梅雨の思いを夏は知らない

外の雨が強くなってきた。

もうとっくに終電なんてなく、今夜はもうここに泊まろうか

タクシーで帰る手はあるけれど隣の男が起きる気配はない。

声を掛けずに出るのは流石に失礼か、もう少し隣で寝ていたい気もする。

でもまた昔のような曖昧でいい加減になってしまうのは避けたい

そんな自問自答を繰り返しながら居心地の良い腕から動けずにいた。


ダメだ、帰ろう。

冷静になってベッドから出ようとするが腕を掴まれてそれは叶わなかった。

「起きてるの?」

「帰るの?」

質問返し。

「帰ります。」

「なんで?あとまた喋り方戻ってる。」

また質問返し

「なんでと言われても、朝まで一緒に居る理由無いですし。」

「冷たいな、昔は朝まで一緒に居たのに。」

「先生も帰った方が良いんじゃないですか?」

「なんで?」

「なんでって、待ってる人いるでしょう。」

そう言うと少し驚いた表情を見せた。

「私も反省しています。既婚者と寝るなんて最低でした。なのでお互い無かったことにしましょう。」

「いやいや、待って。確かに結婚してた事もあったけど離婚して今は独り身だし、

そもそもなんで俺が結婚してた事知ってるの?」

「え、離婚されたんですか?だとしても今日のことは忘れます。」

「世良、質問に答えて。」

少し黙ってしまった。

本当のことを言ったほうがいいのか。

でも、今じゃない。

「風の噂で耳に入ったんですよ。先生、今日のメンバーで仲良いのいるでしょ?」

そう答えると少し考えながら納得したようなしていないような顔をした。

やり過ごせと思ったのも束の間、次の瞬間何故か私は先生に組み敷かれる形になっていた。

「何ですか?これ。」

「結婚してないって知って安心した?」

「修羅場にならなくて安心してます。」

「本当素直じゃないな、いつまでもそんな口調ならまた抱くけど?」

じゃあ、

「抱いたら?」

思いもよらない私の返答に驚いて固まっている。

自分でも驚いている。こんなこと言えるなんて。

でもあれから随分経ってあの頃みたいな子供じゃ無い。

もう良いや、もうどうにでもなれば良い。どうせ今更だ。


「抱いてよ、もう一回。」

そう言いながら先生の首に腕を回し身体を近づけた。

裸のまま寝てしまっていたのもありお互い服は着ていない。

こんな大胆なこと出来るんだと自分に感心する。

もう強がるのもやめた、この人相手にそんなことしたってしょうがない。

「早く埋めて。春くん。」

そうキスをせがむ私に

「やっぱり勿体無いことしてた。」

笑いながらそう一言呟くと先程よりも優しい口付けが降ってきた。










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