第一章 時は現代、美人女子と嫌われ男子
第1話 隣人は美しい少女
女性なら誰しも憧れるタイプの美人てあるじゃないですか。
外見だけでなく内面の美人というのもあると思うのですよね。外見が美しいだけでなく性格や考え方も『美人だな』と思える振る舞いをする人いますよね。外面は美人だけど、中身はチョッとなあ、という人もいますからね。
また、美人かどうかは別にして華のある人もいますね。その人自体は目立っているのでは無いけれど、その人が其処に居るだけで華やかになる人もいますね。
後は、落ち着いた雰囲気のある美人かな。華やかでは無いけれど、その人のそばにいるだけで落ち着ける。なんか周りの人達を和ませると言うか、そんな雰囲気をかもしだしてくれる美人。
―――
でも、そういうタイプとはちょっと違うんだよなぁ……、お隣さんは。
会う人会う人が、みんな「あの女の子は美人だよね」て言うんだ。
街を歩けば、誰も彼も振り返る。
通りすがりのお姉さん達に「ねえ、ねえ、見た。今すれ違った女の子、美人だよね!」「うん、見た! わたしもあんな美人になりたかったわ」とささやかれる。
電車に乗れば、向かいに座っている女の子たちに「いいなぁー、私もあんな美人に生まれたかったよねー」「うん、そうだよね。うらやましぃー」とため息をつかれる。
都心を歩けば、雑誌モデルのスカウトマンらしき若いお兄さんから「お嬢さん、ぜひウチのファッション誌に一度でいいから出てみませんか?」と必ずと言っていいほど声をかけられる。
年齢差も全然関係ないんだぜ。
この間は、道を歩いていた品の良さそうな老女から、「まあベッピンさんねえ、貴女のような人には、今まで生きてきて出会った事がないわ。冥土の土産話になるわ」とか言われちゃうし。
更に、近所の幼稚園の園児からも絶大な人気があるらしいんだ。いつだったか幼稚園の前を通りかかった時は、園庭で遊んでる園児達が彼女を見ようと一斉に幼稚園の金網に集まって来て、一時は幼稚園がパニックになりかかったらしい。子供たちはまるで魔法にかかったように彼女に吸い寄せられたという噂話まであるんだぜ。
イヤホント冗談みたいな話だ。
もしも『美人の才能』とか『美人のDNA』いう物がこの世の中にあるのならば、お隣の彼女は『そいつ』を持って生まれてきたに違いない、と俺は密かに思っている。もっと下世話な言い方をするならば、神様に『美人になる』呪いでもかけられてるんじゃないか? ぐらいな感じなんだ。
でも、正直に言って俺から見ると、普通のお隣さんで幼馴染の女の子にしか思えない。小さい頃に隣に越して来て以来、いつも俺に優しく接してくれる女の子なんだ。
美少女の才能があっても、本人にとっては無用な才能と思っているらしく結構迷惑しているらしいんだ。
―――
それに比べて俺は、なぜか女の子には嫌われる。毎年学校で密かに行われる、「嫌いなタイプの男子」の学年別順位の上位に必ず食い込んでいる。
毎学期行われる席替えで、俺の隣の席に当たった女子に対して、クラスメートの女子グループから同情の目が集まるらしい。なんか必死になって先生に訴えている女子を見ると、俺自身が悲しくなる。
新学年でクラス替えの時も、俺と同じクラスになった事が分かったとたん、女子の間から悲鳴が上がるのは、ごめん、本当に勘弁してほしい。俺も結構気にしてるんだぜ。
自分で言うのもなんだけど、身長はそこそこあるし、痩せてもいず、太ってもいず、まあ肉体的にも、顔の造りにしても、いたって平均的な男子高校生だと思うのだけれど、なぜか女子からは嫌われるんだ。
性格はどうなんだよ?
