第35話 裸のおつかれさま会

 目が覚めると、バスルームにいた。


「……って、ここどこ?」


「控えパレスよ」

「え!?」


 リゼル先輩に後ろから抱きかかえられていた。

 バスタブに横になり、先輩に寄り掛かる姿勢だ。

 なんという超ゴージャスなクッション。

 というか、この姿勢は先輩に対して失礼なんじゃ。


 体を起こそうとする俺を止めるように、リゼル先輩の腕に力が入る。

「ダメよ。まだ魔力を補給中だから。ゆっくり体と魔力を癒やして」


「すみません……俺、また気を失ったんですね」

「ええ。でも、廃田を倒してから、まだ三十分しか経っていないわ」


「そうなんですか……ステラとネイトは?」

 薄れゆく意識の中で、なにやら言い争いをしていたような。

「彼女たちのことは、どうでもいいしょう?」


 ……あれ、ちょっと不機嫌そうな。


 俺の胸に回された手に力が入り、強く抱きしめられた。


 背中全体で、先輩の体の柔らかさを感じる。

 特に、おっぱいの弾力が凄い。

 というか、すべすべした肌の感触が……一応、水着を着てるっぽいけど、やけに肌面積が広いような気がする。


「とりあえず、魔王大戦への参戦資格も得たし、これでスタート地点に立てましたね」

「ええ……」

 先輩の声が沈んだ。


「どうかしたんですか?」


「……ごめんなさい」


「? どうして謝るんですか」


「本当は参戦を辞退するのが、あなたにとって一番安全。それなのに、私たちの都合であなたに危険を強いている。だから……ごめんなさい」

「先輩……」


「今からでも遅くないわ。もしユートが魔王大戦から降りても、私たちは――」

「嫌です」


 きっぱりと、強い意志で俺は言った。


「俺は魔王大戦で勝ちたい。みんなと一緒に。そして手に入れるんです。新しい未来を、可能性を。俺や両親が家畜扱いされたり、みんなが奴隷になる未来しかないなんて、俺は嫌だ。自分たちの未来は、自分たちで手に入れたいんです」


「ユート……」


 俺の後頭部に、先輩の額がこつんと当てられた。

「本当に……いいの?」


「リゼル先輩。さっきの、俺の戦いぶりはどうでしたか? 見込みナシですか?」


「とても……ステキだったわ」


 首筋に熱い息がかかる。

「魔王候補としても、一人の男の子としても……もし私が『恋人ラバーズ』のアルカナに従属する家系でなかったとしても……私は、きっと――」


 先輩の腕が緩んだ。


 俺はバスタブの中で振り向き、先輩と見つめ合う。


 お湯で温まったせいか、他の理由か、先輩の頬は上気し、瞳はうるんでいる。

 うっとりとした顔は、まるで恋する少女のようだ。


 頬に張り付いた黒髪が、とても色っぽい。

 清楚さと妖艶さが交じった顔は、俺に魔法をかける。


「先輩……」

「ユート……」


 自然と顔が近付いた。あと少しで唇が触れ合――


「お待たせ――っ!! ねーユート目さましたー!?」

「遅れて遅れて、スミマセンです!!」


 けたたましく開く扉の音がして、雅とれいなの声が飛びこんでくる。

 思わず俺は扉の方を向きながら、立ち上がった。


「……っ!?!!!!」

「ひぅっ!?!!!?」


 雅は俺を見ると慌てて顔をそらし、れいなは顔を手で覆った。


 だが、むしろ目を背けなければいけないのは、俺の方。


 二人とも、ギリギリもいいところなマイクロビキニ。


 紐のようなビキニでは雅の巨大なおっぱいを、どうやっても支えきれない。

 ぶるんと揺れると、乳首が見えてしまいそうでヒヤヒヤする。

 そして、下乳どころか上乳、横乳、全方位で頂点以外が全て明らかだ。


 そして下腹部も当然のように申し訳程度の面積で、色々見えそうな上、後ろを向いたら多分お尻は丸見えだろう。


 れいなも同じデザインのサイズ違い。よってこちらも、雅とは別の意味で危険過ぎる。


 微かに盛り上がった微おっぱいの頂点だけを隠している。

 下半身も股間の頂点だけを隠しているようなギリギリライン。


 ――ってことは、まさかリゼル先輩も同じ水着を?


