雨と一緒に流れたものは
当時補習をしてもらうようになってからすっかり先生に懐いた私は
数学がある日は機嫌が良かった。
弓道の朝練にも力が入り、学校が開く7時には着くよう早起きしていた程だ。
でも周りの女の子達のように近くには行けなかった。
校内ですれ違った時に少し話す程度、なんとなく気になる存在で
補習の時に話せるだけで楽しかった。
「世良はお家が日本舞踊やってるんだって?」
たまたまその日は補習に出られるのが私だけで教室に先生と二人だけだった。
唐突に掛けられた質問い少し戸惑いつつも
「そうです、この前話してたのよく覚えてましたね。」
「やっぱ家では着物着たりしてるの?」
「学校が休みで稽古の日はそうですね、平日はそうでもないですよ。」
なんでそんなこと聞くんだろうと少し不思議にも感じたが、自分に興味を持ってもらう事に
嫌な気はしなかった。
「似合いそうだなと思って。」
「え?」
「なんかふとそう思っただけ。その問題終わった?」
きっと先生にとっては何気ない話を繋げる為の世間話に過ぎず、しかし当時16歳の私にはとんでもない発言で、意識しないでいられるわけがなかった。
10代の女の子なんて単純だ。
優しくされたら簡単に好きになるし、自分は特別だと思い込む。
目を開けると隣で寝息を立てている先生。
あの頃は泊まるたび眠れなくて良くこうやって寝顔を眺めてはちょっかいを出していた。
私は良い女ぶりたくて、都合のいい関係でいいよなんて言ったりしてなのに構って欲しくて
そんな子供なまま再会したから18歳の時ダメになったんだと思い込んでいた。
ただ先生にはそんな気が無かったっだけで、私が勝手に舞い上がっていただけなのに
年齢や立場、そんな事が原因だと信じていてそもそもそこにあったのは一方的な恋愛感情で
それでも、私が止まってしまったら終わってしまう恋だったから。
悲しいけどそれが現実だった。
今はどうなんだろう、また同じ過ちを犯そうとしているんだろうか。
私はただあの頃叶わなかった事が実現し喜んでいるだけなんじゃないか。
結局今も昔も自分が納得したいだけ。
いつまでも成長しない自分に呆れながらあの頃のようにキスを落した。
今も昔も彼が起きているのには気が付かないまま。
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