ヒネくれた性格だと嫌われるのは当然だろう、とか言われちゃうとどうしようもないけど。まあ、少なくても変なこだわりはなくて、どちらかというとチャランポランな方だから、神経質な奴みたいに自分にも相手にも厳しく接する事は無いんだけどなあー。
後は、粘着質って言うのか、いつまでも同じ事に執着して最後は逆恨みまでしちゃう? そんな事も無いしなあー。だって変えられるのは、自分だけだろう? こっちが興味あるからって言うだけで、無理やり相手の気持ちを変える事なんて出来るわけないじゃん。
大好きな女の子に一生懸命に自分の思いを伝えても、結局その思いが伝わらなかったら、辛いけどそれは仕方ないんだよ。
一晩、男泣きに泣いて泣き腫らして、夜の海にでも行って(桟橋とかの方が良いかな、断崖絶壁のある場所に行くと、海の向こうから『仲間になろうよ』と呼ばれちゃうからな、ゾゾゾ)。「〇〇子ちゃんのバカやろー、俺はっ、ホントウにっ、お前の事が好きなのにっ、何で振り向いてくれないんだよーーー!」って大声で叫ぶんだ。
夜の海からの帰りには大盛りでニンニク増し増しのラーメンを食って、汗と鼻水と目から出る水を思いっきり流してから、家に帰って20時間ぐらい寝たら、次の日にはもう忘れた事にすれば良いんだ。
まあ、時々傷心がピリピリする事もあるけど、後は時間が解決するんだよ。
え、それは異常かい? いつまでも振り向いてくれない彼女を根に持って、最後には相手に無言電話一万回かけちゃうとか、コッソリ相手の屋根裏に潜んじゃうとかの方がやばく無いか?
体形や性格云々の話をしてきたけど、ちょっと言い訳させてもらって良いかな? だって道を歩いていると幼稚園児からも「お兄ちゃんは嫌いだから、あっち行けーっ!」「あ! 怖い怪物が来たー」って、突然言われるんだぜ。
こんなの性格以前の話だよな? 幼稚園の前を歩いたら絶対にブーイングの嵐が吹いて園児から石が飛んできそうだぜ。下手すると警察を呼ばれちゃうかもしれないぐらい嫌われてるんだから。
本当に、この世の中で俺を嫌いと言わないのは、母親とお隣の女の子だけなんだ。
まあ、母親は自分がお腹を痛めて生んだ子供だから当然なのかもしれない。
でも最近は子育てネグレクトとか言って自分の産んだ子供を愛せなくて悩んだり放置しちゃう親も多いらしいからなあー。そういう意味では見捨てないでここまで育ててくれた母親には感謝しなくちゃな。
一昔前は、母親は皆んな自分が産んだ子供は全力で守って育てるんだと思われてた。だけど母親だって、女性だし人間だし、色々な事情もある訳で、だから全員が全員同じことが出来るわけは無いんだよなぁ。
あ、話が逸れちゃったけど、母親には育ててくれた感謝に加えて、俺を嫌わないでくれた感謝もあるんだ、って感じだ。
そう考えると、お隣さんは幼馴染という理由だけで、俺を嫌いとは言わない。というか、優しくしてくれる。
そこが不思議なんだよなあ? 他の女子達はけんもほろろなのに、彼女は俺に優しいんだよ。他の女子達からは、「現代最大の謎よねー」って言われているらしいけどな。
『彼女が俺にやさしい』ことで、女子達の間に悪い影響があるわけでもないので、彼女達からしたら良い意味でこの件は無視されているらしい。俺に関わっている事で、お隣の彼女がイジメに巻き込まれたら俺の責任重大だもんな。女子達の間で、お隣の彼女と俺の関係は『蓼食う虫も好き好き』という事らしい。
もしも『女子から嫌われる才能』とか『女子から嫌われるDNA』という物がこの世の中にあるのならば、俺はその才能を持って生まれてきたのだろう思ってしまう。
さらに下世話な話としたら、まるで誰かに『モテないように』という呪いをかけられているんじゃないか、と思ったりするんだ。
***
ピンポーン! ピンポーン! ピンポーン!
「おはようございます! おばさん、新之助君まだ出発の準備出来てませんか?」
お、お隣さんがやって来た。
「あら優香ちゃん、ごめんね。新之助ったらまだご飯食べてるのよ。ほら、新之助!優香ちゃん待ってるんだから早くご飯食べちゃいなさい」
母親の声が聞こえて来た。
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