テンカウント・ラブ

軌条盈

プロローグ

「ゆき」おとうさまの呼ぶ声がする

「はい、おとうさま」

「お前は私のタカラモノだよ」おとうさまは微笑む

「ありがとう、おとうさま」と笑い返す

「あぁ、可愛い私の息子、ずっとそばに居るんだよ」おとうさまは力強く抱き締める

「はい、おとうさま」

「本当に、ずっと、そばに居るんだよ」

「はい、おとうさま」にっこりと微笑む。あたたかな春の陽の光のような優しい笑顔だった。

「私の可愛いゆき…」離さないまま、おとうさまはずっと名前を呼び続けていた。

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