第3話三通目

 拝啓

 前回の手紙も無事渡されて読んでいただいたようでありがとうございます。

 僕からは一切アプリケーションのほうのメッセージについて返事は出していないのですが、手紙を顧問の先生に渡されてからずっとメェーメェー音が鳴らされ続けています。

 あなたは相当怒っているようですね。文面から伝わってきます。言葉をひとつひとつ丁寧にと僕が書いているのにも関わらず、僕の手紙には突き放すかのような温かみがないとの指摘。重く受け止めています。

 メッセージからしきりに僕が何者なのか、会って話をしたいということですが、僕はカウンセリング部のルールに従って匿名で通すことを望みます。ですがあなたは彩さんと名乗っており、他のカウンセリング部の人とも接触しているとのこと。会うことで誤解を解くこともあったということがメッセージに書かれて送られてきました。ルール、ルールといっておきながら僕はまどろっこしい手紙という手段に頑固になってしまっていて、ルール違反はすでに僕側にあるということ。確かに正論ではありますが、僕は最初にカウンセリング部に入部するにあたり顧問の先生にこういう形での条件でならいいということを話しています。そのことも彩さんは顧問の先生から聞いていると思います。僕は顧問の先生に確認もとっています。

 たとえもし会ったとしても僕はうまく話ができる自信はありません。

 犯罪という失礼な言葉を使ったのは確かにいいすぎでした。お詫び致します。お怒りもわかります。独占したいというのを犯罪と結びつけた浅はかさは考えが至りませんでした。申し訳ありませんでした。

 隣の席にいたいという純粋なる気持ちを踏みにじってしまったことと、また黒魔術について饒舌に奮ってしまったことについては、自分の精神的幼さを露呈してしまい恥じ入るばかりです。

 前の手紙を出した後も席替えについては(これもルール違反につながるとは思いますが)顧問の先生にも相談をしてみました。ですが顧問の先生もこの相談事の解決方法は難しいとの意見でした。黒魔術もこの現代においては霊力的にも難しいとの意見でした。

 この手紙も最後だと思い、僕の今思う最高の答えをここに記したいと思います。

 席替えで好きな人の隣になる方法。

 それはもう「祈り」に尽きるのではないかと思います。また黒魔術の話かと誤解を受けそうですが、違います。

 人事を尽くして天命を待つといいます。最終的には祈るしかないと思います。しかし、祈りは通じると信じています。

 僕は彩さんが好きな人の隣の席になれるよう祈ります。そしてその隣の席の人が彩さんのことを好きでいられるように祈ります。そしてその好きな人が人のことをバカにしない優しい人でありますように祈ります。その人がずっと魅力であふれているような人でありますように祈ります。そしてその人が誰よりも彩さんの幸せを祈れるような人でありますように祈ります。

 僕の願いが届きますように祈っています。

最後まで手紙という手段を用いた我が儘につきあってくれてありがとうございました。

どうかお幸せに。

敬具

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