第17話 旅行最終日
旅行二日目の朝、シロが寝ている横でマキは静かに着替えをしていた。
その後書き置きを残し、財布と携帯を持って部屋を出ていった。
マキが向かっているのはこのホテルから少し奥に行くと見えてくる神社だ。こんなところにあるとは思ってもいなかったのだが、昨日偶然にも見つけていてこれも何かの縁かと思い、神社へ行こうと決めていた。
中を進んで行くと、目の前に狛犬の石像が二体置かれていた。石像には所々に苔が生えており、歴史を感じさせられる。
狛犬の間には賽銭箱も置かれていた。マキは財布から五円玉を取り出し、賽銭箱へ投げ入れた。
マキは静かに祈ってから旅館へ戻って行った。旅館へ戻り、部屋を開けるとシロはまだ眠っていた。
流石にもう起きてると思ってたんだけどなぁ・・・ため息を一つ吐いた後、マキはシロの布団を思いっきり取り上げた。
「シロ、もう起きなさい!!」
「うわわわ!!な、何!?」
「あなた、いつまで寝てるつもりよ。もう8時になるわよ」
「え、嘘!?」
「ほら、早く準備して」
「もう、もう少し早く起こしてくれてもよかったじゃん!」
「自分で起きない方が悪いでしょ。ほら、私も手伝ってあげるから」
シロが着替えている間にマキが布団を片付け、その隙にさっき残しておいた書き置きも回収した。
そしてシロが着替え終わると、二人は下の食堂へ向かった。朝食は食堂で食べる事が出来る。ちなみにバイキング制だ。
シロはすぐさまご飯を取りに行った。相変わらず食べ物の時だけは素早く動くんだから。
マキが朝食を選んでいる間にシロは既に一通り取り終えて食べ進めていた。机の上には三人分程の料理が並んでいるが、もちろんこれはシロが一人で食べるものであって、私のも持ってきてくれているとかそんなことは無い。
それよりも本当にあの量がどうやってあの小さな体に入っているのかしら、不思議だわ・・・
マキも料理を選び終え、シロの前の席に座った。すると、シロはマキの取って来たものを見て驚いていた。
「え、それだけしか食べないの・・・?」
「いや、これが普通よ」
「普通って・・・パンとヨーグルトとフルーツだけって!もう少し何か食べようよ。帰りお腹空いちゃうよ?」
「それはあなただけよ。私はこれで充分なの」
「えぇ、もう少し食べた方いいと思うんだけどなぁ」
その後、シロは三人前の料理を食べきるとそのままデザートタイムに突入し、アイスクリームとオレンジ、スイカとメロンを持って来ていた。
それを見るだけでも私はお腹いっぱいになって来てしまった。
食堂にいた人達もシロの食べる量には驚いていた。まぁ、こんな小さな子があんなに食べるなんて思えないし、仕方ないわね。
朝食を満喫したシロは部屋に戻る前に、再び売店へ向かった。・・・え、もしかしてまだ食べるの?
数分後、マキが部屋で荷物の整理をしてる時にシロが三つの箱を抱えて戻って来ていた。
すごい笑顔だけど、それ多分今日で食べきるよね。
もうこの旅行だけでもシロの胃袋の底が見えなくなってしまった。元々底なんて無さそうだけど。
荷物を詰め終わり、忘れ物がないかをチェックした後、鍵をかけて受け付けに向かった。
鍵を店員に言って返せばいいのかと思っていたのだが、目の前にチェックアウト用の鍵の回収箱があった。
なるほど、ここに入れていけば良いのね。時間も取られないし便利かも。っと、早く行かないと電車に遅れちゃう。
名残惜しくはあるがとても有意義な旅行生活を楽しめたと思っている。それはきっとシロも一緒だろう。
さてと、家に着くまでの間電車の中でゆっくりしてようかな。
またシロと二人で旅行に行こう。今度はもっと長く泊まれるようにしたいな。
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