第18話:おっぱいから魔力
手の平に、この世のものとは思えない柔らかさと弾力を感じる。
「リ、リゼル先輩っ!?」
慌てて手を引っ込めようとするが、先輩は俺の手をがっしりつかんで放さない。さらに胸を突き出して、俺の指を胸に沈ませる。その柔らかさと弾力は、限りない優しさと慈愛、そして母性に満ちている。
「ユート、今日魔法を使ったわね?」
「あ……」
そういえば今朝、教室で三条に煽られて『
「キルガ相手には、全力の魔法でなければ勝てないわ」
先輩のおっぱいから、俺の指先を通って魔力が充填されてゆく。
「それと、優しさは禁物よ。相手の身を案じて手加減をしたら――死ぬわ」
「……はい」
先輩は、ふっと微笑むと、俺の手を胸から離した。
「勝つのよ、ユート」
「はいっ!」
俺が前に進むと、キルガを足止めしていたれいなが道を空ける。俺の姿を見つめ、キルガは顔を歪めた。
「愚かな……女の陰に隠れていれば、今日は生き延びることが出来たものを」
「みんなとは、まだ正式に契約を交わしていない。俺のために戦わせることなんて、出来るかよ」
「妙なことにこだわるものよ……にしても、貴様が腹を立てる理由が分からん。ゲルトは敵だぞ? しかも、貴様を相当に侮辱したと聞く。そんな奴のために、なぜお前が怒りをぶつける?」
「確かにゲルトの偏見は許せない。だが、こいつなりに仲間のために戦おうとしてたんだろ? 負けたからって、こんな目に遭わせるのは、もっと許せねえ! そんなの仲間でも何でもないじゃねえか!!」
キルガは怒りの形相で、剣を俺に向けた。
「ぬるいっ! ぬるすぎるわ!! あきれ返ってものも言えぬ! やはり人間ッ! 我ら魔族の末席を汚すことすら許されんッ!」
剣の切っ先に魔法陣が浮かんだ。
「『
それは『
すなわち、より高度で、より破壊力を持つ上位魔法。
俺のまだ知らない魔法だ。
アルカナに頼めば、修得出来るかも知れない。しかし、新たな魔法を覚えても、ちゃんと使えるかどうかも分からない。だから――、
「今の俺には『
俺も右腕を前に出し、指を広げる。同時に魔法陣が展開した。その魔法陣を見て、キルガは顔をしかめた。
「そのような初心者が使うような魔法……とことん失望したわ」
さすがに実力者。俺の魔法陣を一目見ただけで、どんな術式か理解したらしい。
キルガの魔法陣が輝きを増し、吠えた。
「死ね!! 盛岡雄斗ッ!!」
そして俺もまた、唸り声を上げる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
今もらったばかりの魔力を惜しげも無く魔術式に流し込む。
俺の魔法陣が輝きを増し、一気に巨大化した。
それはキルガの『
キルガは驚愕に目を見開いた。
「な……これが『
「『
俺の魔法陣から、炎が爆発したように吹き出した。
「ぐぁあああああああああああああああああああああああああっ!?」
キルガも剣で防ごうとしたが、それも一瞬。あっという間に炎に飲み込まれた。
体育館の床と壁が炎で燃え上がる。そしてキルガの体は壁に叩き付けられ、顔面から床に倒れた。
防御術式が編み込まれた制服のおかげで死にはしない。しかし、その制服ももう限界なのだろう、焼け焦げて煙を上げている。
「すごいです! すごいです! ユートさんっ!!」
れいながぴょんぴょん飛び上がって喜んでいた。
俺はお伺いを立てるように、リゼル先輩を振り向いた。そこには、満足げな笑みを浮かべるリゼル先輩がいた。
「満点よ♡ ユート」
れいなはまだ興奮が収まらないのか、ぴょんぴょん飛び続けている。
「ほんとにほんとに凄いです! あんな『
俺が答えに困っていると、リゼル先輩が代わりに答える。
「あれが、普通の魔族と王の差よ」
「ほえええ~」
れいなは口を菱形にして、感嘆の声を上げた。
「とにかくパレスに戻りましょう。先生に伝えて、午後の授業はお休みに――」
リゼル先輩の顔色が変わった。
「これは……」
「どうかしたんですか? せんぱ――」
背筋に寒気が走り、総毛立った。
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