梅雨の思いを夏は知らない

七年前、私と先生はあの川沿いのカフェで会った。


「お久しぶりです。」

「待たせちゃってごめんね。世良久しぶり。」

先生は何も変わってない。

そんなに大きく無い身長とか、眼鏡とかなんだか顔を見たらほっとする自分がいた。

その日は食事をしながら懐かしい高校時代の話で盛り上がり、近況報告をし

帰宅に時間がかかる私を気遣ってくれ早めに解散した。


それからと言うもの、私と先生はよく連絡を取り合うようになっていた。

大学での出来事とか、お互いの何でもない日常の写真だとか。

そして私の気持ちは先生と会った時から固まっていた。

一臣と別れよう。いい加減きちんとしよう。

週末必ず出勤している私に対し、一臣は中々シフトに入っていなかった。

学校帰りは時間帯が合わないし会えないだろうと思った私は、自分のバイト終わりに店に寄ってもらえるよう連絡をした。

[明日の帰りに店寄るね、何か差し入れ買っていくよ。]

一臣からはそう返信が来た。


薄々向こうも勘付いているだろう。

そんな気がした。一臣自身も考えていたのだろう。

お互いずるずる一緒に居すぎてしまった。もっと早くにこうするべきだったのかもしれない。

バイト終わり、近くの公園で別れを切り出した。

意外なことに一臣は泣いていた。

これには少し驚いてしまい、悪いことをしてしまった気分だった。

「ごめん、俺も悪いのに。透香に言わせちゃって。気づいてたんだな。」

それも理由だけど、でも今回きちんと決断できたのは先生のお陰だ。


分かってしまったから。先生のこと忘れられないって。

「一臣だけが悪いんじゃないから。私もズルズルとごめんね。」

二人ともちょっとタイミングが合わなかっただけ。

「色々応援してるから。」

そう言うと一臣は少しぎこちなく笑った。


一臣との付き合いは良い思い出ばかりだ。

高校三年生にして初めて他校の彼氏ができて、制服で放課後デートをしたり

今までの高校生活は部活や家業のことで毎日がいっぱいいっぱいで辛かった。

でも部活を引退して初めてのバイトをして、学校以外での人との繋がりがあって。

その中でも一臣との時間は新鮮で、今まで知らなかった世界が広がった気がして楽しくて仕方がなかった。


「本当に楽しかったよ。有難う。バイトでも会うだろうしさ、

もし嫌じゃなかったら仲良くしようよ。」

「透香が良いんだったら、うん。」

「良かった。」

同じバイト先なのにぎこちなかったら他のスタッフに迷惑かかる、そんな状況は出来るだけ避けたい。

「お互いさ、頑張ろうよ。」



こうして私達は恋人としての関係に終止符を打った。

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