それいけ!カナエタロウ

さば・ノーブ

  それいけ! カナエタロウ

雨が降る中を傘も差さずに歩いて来る少女が独り・・・



俯いた顔は、何を想っているのかかげが濃かった。


学生服を雨に濡らし、持っている傘も差さずにとぼとぼと歩いて来る。


何が彼女にあったのか?

何を想い詰めているのか?


思いつめたような表情が、彼女の心の内を表わしているようにも見えた。




ここは裏町。

昼間も人通りが少ない、日陰の裏道。


こんな場所にそぐわない少女が独り歩いていた。


俯いて歩の進むまま

唯、思いつめた表情で・・・


雨に濡れた髪で顔半分隠した少女が、ふと顔をあげるとそこには・・・


「こんな所に・・・喫茶店なんてあったんだ」


裏道で人通りも少ない所にある、小さな喫茶店から灯りが漏れている。


思わず立ち止まって中を覗き込んでしまう。

灯りがどことなく薄暗く、どことなく妖しげだった。


店構えはちょっとしたアンティーク風だが、それが店を余計にみすぼらしく見せていた。

ボックス席もない狭そうな店内に、カウンター席が6個あるだけのこじんまりした店。


立ち止まっていた少女が再び宛てもなく歩き出そうとした時。


「お嬢さん、お入りなさい」


店の中から男の声が招いてきた。


「えっ?!」


振り返ると店のドア越しに男の人が手招きしているのが解る。


「雨宿りでもしていったら?」


手招きしている初老の小父おじさんが、勧めてくる。

少女は始め驚いたように眼を見開いたが、

自分には小遣いが無い事に気が付いて断った。


「私、お金がないの・・・すみません」


謝ってお辞儀してから立ち去ろうとすると、小父さんが店から飛び出してくる。


「そんな事はどうでもいいのさ、お入り!」


半ば強引に手を掴まれた少女が驚き、


「ちょっと!入らないってば!」


怪しい小父さんの手を振りほどこうとした。

だが、男の人の力には敵わず店の中へ連れ込まれてしまった。


「お代なんて取ろうとは思っちゃいないさ。

 君の顔をみれば、何かを願望しているのが解るから」


少女は連れ込んだ男を見上げる。


「本当?」


雨に濡れた髪から漏れる瞳が訊いた。


「ああ、お代はいらない」


カウンターに戻った小父さんがタオルを手渡しながらそう答えた。


「違う・・・私の顔に何が見えたの?

 私の願望って何だと思うの?」


タオルを受け取ったまま、拭こうともせずに少女が訊ねる。

カウンターに戻った小父さんがミルを手で回しながら。


「それを聴きたかったんだよ、君。

 どうしてあんなに暗い顔をしていたのかを・・・ね?」


はっとしたように少女が小父さんを見た。


カウンターに居る初老の小父さんは、こんな店にはうってつけの・・・

でもない、普通のオジサンだった。

短い髪をボサボサにした、やせ型の普通のオジサンだった。

唯、ちょっと違うのはおせっかい焼きらしい事。


てきぱきとコーヒーを沸かしていくオジサンの手を見ながら、

少女はやっと濡れた髪を拭き出した。


「コーヒーでいいよな?ミルクと砂糖は自分で入れておくれ」


容れたてのコーヒーの良い香りが狭い店内を支配する。


「あ・・・ありがとうございます」


カウンターから延びた手が、カップソーサーを目の前に据えると。


「で?君は?

 どうしてこの店の前に来たんだい?」


人懐っこい声で聴き始めた。


「・・・・」


少女は拭いていた手を停めて、カップに眼を落とした。


「この<願望>に来るって事は、何か願いがあるんだろ?違うかい?」


少女は店先に出してある看板に眼を向けた。

その看板には<願望>と、店名が刻まれてあった。


何も答えない少女を観て、男は気を和らげる為か自己紹介を始めた。


「おっと、これは失礼。

 先ずは自己紹介でもしとかなくちゃな。

 俺はこの<願望>のオーナー兼店長の・・・

 金江かなえ 太郎たろうって奴。

 で?

