リーゼ』という男性アバターに変わっていた。
身長も30センチメートルほど一気に引き上げられたため、気付けば目線も随分と高くなっている。なんとリアラックの頭頂部が見える程に見下ろしているではないか。
「身長高っ! フルダイブ技術の恩恵ってヤツかー」
「これにてメイキングは終了だ。これより君は魔都『ファンタズマ』へと転送される。頑張って戦い抜いてくれ
「展開早っ! ……感慨無視か、このクマ野郎!」
「さらばだ」
「ちょっ! 急過ぎひん!?」
リアラックは別れの言葉とともに光の粒子になって即時霧散してしまう。
直後には先程まで立っていた海底の底床が抜け、広がる闇の中へとドロップしてゆくリーゼ。
唐突故に心の準備も無く一瞬驚きもしたが、よくよく思えば他のテスター達もこの手順を踏んだのだろうと、ゲームへのインを最優先とし気持ちを切り替えた。
≫ ≫ ≫
――進む先は先程泳いできた感覚質の海に酷似していたため、そのまま泳ぐように先へと進んで行くと、程なくして一際強い輝きを放つ光のカーテンが見えてきた。
隙間から覗かれるのは未来型SFテイスト……取り分けサイバーパンク寄りの街並み上空。中心部には高い塔のような建造物も見える。
「あれがクマの言っていた、ファンタズマってトコかな?」
街では既に幾多もの戦いが繰り広げられているであろう。想像するだけでβテスター達の熱量がそのまま伝わってくる気がして、此方まで気持ちが高揚してしまう。
こんな曖昧な筈の感覚さえも、肌で感じられるフルダイブ技術に興奮を禁じ得ないリーゼ。
「――いざっ!」
リーゼは眼前のカーテンを潜り、向こう側へと身を投じた――
≫≫ 11時23分_魔都ファンタズマ ≪≪
疑似的な
フルダイブの恩恵であろうか。頬を撫ぜる風、皮膚を通して感じる温度、虹彩が集める日の光……五感を刺激する
「ココがアタシ……ううん、
仮想都市ファンタズマの大地へと
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