それも僕の責任だな

僕の言うことを受け入れられない人は多いと思う。僕も、別に僕の言ってることがすべてにおいて正しいとは思ってないし、受け入れられない人には受け入れられないっていうのも分かってる。


そういう人がいるということ自体は、別にいいと思うんだ。


大事なのは、自分の選択を他人の所為にして他人を攻撃しないこと。何度も言うけど、僕は美智果に、自分の考えを他人に押し付けて、自分の思い通りにならないからって攻撃するような人にはなって欲しくないと思ってる。


だからこそ、僕は美智果の存在を否定しない。僕の思ったとおりになってくれなくても、それを責めるつもりもない。ただ、誰かを傷付けようとするなら、その<行為>については諌めたいと思ってるだけなんだ。


そんなことをすれば結局は自分が不幸になるのを知っているから。


それさえわきまえていてくれれば、どんな仕事をしたってかまわないし、どんな生き方をしたってかまわないよ。後は、自分の選択を他人の所為にしなければね。


僕が誰とでも上手くコミュニケーションが取れる人間に育たなかったのは両親が原因だとは思うけど、でも、そんな自分を承知した上で僕自身がした選択は、あくまで僕に責任がある。


今の仕事を選んだことも、妻と結婚したことも、美智果に来てもらったことも。


僕が選んだ女性が、ガンを患って死を突き付けられて正気を保っていられなかったのも、そういう女性を選んだ僕自身に責任があるんだ。だから妻を責めたいとは思わない。


それらは、僕が妻と結婚して、美智果に来てもらって、そして学んだことだ。


誰に強制されたことでもないし、両親の所為でもない。


妻が亡くなった後も再婚せずに一人で美智果を育てたことも、僕自身の選択だ。妻の責任でも美智果の責任でもない。


美智果にも、自分の選択に自分で責任を持てる人間になって欲しいと思う。


そのために必要なことを伝えるのは、この子を自分の勝手な都合でこの世に送り出した僕自身の責任だ。面倒臭いとか、そこまでやってられないとか、そんな甘えたことを言うつもりもない。


そういう風にあの子を育てることに失敗したなら、それも僕の責任だな。


美智果がもし、<パラサイトシングル>みたいな感じの人間になってしまったなら、僕の責任において、一生を掛けても僕が死んだ後に一人で生きていけるように手を打つよ。


決して道連れにして心中したりもしない。


だけど、その心配はないだろうなっていうのは、今の段階でもう確信めいた予感がある。少なくとも僕がやってる程度のことは、この子もできるようになる。


それが分かるんだ。


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