 君の名は?」


にやにや笑いかける男が胡散臭いのか、少女が口籠っていると。


「君の名は・・・観た事ない?あははっ」


おやじギャグをかましてきた。

余計に胡散臭かったのだが、少女は漸く一言。


夢野ゆめの 早紀さき・・・・」


名を名乗る。


「ほほぅ、早紀さきちゃんか・・・中学生だね?」


この辺りに住む者には制服で解る筈の事を太郎が訊ねる。

黙っている早紀に、太郎が肩を竦めて。


「温かいうちに呑んだ方が良いよ。

 冷えてしまったら苦くなるからさ、コーヒーって」


先ずは早紀の口を溶かそうと熱いコーヒーを勧めた。




「どう?旨かったかい?」


太郎はニコニコ顔で、呑んでいた早紀に訊いて来る。


「はぁ・・・まぁ。ミルクと砂糖でなんとか・・・」


苦笑いを浮かべる早紀に、うんうん独り頷いた太郎が訊く。


「それで早紀ちゃんはどうして傘を持っているのに差さずに歩いてたの?」


早紀の足元に置かれてある傘は開かれた跡が見えない。


「それに何故あんなに暗い顔をして独りで歩いてきたの?」


少しだけ、ほんの少しだけ。

先程までとは違う表情になった中学生の少女に訊ねてくる。


「あ、恋愛とか?失恋でもしたのかい?」


太郎は年嵩を利用して聴き辛い事も平気で訊ねる。

だが、早紀はあっさりと首を振って応えた。


「むむむっ?!違うのか・・・じゃあ、何か身体の調子が悪いとか?

 不治の病とかに冒されているとか?」


もし病人だったら、こんな雨の中を独りで歩いては来ないだろう。

解って言ったのか、本気でそう考えたのか。

掴み処のない太郎の質問に、早紀は思わず・・・


「ぷっ。太郎さんってどこまで本気なのですか?」


噴き出し微かに笑った。


少女早紀の笑い声に太郎は意外だと言わんばかりに身体を逸らした。


「それは早紀ちゃんが答えてくれないからさ。

 君の事が気になって招いたんだから、<願望>に。

 この店の中で願いを話してくれると思ったからさ!」


真剣な顔でカウンターから身を乗り出して来た太郎に、

迫られた早紀が、今度は身を逸らした。


「え?!

 願いですか・・・私の?」


そう答えた早紀が、また・・・暗い表情になった。


「なんだよ?

 そこで暗い表情になるなよな!

 願いを聴こうって言ってんだぜ?そんなに重い願いかよ?」


太郎が口を割らす為に話し続ける。


「そんな暗い事を抱え込んでちゃこの先、生きるのが嫌になるぜ?」


太郎の一言に、早紀の身体がビクンと撥ねた。


「おや?どうやら早紀ちゃんは何かに囚われてしまっているようだね?」


感が鋭いのか、それとも単に思い付きだけなのか?

太郎の話にやっと早紀の口が紐解き始める。


「私の願いは・・・こんな世界から逃げ出したい。

 私を虐める人達から逃れたい・・・どこか誰も知らない世界へ行ってしまいたい。

 友達や先生から見放されて、虐められ続けるなんてもう耐えれない・・・」


中学生早紀の口から洩れたのは、自暴自棄の一言。

両手を膝の上に置き、震える声で話したのは孤立感の吐け事。


「ふぅ~ん・・・早紀ちゃんはそれで何を願うというの?」


太郎の瞳がぎらつく。

目の前に居る、中学生を見詰めて。


「・・・誰に話しても解決しない。

 両親にだって本当の事を話せない・・・私は独りボッチなんです。

 どこにいても苛めを受ける・・・SNSだって・・・」


中学生はスマートフォンを取り出して太郎に表示されている文字列を晒した。

そこには、幾人かのメールが映し出されていたが。

そのどれもが辛辣なる文字で飾られている。


  <<ゴミ!>>

 

