お別れの言葉

 屋上を離れて、向かったのは校舎裏。そこにはいつもと同じように、神妙な面持ちの間宮君がいた。昨日まではおかしくなっていたせいか、気づけないでいたけど、間宮君はとても辛そうで。私のせいで責任を感じているのかと思うと、胸が痛む。だけどもう、全部終わりにするから。


「……間宮君」

「藤塚……ごめ……」

「待って、謝らないで!」


 ごめんと言おうとしたのを遮って、私は間宮君と向き合う。


「謝らなきゃいけないのは私の方。私、今日まで自分が事故に遭ったことに気づいていなくて。間宮君を苦しませていただなんて、考えてもいなかった。本当にごめん」

「藤塚……でもあ時、俺が酷いことを言っていなければ、もしかしたら事故は……」

「ううん、間宮君のせいなんかじゃない。運が悪かっただけなんだよ。だからもう、自分を責めないで。いつもみたいに、笑ってよ」


 元気付けられるように、わざと明るい声を出す。こんな事になってしまって、辛くないと言ったら嘘になってしまうけど、最後は笑顔でお別れしたいから。


「俺、告白された時、戸惑ってた。それでろくに考えることもできずに、あんな返事をしちまったけど。藤塚がいなくなって、それで気づいたんだ。俺、本当は藤塚の事が、好……」


 思い詰めたような瞳でこっちを見ながら、それを口にしようとした間宮君。だけど私は、そんな彼の口に指を当てて、言うのを遮った。


「そこまで、だよ。もしも最後まで聞いたら、未練が残って、行けなくなっちゃいそうだから」

「藤塚……」

「でも、ありがとう。こんな私の事を、最後まで考えてくれて」

「最後なんて、言うなよな……」


 ううん、最後だよ。私はこれから、明日へと進むんだ。これでようやく、失恋を昨日のものにすることができる。


「今まで、本当にありがとう。バイバイ!」

「待て……待てよ藤塚!」


 止めようとする間宮君の手をすり抜けて、私は去っていく。そして少し離れた所で様子を見ていた案内人さんの元へと歩み寄る。


「やり残したことはすみましたか?」

「はい。もう思い残すことはありません」

「では、そろそろ行きましょう」


 案内人さんに導かれ、どこかへ向かって歩いていく。

 さようなら間宮君。もしもまたどこかで会えたら、その時は今度こそ、間宮君の彼女になりたいな。



                             つづく

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