繰り返された昨日
順を追って説明した方がいいよね。
えーと、私の名前は藤塚美和。自分ではそこそこ可愛いって思っている、高校二年生の女の子だ。
今まで平凡ながらも、それなりに楽しい人生を送ってきた。学校では勉強して、授業が終わると友達と遊んで。そして、恋もしていた。
そんな恋の相手、間宮君に思いきって告白をしたのだけれど、結果は玉砕。明日からどんな顔して会えばいいんだろうって思いながら、その日は帰ったんだけど。
異変が起こったのは次の日。沈んだ気持ちで登校した私は、黒板にあった日付を見て、アレ?って思った。書かれていた日付は、何故か昨日のままになっていたのだ。
もちろんこの時は、ただの消し忘れだって思っていたのだけど。
それから時が進むににつれて、徐々にこれはおかしいって思うようになってきた。
だって、授業の内容、教室で起きる出来事。その全てが、昨日と全く一緒だったんだもの。それはまるで、昨日をそのまま繰り返しているみたいで。
そして皆は、その事に気づいていないみたいだった。だって気づいていたら、誰かがおかしいって言い出すはずだもの。なのに誰も、この状況に違和感を持っていないみたいで。
まるで昨日あった事なんて、全て無かったことになっているみたいに、皆普通に過ごしていた。
これはどう考えても異常だ。なのにその事に気付いているのは私だけで。いったい何故こんな事になったのか分からなくて、気味が悪くなった。だけど……
「ん? と言うことは、昨日間宮くんに告白してフラれた事も無かったことになってるってこと!?」
こんな訳がわからない状況だと言うのに、考えた事はそれだった。
だとしたらなんたる幸運。間宮くんにあの告白の記憶がないのなら、また今まで通り声をかけることだってできるじゃない。そんなの最高じゃない!
思わず顔をほころばせる。我ながらのんきだとは思うけどさ、失恋を無かった事にできるだなんて、これはかなり凄い事だよ。
その後も、昨日と同じ授業は進んでいく。一度習ったのに、もう一度習うのは面倒くさいなと思いながらも、おとなしく受けていき、迎えた放課後。間宮君の動きをそっと目で追っていると、早々に荷物をまとめて、教室を出て行くのが見えた。
どこへ行くのだろう? 何となく気になった私は、後をつけてみる。
誤解の無いように言っておくけど、断じてストーカーじゃないから。間宮君は覚えていないのだと思うけど、昨日告白してフラれちゃったのだから。つい気になってしまっているだけなんだから。
そうして間宮君が向かった先は、なんと昨日の告白現場である校舎裏だった。
あれ、おかしいなあ? 昨日は私が呼び出したから、間宮君はここに来たのだけれど、今日は呼び出したりしていない。なのにどうして、またこんな所に来てるのだろう?
不思議に思ったけど、もしかしたら呼び出しの有無に関わらず、昨日と同じ動きをしているのかもしれない。おかしな話だけど、今は不可解な出来事が起きている真っ最中なのだ。だったら少しくらい、おかしな事が増えたって変じゃないかもって思えてくる。
宮部君は何かをするわけでもなく、そこでじっとしている。もしかして、私を待っているのかなあ? 昨日した呼び出があったからここに来たのなら、そう言うことになるだろう。
私は昨日、この後宮部君に告白して、フラれてちゃったんだけど。今日は……
「よし、今日はこのまま帰ろう」
早々に結論を出す。だってここで昨日の再現とばかりに告白したって、フラれるって分かっているし。このまま帰って、本当にあの告白を無かった事に出来るのなら、そっちの方が良いよね。
そう思った私は、足早にその場を去って行く。
これで告白なんて無かった事になって、また明日からは普通に間宮君と接することができる。そう思っていた。
いったいどういう理屈で、昨日を繰り返したのかは分からない。だけどもしかしたら、昨日の失恋を無かった事にしたいと言う私の願いを、神さまが叶えてくれたのかもしれない。馬鹿らしい妄想だけど、そう言う事にしておこう。
と、この時はそう思っていたんだけど……
次の日私は、またも驚きの声をあげる。
「ええっ、またなの!?」
朝起きて、目にしたスマホの日付は、またしても昨日のままになっていたのだった。
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