  <<死ね!>>


数え上げればきりがない程の悪意の文字が、

読んだ者の心まで葬り去ろうとしているかのようだった。


「なるほどねぇ・・・今の中学生は便利さを逆手に取るのが上手だねぇ」


スマホから眼を放した太郎が当て外れの感想を言った。


「・・・私、もう耐えれないんです。

 学校に行けば虐められ、行くのが嫌だと親に言えば怒られるだけ。

 だから・・・行く処がないの・・・助けてくれる人もいないから・・・」


早紀が思いつめていたのが<苛め問題>だと解った。


太郎は何かを考えていた振りをして、訊ね返した。


「じゃあ、早紀ちゃんの願いは?

 何を望むの?何が願望なんだい?」


太郎の眼が妖しく光る。

しかし、当の早紀は気がついてはいなかった。


「・・・私・・・この世界から・・・消えてしまいたい。

 一度死んで・・・生まれ変わりたい。

 <<苛めを受けない人生をやりなおしたい>>

 ・・・それが今の私の願いなのです・・・」


呟いた早紀の声が、アイツに届いてしまった!


「そーいうことね?!

 夢野 早紀 ちゃんの願い。

 早紀ちゃんの願望・・・確かに聞き届けたよ!」


太郎の声がなんだか先程までとは別人のように甲高かったのに気付いた。

そしてカウンターに居た筈の太郎の姿が見えなくなっている事にも。


「え?太郎さん?マスター・・・どこ?」


狭い店内に隠れる所は無い筈なのに、太郎はかき消される様に消えていた。




((パタポアタパタ))


何処からともなく聴きなれない2サイクルエンジン音が聞こえてくる。


「?! 」


早紀は店の前で停まったエンジン音に振り返ると。


そこに・・・ヤツが居た。


「あーっはっはっ!

 夢野 早紀!

 お前の願いをカナエタロウ!」


・・・・・


早紀は眼を疑った。

この人物がそこに居るなんて。


短い髪を白髪に戻し、濃いグラサンを掛け・・・鼻の下に着け髭をした・・・

見るからに怪しすぎる男の姿。

更にはどこから出してきたのか、ラメ付きの上下のスーツを着ている。


そいつが早紀に指を差して叫んだ。


「この私!

 お前の願望を叶えてみせよう!

 この超人ちょうじんカナエタロウ・・・がな!」


・・・・

どうみても・・・

どうころんでも・・・


「あの・・・太郎さん?何を叫んでいるのですか?」


眼を点にした早紀が訊ねる。


((びっくぅっ!))


おかしな格好をしたカナエタロウが飛び退いた。


「なっ、何を言うのかね夢野 早紀君!

 私は超人カナエタロウ!

 太郎とは別人だ!別物だ!!」


い、いいやぁ・・・解るって。


パタパタ手を振る早紀が。


「どうされたのですか太郎さん、その恰好は?」


「太郎じゃなーいっ!カナエタロウだ!」


思いっきり否定する変なおじさんに、早紀は耳を塞いだ。


「それでは夢野君、君の願いを叶えてあげよう!」


まだ濡れている白髪頭から水滴を垂らしつつ、カナエタロウが早紀の手を掴む。


「えっ?!

 太郎さん、どこへいくんですか?お店は?」


まだ店内の照明も鍵もかけていない事に、早紀が注意を与えると。


「おおっ?!ナイスアドバー!」


変な格好の太郎が戸締りして、扉に<支度中>の立て札を着ける。


「これで泥棒も入らない!」


なんか違うなと思いつつも、早紀は太郎のペースに巻き込まれてしまう。


「それでは!

 君の願いをカナエタロウ!」


店の前に停めてある2サイクルエンジンの<ラッタッタ>に乗って。

キックスタートを3発で決めてから、早紀を呼んだ。


「さあ!乗るのだ夢野君!君の願望はこの愛車と共に!」


ノーヘルで二人乗り・・・


「乗るって・・・こんな原付に?

