全てのお話にあの頃がつく
「Aセット、飲み物はアイスコーヒーでお願いします。」
注文を済ませてメニューを店員さんに渡した。
そう言えばスマホほっといたままだ。
カバンの奥から連絡が溜まっているであろうそれを取り出し嫌々画面を見る。
「あれ?思ってたより。」
来ていたのは楓からの二件と一臣から一件。
楓は後でいいや、珍しく来ていた恋人からのメッセージを開く。
[今月バイトの日以外ずっと学校で勉強会になった。連休も会えないのにごめん。
また次のバイト被ってる時にゆっくり話そう! ]
バイト先が同じな彼にはシフトが被れば暇な時に話せるから会えないのもあまり気にしていなかった。
新生活が始めたばっかだし、学んでることも特殊で少しは理解しているつもりだ。
でも、少しモヤモヤするのはなんでだろう。
付き合い始めてまだ四ヶ月、それでもお互い新しい環境に慣れる為に必死で
デートらしいデートも高校を卒業してから一度もしていない。
思えば付き合い始めの一、二ヶ月しか出かけたりしていないかも。
「お待たせいたしました。Aセットでございます。
アイスコーヒーは食後にお持ちいたしますね。」
「ありがとうございます。」
やっとありつけたランチを食べ始めようとした時にハッと気づいた。
楓からのメッセージ見てないや。
うーん。食べ終わってからでいいか。
大好物のほうれん草のキッシュを口に放り込んでお腹を満たした。
ランチを食べ終わり可愛い店員さんがタイミング良くアイスコーヒーを運んできてくれた。
ここいいカフェだな。
1人でも居心地が良く過ごしやすい。
川を眺めながらゆっくり出来るのもこのカフェの人気の秘密だろう。
そんな事を思いながら楓からのメッセージを開いた。
[行きたかったカフェどう?]
[春ちゃんに透香が学校のある駅にサボり行ってるよってメール送っておいたよ〜!]
思わずコーヒーを吹き出しそうになった。
[なんの報告してるの!それも急に。先生もビックリするでしょうに。]
急にこんな遠くにサボりに来てるなんて聞かされても困惑するだけでしょ。
返事はすぐに帰ってきた。
[春ちゃんの連絡先知ってるんでしょう?連絡来るかもね!会えたら写真撮ってきて〜]
[相変わらず楓は先生のファンね。]
[私からしたら透香の春ちゃんへの興味の無さが信じられないよ、そのくせ連絡先は交換してるんだから。]
連絡先交換してるのは流れだけど、興味が無いのは違う。
[とにかく!連絡来たら教えて、私のとこには今のところ返信ないから]
[連絡ないって、それ悪戯だと思われてるんじゃないの?]
そこから楓から返信は無かった。
おおかた授業中寝てしまったのだろう。
あ、私の代返してくれたか聞くの忘れた。
なんて午後の授業の出席の心配をしながら残りのアイスコーヒーを飲み干してカフェを後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます