瀬戸夏は木戸遥に案内されて研究所の中を歩いていた。

 それは夏が遥に聞いた自分がここでなにをしているのか、という質問の答えを見せる、という意味合いの行動だった。移動の間、遥はずっと黙っていた。だから夏も言葉を話さなかった。

 遥の研究所は地下深くにある秘密の実験施設の中、というよりもどこか宇宙船の中にいるような雰囲気があった。シンプルで丸みを帯びた白い通路が続いている。それを機密性の高いドアがエリアごとに塞いでいた。もし仮にどこかの壁がスライドして開いたとして、その先に宇宙空間があり、そこに大きな月が見えたとしても、それほど違和感のない場所だと思った。

 遥が近づくと研究所のドアはある一定の間隔で勝手に開いた。そして夏がそこを通り過ぎると勝手に閉じた。

 最初は自動で開け閉めする機能なのかと思ったが、いつくかのドアは夏が近づいても開かなかった。人が立てば開く、というだけの単純な構造ではないらしい。どうやらなにかしらのプログラムがこのシステムを統括しているようだった。

 ここはとても不思議な場所だった。

 私はいつの間に、こんな不思議な空間に迷い込んでしまったのだろう? そんなことを夏は考えた。あの静かなエレベーターに乗ったとき? 何回も面倒くさい消毒をして、ドームの中に足を踏み入れたとき? それとも遥を探すためために実家の門を飛び出したときだろうか?

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