第2話父の想い、この優しさ

[父の想い、子の優しさ]




[亮平ちゃん、妙子そろそろ出征祝いの時間


になるから、亮平ちゃん仏壇とお父さんに拶


しなさいね!]


「亮平」

[分かりました、]


そう言うと、妙子と一緒に1階におり、仏間に向かう亮平。


「亮平」

静かに障子を開け、仏間に近づいて、静かに


蝋燭に火をつけ、その火で線香に火を灯すと


手を合わせて黙祷する。


そして、仏間を後にして父が横になってる


部屋に行くと珍しく父が布団から出て、静か


に腰掛けて亮平の来るのを待っていた。


その傍で妙子と妙子の母が静かに座っていた


「亮平」


(少し慌てて、)


[お父さん無理しないで下さい。早く横になって下さい。]


「亮平の父」


(落ち着いた素振りで、静かに口を開いた。)


[亮平、立派になって、亮平の軍服を見ている


とお前の兄さんを思い出すよ、正平も亮平も


本当にすまない、]


(そう言うと父は目に涙を浮かべて、畳に頭を擦り付けて、謝った。)


父は本来なら軍隊に行くはずなのに病弱で行


けない、自分をずっと責め続けているのであ


る。


(そんな姿に少し驚いたが亮平は優しく応えた、)


「亮平」


[お父さん、頭を上げてください、空を飛ぶ


の私が子供の時からの夢なんですよ。


けして、お父さんのせいでとかでは、ありませんからね。]


(パイロットになるのは夢、それが人を殺す為の大空であっても。)


「亮平」


亮平は父の手を取ってにこやかに微笑みなな


がら、話した。


後ろで静かに聞いていた、妙子は手をぎゅうと


握って思っていた。


「妙子」


亮ちゃんの嘘つき、お父さんに気を使わせない為に


あんな嘘を、言うなんて、本当は戦闘機の


パイロット、になるのが夢じゃないよね


自由に大空を飛ぶパイロットになりたい


のにね。何で戦争なんかになったんだろ


何で人を殺す為でしか、空を飛べないん

だろ。


(妙子は必死に言いたい事や涙を我慢して


そっと唇をかんだ!。)



そんな妙子の手を握ってて、妙子の母は


悲しそうに、見つめていた…………。


父と母同じ子を持つ親として、これ程不憫な


ことは無い、父は2人の息子に死線を何遍も


超えるであろう、道を自分の代わりに行かせ


る道を進ませなければ、ならずそれを止める


事すら叶わないで、たた涙しながら頭を下げ


る事しかしてやれぬ自分を呪い。


母は娘の惚れた男をただ娘と送り出す事しか


出来ず、娘の悲しむ姿をただ手を握って、


傍で見守って上げることしか出来ずに、この


身を捧げて叶うなら、2人を平和な時代で添


い遂げさせられるなら、この身がどうなろう


と喜んで投げ抱けるのに。


何故戦争なの起こったのか、何故未来ある若


者を戦場に祝福などして送り出さねばならぬ


のか?子を持つ親は皆そう思って、心の中で


身が引き裂かれるような苦しみの中無理に笑


顔を作って、未来ある若者を戦争に送り出し


て来た、近い将来負けて、何もかも無くなる


のを知らずに。


そんな妙子の手を握ってて、妙子の母は


悲しそうに、見つめていた…………。


そして、静まりかえって居た部屋の空気を


一変させる為に無理やり、明るい声で、


妙子の母は口を開いた、(せっかくの晴れの日にする為に)


「妙子の母」


[さぁ、茶の間に料理用意出来てますから、


亮平くんの為に集まってくれた人達の所に


行きましょ!]


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