 違反ですよ?捕まりますよ?」


早紀が躊躇していると、タロウが肩を竦めて。


「私がこの愛車<サイクロン2号>に乗り始めた時には、そんな道交法など無かった!」


・・・

いや、原付の二人乗りは最初から違反です。


「事故でもしたら頭を打っちゃいますよ?」


早紀が中学生らしく、危ないと警告する。


中学生じゃなくても解る・・・


「ジコリなどしない!ヘルメットなど原付に必要ない!

 私が免許を取った時には着用義務などありはしなかった!」


確かに・・・昔はそうでしたね・・・


2人は暫し沈黙していたが。


「願いを叶えてはみたくないか?

 君の願望を叶えてあげると言ったのだ、このカナエタロウが!」


訳が解らない変人オジサンにでも。

心身衰弱している早紀には魅力的に思えて来た。


ー このオジサンが私を解き放ってくれるのかな?


人間は理解不能な事象に遭遇すると、

時として自己破壊的な言動を執るという・・・


この時の早紀も、そうであったのだろうか?


小さなシートにニケツしたオジサンと中学生が、

ツーストロークの白煙を吐きながら<ラッタッタ>で快走して行く先にあるのは?


「さて、ここから先は走るぞ!」


中学生の少女を吊れた変な格好のオジサンが、ビルの高層階まで駆け上がる。


「はあぁはあっはあっ・・・」


肩で息をする太郎とは違い、早紀は若さからか平然としているようだった。


しかし。


「太郎さん、ここは?」


早紀が見詰めるのは青い空。


「なぜ・・・ビルの屋上に?」


連れて来られた意味が解りかねた早紀が振り返ってタロウに訊いた。


「うん?君の願いをカナエタロウとおもってさ。

 君の願望を聴いたんだぞ?

 君はこう言っていたじゃないか、<一度死んで、生まれ変わりたい>と。

 だから・・・死んでみたらと思ったのさ!」


ビシリと指を差された早紀が眼を点にした。


「どうかね、ここから飛び降りたら・・・

 確実に死ねるんだからさ・・・跳んでみそ?」


タロウがニギニギ手を繰り出して来るのを、目で疑う。


「太郎さん!まさか本気?」


迫るタロウから逃れる様に早紀は後退る。


「本気も何も。君が望んだことでしょうに?!

 死んで生まれ変わりたいと言ったじゃないか!」


タロウに迫られた早紀が逃げ場を失う。

後半歩も足を下げれば、身体はバランスを崩して墜落してしまうだろう。


「そんな・・・太郎さん・・・殺す気だったのですか?」


後ろを見た早紀の瞳に、地上の景色が映る。

そこには・・・人だかりが出来ていた。

何人もの人が、手に手に携帯端末で動画を撮っているようだった。


「殺すだって?

 人聞きの悪い事を言っちゃー駄目だよ夢野君。

 君の願いをカナエタロウとしている私に無礼じゃないか。

 死にたいと言っていたのを手助けしているんだから・・・さぁ」


手をニギニギしながら迫るタロウに、早紀が泣き抗う。


「言ったけど!

 言いましたけど・・・こんなのが願いじゃないの!

 私は虐められるのが嫌なだけ。

 誰も助けてくれないのに絶望しただけ!

 本当は死にたくないっ、生きて夢を叶えたいの!」


首をフリフリ、早紀が叫んだ。


遠くからサイレンの音が近づいて来る。

誰かが警察を呼んだようだ。


「ほほぅ・・・それでは夢野君が望む新たな夢とは?

 でも、今のままではその夢自体が夢に終わるんじゃないのかい?」


白髪を逆立たせたタロウがサングラス越しに笑いかける・・・邪なる顔で。


「そうかもしれない・・・

 でも、死んだら夢だって見れないと解ったの!

