いや、違う。

 もっと、もっとずっと前だ。

 きっと初めて遥に出会ったとき。

 あの私のお誕生日の会場で木戸遥を見つけたときだ。あのとき、きっと私の乗る宇宙船は木戸遥という惑星に墜落したのだ。それ以来、私は遥の星の重力から逃げられずに、ずっとその星にとどまり続けているんだ。きっと、今この瞬間も。

「ついたよ」

 そう言って遥が一つのドアの前で足を止めた。

「この先に面白いものがあるんだね」夏が言う。遥が喋ったので、夏も言葉を話すことにしたのだ。

「面白いものなんてここにはなにもないよ」と遥が言う。

「嘘ばっかり。面白いものしかないからこそ、こんな場所に閉じこもっているんでしょ?」夏が言う。

 夏の言葉に遥な呆れたような顔をするだけだった。

 今までのようにドアは勝手にスライドして開いた。

 明るい室内に遥が無言のまま移動していく。

 夏もその背後についてその部屋の中に入っていった。

 部屋の中は最初に遥がいた部屋よりもひと回り大きな空間があった。とくに物は置いていない。がらんとしている。ただし部屋の真ん中に大きなガラスの壁があった。その壁によって部屋はこちら側と向こう側にわかれている。

 そのガラスの向こう側の部屋に一人の女の子がいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る