小さな椅子に座っている女の子。

 真っ白な部屋の中で真っ白な服を着て真っ白な椅子に座っている女の子。

 しかも不思議なことにその女の子自体も真っ白だった。

 顔も髪も体も、全部が真っ白な女の子。

 女の子の視線はなにもない空中に向けられていて、動かない。瞬きは、さっきから一回もしていないように見える。体もぴくりとも動かさない。そんな女の子の姿を見て、夏はこの女の子はおそらく精巧に作られた人形、つまりアンドロイドだろうと推測した。

「紹介するよ。名前は雛。木戸雛っていうんだ」

「きど……、ひな?」

「そう、雛。……どこか変?」遥が言う。

「え? あ、ううん。そんなことない。全然変じゃないよ」と夏が言う。「ただ、人形に名前をつけるっていうのが、少し遥らしくないなって思っただけ。しかも木戸、とか自分の名字までつけちゃってるし」

「人形?」遥は首をひねる。

「そう人形。だってこの子、アンドロイドでしょ?」

 すると、その言葉を聞いた遥はくすくすと小さく笑った。

「……? なんで笑うの?」夏が聞く。

「雛はアンドロイドじゃないよ。雛は人間。れっきとした生命体だよ」遥は笑いながら夏に言う。

「え? そうなの?」

「うん。そう」

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