 死んじゃったら・・・生まれ変われるなんて判らないんだもの!」


恐怖に眼を閉じた早紀が叫んだ。


死の恐怖に襲われた・・・

自ら死を選ぶ前に、他人の手に因って。


その恐怖が、若い命を取り留める事になった。


「「そこの女の子!直ぐに足を中へ入れなさい!

  馬鹿な事をするんじゃありません!」」


女性警官の諫める声が傍から聞こえた。


「えっ?!」


助かったと思ってタロウを見上げたつもりだったのだが。


既にタロウの姿はなく、自分独りだけがそこに立ち竦んでいた。


「自殺なんて馬鹿な事は辞めなさい!

 あなたの事を想う人達の事を考えなさい!」


女性警官がマニュアル通りの声掛けを行うのも耳に入れず、

早紀はタロウの姿を探したが。


「タロウさん・・・初めからこうなると解っていて?」


婦人警官に身柄を確保された夢野 早紀が、

パトカーに載せられて所轄まで同道されていった。


その姿を横目で見ていた太郎がサングラスを外し、


「もう少しの処で・・・願いを遂げられなかったか・・・」


口惜しそうに地団太を踏んでいた。


(殺る気満々でしたね、カナエタロウ・・・)





学校側の釈明には呆れ果てた。


教頭が我が身を庇う。

校長が教師に責任を擦り付ける。


苛めをしていた生徒の親が子を庇う・・・・


誰もが責任を取りたがらない。

誰もが他人の所為にする。


聴いていて呆れ果てた。

これが現実の世界。


これが現代の社会における教育の場とは。


独りの生徒を死に追いやろうとした学校と呼ばれる場所が、

これほどまでに腐敗しているとは・・・



「それじゃあ、願いも暗いモノに成らざるを得ないよなぁ」


今日も独り、誰も来ない店内でラジオを聴いている男が・・・


「願望も行き過ぎると身を亡ぼす事になるのさ」


店内に置かれてある傘を見ながら短髪の男が呟く。


「そうですね、オーナー!」


こんな小さな店だというのに、バイトが居るようだった。

明るい声が小さな店に、似合っていない。

少女の声でオーナーと呼ばれた太郎がグラスを磨く手を停めて。


「ところで、夢野君。

 君の新たな夢って・・・どんな物なの?」


明るい顔で掃除する早紀に訊いた。


「えっ・・・とぉ。

 私の夢はですね、タロウさん。

 人の夢を叶えてあげる事・・・です!」


短髪の主人と前髪を切って眼を隠さなくした早紀が笑う。


「太郎さんのおかげで私、勇気を貰えましたから。

 警察で全部話せましたから・・・虐められているんだと。

あのままだったら本当に自殺していたかも知れない事も。

 そんな時に助けの手を差し伸べてくれた人の事も。

 最初は信じて貰えなかったけど・・・

 ・・・証拠を見せたんですよ・・・ほら!」


スマートフォンを見せた早紀が微笑んだ。


「そうしたらやっと警察が動いてくれたんです。

 特に、助けてくれた婦人警官さんが親身になってくれて・・・

 それも、これも。太郎さんのおかげだと感謝していますから!」


頭を下げた早紀に、太郎が頬を引き攣らせる。


「そ、そうかい?それはなにより・・・」


殺そうとしていたとは微塵も見せない、超人カナエタロウだった。


「それに、気が付いたんです。

 私の夢・・・というより、願望を」


早紀が晴れやかな表情で太郎に言う。


「ほほう?それはなにかな?」


太郎の眼が妖しく光る。


「いいですか?しっかり聴いててくださいね?」


早紀の声に頷く変人男。


「私の願いはですね・・・

 生まれ還らしてくれた人のお嫁さんになる事!  

   ・・・です・・・」


恥ずかし気に言った早紀に、うんうん頷いていた太郎が・・・


「え?!」


何かに気が付いた。


「あははっ、太郎さんってば・・・鈍感!」


笑う早紀の足元には、あの日の傘が置かれたままだった・・・

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