第19話 新之助と優香
優香は嬉しくてなかなか眠れなかった。新之助様の事を思うと、胸がドキドキして、身体の奥が疼いてしまう。
――― やはり私の身体と心は、やはり新之助様のものなのね。―――
優香は、朝が来るのが待ち遠しかった。
優香は、まだ朝日が上がる前薄明かりの中で床から起き上がり、お寺の井戸で水を汲み顔を洗う。和尚様もその頃には起きて来て、朝食の準備を始めていた。
「おお、姫様。おはようございます。早起きのワシよりも早く起きなすったか。新之助にそんなに早く会いたいのですかノオ。フォ、フォ、フォ」
和尚様は、優香の顔色が朝焼けに輝いているように見えた。昨日の夜遅くに和尚様の元に訪ねて来た時は、まるで暗闇に迷い込んだ動物のようだったのを思い出して、思わず苦笑いをしたのだ。
「イヤですわ、和尚様。そんな事ではありませぬ、いつも牛の世話をしているから早起きなのです」
そのように和尚に答えてみたものの、顔が赤くなっているのが優香自身にも分かっていた。
「ホホホ、そうじゃなあ。若い者は、前を向いて進めば良いのじゃよ。時々後ろを振り返る事は大事じゃが、過去の事柄に縛られてはいけないんじゃよ。お父上の事と、仇討ちなどと言う
和尚様は優香と食べるように朝ご飯の準備を始めていたが、優香がそわそわしている事に気が付いて、気を使って早く戻るように促した。
「ありがとうございます、和尚様。それでは、失礼いたします」
和尚にそう告げると、優香は馬に飛び乗り急いで里に帰って行った。
優香が馬に乗っていると、里に来る時に新之助と二人で馬に乗って来た事を思い出してしまい体が火照ってくるのを感じた。
もうすぐ、大好きな新之助様に会える! そう思うと、心なしか馬の走りをせかしてしまう優香だった。
朝日が昇って来て、辺りが明るくなると、里の方からこちらに向かってものすごい速度で走って来る馬が見えた。
確かあの馬は、優香と新之助が里に来る時に乗って来た馬だった。新之助が心配して、里の外まで迎えに来てくれたのだ。
優香の馬と、新之助の馬が落ち合うのに、さほど時間はかからなかった。
新之助の目は少し赤くなっていた。きっと優香の事が心配で一睡もしていなかったのだろう。
優香はそれを見ると、何故か心が安らぐのであった。優香は馬から降りて、新之助に向かって深々と頭を下げて言った。
「新之助様、『父上』と『仇討ちへの思い』の二つを、和尚様に弔うて頂くようにお願いしてまいりました。もう私は過去に囚われないで生きて行く事に決めました。どうか、新しく生まれ変わった優香を見てください」
そういうと、朝日の当たる草原の真ん中で、彼女は着ている物を脱ぎ出した。朝日がキラキラと彼女の若く美しい裸体を照らす。
まるで彼女の今の心を表しているように、その裸体は綺麗で美しかった。乳房はツンと上を向きはち切れんばかりだった。薄い体毛が彼女の部分を優しく覆っていた。体全体に赤みが入っているのは、恥ずかしさのせいだろうか。
新之助様、どうか優香を一生おそばにいさせて下さい。優香は新之助様とともに人生を歩んでみとうございます。
優香の恥ずかしさで真っ赤になった顔と、愛らしい微笑みを見た途端、新之助は我慢出来なくなった。
新之助も馬から降りると急いで裸になって、朝日の中、二人は初めて愛し合った。
お昼前に、もう一頭の馬を引き連れながら、二人は一緒に馬に乗って里に戻ってきた。
おイチはその姿を見て、二人が夫婦になったんだと感じた。小さな声で、優香に声をかけた。
「優香さん、おめでとう! 私の義理の妹になったからには、これからは、しっかりと働いてもらうよ。朝の乳搾りは私がやっといたから、夕方はお願いね」
優香はハッキリと答えた。
「はい、義姉(おねえさん)。これから、末永いお付き合いお願い致します。里のために頑張って働きます」
そういうと、優香と新之助は、新之助が建てた優香の新居に二人で入って行った。しかし、二人の幸せはそんなに長くは続かなかった。
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