全てのお話にはあの頃がつく

私が先生に再会したのは春も過ぎて梅雨にさしかかろうとしていた5月の終わりだった。


大学に入りたて僅か1ヶ月少しで心が折れそうになっていた。

当時高校生の頃から付き合っていた恋人がいて、彼とは別々の学校に通い地元で同じアルバイトをしていた。

順風満帆な大学生活を送るんだろうと、

しかしそう上手くは行かず、この性格も災いし衝突が起きてしまった。

ほんの些細な小さなことだったのだが、生徒数の少ない小さな大学だった事と

通学時間が異常に長い事に嫌気がさしてしまい、どんどん大学から足が遠きはじめた。


それでも出席を気にしながら大学に行こうと通学する為電車を待っていたのだが、


「今日サボってもまだ出席大丈夫か…」


本当にふっと自然に体が反対ホームの列車に吸い込まれた。

それは下りの鈍行列車

「取り敢えず行けるとこまで行ってみよう」


ストレスで夜眠れなくなっていた私は座席シートに腰掛け心地の良い揺れに身を任せいつのまにか意識を失っていた。



突然滅多に聞かない音と少し後に列車が揺れた。

大きな警笛のあと急ブレーキがかかったのだ。

少し体が持っていかれそうになり飛ばされないよう手すりをしっかり掴んだ。

寝起きにしては反射神経が良かったのか、それほど揺れが大きくなかったのか

うつらうつらしていた頭もそこでハッキリ冴えた。


「お客様にお知らせいたします。

ただいまこの列車は線路内へ人の立ち入りがあるとの信号を受け確認の作業を行なっております為、当駅で少々停車いたします。

お急ぎのお客様には大変ご迷惑をおかけいたしまして申し訳ございません。」


長い間寝ていたらしい、隣の県に入っていた。

どうしようか、このまま戻るのもなんかな…電車止まっちゃったしお腹すいたし。

時計は12時前を指していた。


スマートフォンを出し近辺のカフェを検索した。


「あ、ここ。」

検索結果に出てきたのは、古民家風でおしゃれなアンティーク雑貨が置いてある川沿いのカフェ。

今度の連休に遠出をする際行こうかと恋人の一臣と話していたが、

結局向こうも学校とバイトが忙しくその連休も会えなくなっていた。


「二つ先の駅だけど止まっている電車とは違う路線だし、折角来たし1人で行っちゃおうかな。」


私はその先へと続く電車に乗り込んだ。

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