第22話:朝からパーティモードな母親と二人の美少女(一人全裸)

「おきて♡ ユート♡」


 ん……あぁ、朝か。


 まったく、『恋人ラバーズ』のアルカナも律儀に毎朝起こしてくれる……でも、今日はいつもと、少し雰囲気が違うような……?


「も~ねぼすけさんだねっ。シャキッとしてくれないと、いたずらしちゃうぞ♪」


 ……誰っ!?


 がばっと起き上がると、となりに金髪の美少女がいた。



 しかも――全裸。



 顔も、胸も、腰つきも派手というか……実にエロい。グラビアアイドルのように横たわったポーズで、にかっと笑う。


「おはよ♡ ユート」

「みっ! 雅っ!?」


 先日俺のカードになったばかりの夕顔瀬雅が、なぜか俺のベッドの中にいた。


「なっ! 何でこんなとこにいるんだよ!? 朝っぱらから!!」


「え~なにソレ? 夜だったらベッドに連れ込む気ってことぉ~?」

「違うわ! つか、もう入ってるじゃねえか!? 一体、どっから入ったんだよ!?」


「そんなの転移魔法に決まってるじゃん」

「そんな便利な魔法あるの!?」


 雅は小さな舌を唇の隙間から出し、いたずらっぽく微笑む。


「ごめん、うそ」


「嘘かよ!?」


「そんな超高度な魔法なんて、アタシには無理無理。だってアタシ、バカだし」


「じゃあ、どうやって?」


「浮遊魔法。窓の鍵開いてたから、入っちゃった。でもユート寝てるし、アタシも眠くなってきたから、ベッド借りようと思って」


 まさか俺たち……一晩中一緒に寝てたのか!?


「に、にしても……だな! 何で服着てないんだよ?」


「えー? だってアタシ、寝るときはいつもハダカだよ?」


「だからって人のベッドで――」


 そのとき階段を上がってくる足音が聞こえた。


「何を騒いでいるんだ? ユート」

「まずい! 父さんだ! ど、どこかに隠れてくれ!」


 慌てる俺だが、雅は悠然と寝そべったまま笑顔で答える。


「えー? どーして?」

「どうしてって! いや、当たり前だろ!? こんなとこ見られたら……っ!!」


 だが非情にもドアの開く音が響く。


「ユート、誰かい……」

 父さんの手からタブレット型PCが滑り落ち、足の上に落ちた。


「と……父さんっ、これは……」


 雅はいつの間にかシーツを体に巻いて、大事な部分を隠していた。


「初めまして、お父様。こんな格好で失礼致します。アタシは夕顔瀬辺境伯の娘、夕顔瀬雅と申します。以後お見知りおきを」


 予想外にしっかりとした自己紹介だった。ただし格好が全てを台無しにしているが。


 父さんは冷や汗を流し、唇を震わせている。

 奥手だと思っていた息子が、突然女を連れ込んで、しかも全裸で朝チュンとか、そりゃあショックだろう。


「あの、父さん。落ち着いて聞いて欲しい。これは誤解なんだ。雅は――」


「かっ! かあさぁああああんっ! たいへんだぁあああああああああああ!!」


 だから落ち着けと!



「夕顔瀬のお嬢様が! わ、我が家にいらしてるぞぉおおおおおおおっ!!」



 ――へ?


 再び階段を駆け上がる音がして、母さんが部屋に飛びこんで来る。


「まあまあまあまあ! もうこんな関係に……どうしましょう?」


 おろおろする母さんを見て、雅はよそ行きの顔で答える。


「お母様、アタシはユートくんと将来を誓い合った仲なんですの。契約も致しましたし、ご心配には及びませんわ」


 それって次期魔王になることを約束したってことだよね!? 契約ってカードになって一緒に戦うって意味だよね!?


「ゆーくん! もう婚約したの!?」

「違う! そうじゃない!」


「えっ!? じゃあ結婚しちゃったの!?」


 いかん、母さんが暴走している。


 そしてさらに、階段を駆け上がる音が聞こえた。今度は一体何だ!?


 バン! と扉が開いて、艶やかな黒髪の美少女が登場した。


「リゼル先輩!?」


 先輩は部屋を見回すと、俺の両親に視線を留めた。


「勝手に上がり込んで申しわけありません。私は姫神侯爵家のリゼル」


 父さんは口を大きく開けて絶句した。そしてうわごとのようにつぶやく。


「そ、そんな……姫神様のお嬢様が、こんなところへ来るわけが……」


 リゼル先輩は申し訳なさそうに頭を下げると、


「無礼は承知しております。しかし、息子さんの危険を察知しましたので、緊急事態と判断しました」


 危険!?


「まさか、他の魔王候補が襲撃とか!?」

「いいえ」


 リゼル先輩は恐い顔で雅を睨んだ。


「まったく油断も隙も無いわね……軽率な行動は慎むように言ったはずよ?」

「えーいいじゃん♪ どうせ魔力の回復に必要なんだし」


「今はする必要がないでしょう? 私たちがそうするのは、あくまで魔力を注入して、ユートを回復させる必要があるとき。それ以外は、自重しなさい」


 雅は少しムッとしたように言い返す。

「リゼル先輩だって、何でユートの家にいるの? 何しに来たの?」


「そ、それは……」

 痛い所を突かれたように、リゼル先輩が後ずさる。


「ユートを学園まで送るから……ついでに起こしてあげようって……思っただけよ」

 微かに頬を染め、怒ったように答えた。


「きゃあああっ! 姫神のお嬢様が照れてる! カワイイっ!!」


 母さん……お願いだから空気を読んで。


「母さんも父さんも、とりあえず一階に降りて。俺も起きるから――」


 突然、俺の腕に凄まじい弾力を持つ物体が押し付けられた。


「み、雅っ!?」

 雅はリゼル先輩に見せつけるように俺に抱きつき、おっぱいを腕にこすりつける。シーツ一枚挟んだだけのそれは、肌触りを除けばただの生乳だ。


「今日はアタシが送ってくから、センパイは先に行っていいよー。もっとイチャコラしたいし!」


「離れなさい! 雅! ユートは私の車で送って行くんだから!」


 二人の争いはヒートアップ。そして母さんのテンションもダダ上がり。


「ああっ! 夕顔瀬家と姫神家のお嬢様に二股だなんて! いつの間にそんな甲斐性のある子に育ったの!? 凄いわ、ゆーくん!」


「お願いだから、母さんは黙ってて……」


 炎上する二人に薪をくべる母に、俺は為す術もなかった。


-----------------------------------------------------------

『魔王学園の反逆者』プレビュー版をここまで読んで頂き、誠にありがとうございました!

 残念ながら、試し読みはここまでとなります。

(※緊急重版記念で、この後も少し追加しました)


 本格的に連載形式でWEBにUPするのは初めてでしたので、皆さんの反応を見ながら調整したり、PV数や★の数にワクワクしたりと、とても楽しかったです!

 令和元年9月1日(書店によっては前日か前々日くらいから並んでいるかも)にKADOKAWAスニーカー文庫より発売になる書籍版『魔王学園の反逆者』をぜひお手にとって頂けると嬉しいです!

 ぜひ感想などお寄せ下さい!

 ありがとうございました! 宜しくお願い致します!


久慈マサムネ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る