 考えるよりも先に、先輩を振り返った。

「――っ!?」


 リゼル先輩は目を大きく見開いて、固まった。


 お湯の中に揺れる先輩おっぱいは、間違いなく同じデザインだ。


 ――と、いかん。本能に従って、つい見てしまった。


「すみません。リゼル先輩……つい」

「え……い、いえ……」


 どこか上の空で答えながら、先輩の視線は俺の股間から離れない。


 ん? 雅とれいなといい、何か反応が変な――、


 下を見ると、


 俺だけは、水着を着ていなかった。


 よく考えたら、そりゃそうだ。


 俺、水着なんて学校に置いてないし。風呂は普通ハダカで入るものだし。

 そして、寝起きのせいか知らないが、俺の下半身も本能に忠実な形になっていた。


 だから雅とれいなも!?


 振り向くと、雅は顔を横に向けているが、目だけはこちらをガン見。


「すご……あ、あんなのなんだ……」


 そしてれいなは顔を手で覆ってはいるが、開いた指の間から瞬きもせず俺を見ている。


「ひゃー……」


「うわぁああああああああっ!!」

 今さらながら、俺は股の間を押さえてバスタブに身を沈めた。


 み、見られたっ!?


「わ、悪い! みんな、へんなもん見せちゃって!!」


 雅は頬を赤くして、太ももをこすり合わせるようにしながらやって来る。

「ちょ、ちょっと……すごいデザインだなって……思っただけで、あははは……」


 れいなも頭から湯気を上げ、おどおどしながらも近付いてくる。

「で、でもでも、その……かっこいい、かなって、思いました……ですです」


 後ろからリゼル先輩が、肩に優しく手をかける。

「ごめんなさい。その……勝手にそんな格好にしちゃって。魔力の消耗が激しすぎて、普通の方法じゃ回復しそうになかったから……」


「い、いえ! 先輩が悪いわけじゃないですから」

「そうそう……だから、ユート。その、もっと見せても、いいからね?」

「れいなも、れいなも……イヤじゃありません……です」


 いそいそと湯船に入ろうとする二人。


「え、みんなで入るの?」

 確かに広いバスタブだから、四人くらい入れそうだけど。


「うん。確か、肌で直接触れる面積を増やして、水を媒介とすることで……えーっと、もうー何でもいいや!!」


 勢いよく雅は湯船に体を沈めた。


「きゃっ」

 そのせいで飛沫が飛び、リゼル先輩が顔をしかめる。


 俺は――お湯に浮かぶ、小さなビキニのブラに目を奪われた。

 それは役目から解放され、お湯の上を自由に漂っている。


 となると、守りを失った雅のおっぱいは、ありのままの姿でお湯に浮いていた。

 白くつるっとした肌と魅惑の曲線美。そして薄いピンク色に色づいた乳首。


 そうか、おっぱいってお湯に浮くんだ――なんてことを考えながら、つい見つめていると、雅は慌てて胸を隠した。


「あ、あははは、アタシも……見せちゃった。これで、おあいこ……かな?」

 雅は上目遣いで俺を見つめると、甘えるように微笑む。

「せ、せっかくだから……アタシはこの格好で、癒やしてあげるね?」


「え!? いや、それはやり過ぎじゃ……」


「で、でしたら……れいなも」

 れいなまで、背中に手を回しブラを解こうとする。俺は救いを求めるように、リゼル先輩を振り返る。


「先輩、何とか言ってやって下さい。みんな――」


「だったら、私もせざるを得ないわね……」

 リゼル先輩までもが、ビキニのブラを外そうとしていた。


 先輩もですかぁあああああああああああああああああああああああっ!!


 そしてこの後、


 未だかつて経験したことのない、極上の癒やしが待っていたのだった。

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