私は今日も、昨日の失恋を繰り返す
無月弟(無月蒼)
失恋
授業が終わった放課後。人目の無い高校の校舎裏で、私はその男の子と、向かい合って立っていた。
彼の名前は間宮君。中学校からの同級生で、今年で五年の付き合いになる、私の好きな男の子。笑った顔を見ると、胸がキュンとなって、一緒にいると楽しいって思える、そんな存在。
ずっと想いを伝えたかった。間宮君とは他の子も交えてだけど、一緒に遊びに行くこともあったし、仲が良くないと言うことは無いだろう。だから勇気を出して想いを伝えれば、良い返事がもらえるかもしれない。
そう思って今日、ずっと胸に秘めていた気持ちを、彼に伝えた。
「好きです、付き合って下さい」
胸がドキドキする。緊張と不安で押し潰されそうだったけど、間宮君から目をそらすことなく、じっと返事を待つ。きっと笑顔で答えてくれる、そう信じて。
だけど、待っていた答えは。
「……ごめん」
とても申し訳なさそうに、そう答えた間宮君。
フラれる事を、全く考えていなかった訳じゃないのに、いざその瞬間になると、頭の中が真っ白になって。ああ、わたしは失恋したんだって徐々に理解できてきて、悲しい気持ちになっていく。
「藤塚の事が嫌いな訳じゃない。けど、今までずっと友達だって思っていたから、急にそんな風に言われても答えられない」
まるで向こうの方がフラれたんじゃないかってくらい、辛そうな表情の間宮君。そんな顔されたら、私は何も言えなくなってしまう。
それは、人生で初めての失恋だった。
それからはもう、どうやって家に帰ったのかも覚えていない。後悔の念だけが、私を支配していた。
どうして告白なんてしちゃったんだろう。好きだと伝えて、フラれてしまった以上、もう元の関係には戻れない。今までみたいに、休み時間に話をすることも、休みの日に遊びに行くこともできないのかと思うと、辛くなる。こんな事なら、告白なんてしなければよかった。
ああ、できることなら告白なんて無かった事にして、全てをやり直すことができたら良いのに。
そんな叶いもしない事を願うほどに、今日の出来事はショックだった。そう、叶いもしない事を願うほどに……
あの告白から、いったい何日経っただろう? 本当なら失恋からとっくに立ち直っていても良いくらい、時が流れた気がする。
だけど生憎、そうはなっていなかった。なぜなら……
「好きです、付き合って下さい」
「……ごめん」
放課後の校舎裏で、あの日を再現したかのようなやり取りが展開されていた。告白する相手も、あの日と同じ間宮君。
私はあの日以来、この告白してフラれると言う一連のプロセスを、何度も繰り返す羽目になっていた。そう、何回も何十回も!
今日もフラれた私は、間宮君の元を離れて、空を仰いで声を上げた。
「いったい何回、昨日を繰り返したら良いの!?」
私は今日も、昨日を繰り返している……
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