第16話 温泉
マキ達が旅館に入ると、入り口は大勢の人で賑わっていた。
私達のように今からチェックインをしようとしている人やすでにチェックインを済ませて温泉に行こうとしている人など、様々だった。
あ、受け付けの近くに売店あるんだ。って、シロはもう売店に行ってるし・・・っと、私達の番か。
「いらっしゃいませ。本日は何名様でお越しでしょうか?」
「二人です。連れはそこの売店にいます」
「あぁ、あの子ですか」
「そうです。それと、このチケット使いたいんですけど」
「少々お待ちくださいね。・・・はい、大丈夫ですよ」
「それじゃあこれでお願いできますか?」
「かしこまりました。では、お部屋が212番ですね。こちらがお部屋の鍵になります」
「ありがとうございます」
「それでは、ごゆっくり」
受付の人との話を終えると売店にいるシロの元へ向かったのだが、シロの姿が見当たらなかった。
おかしい、さっきまでお菓子やお土産のお饅頭を見ながらウロウロしてたのに・・・
ま、まさか誘拐!?そう思っていた時、後ろからシロが出て来た。
「・・・何やってるの?」
「あ、あなた今までどこに行ってたのよ!」
「どこって、レジだけど・・・」
「・・・あんたまさか」
「い、いや!違う、これはお土産だよ!!必要でしょ!!」
「それもそうね。それならそれは私が預かっておくから」
「ダメ!!これは私のおやつなんだから!!・・・はっ!」
「シ〜ロ〜!」
「嫌だぁ!絶対に渡すもんかぁ!!」
「待ちなさい!!」
数分後、シロは部屋の前でマキに確保されていた。
と言っても逃げ切れるような場所は無く、部屋を開ける鍵は二つともマキが持っている為逃げ切る事は不可能だったのだ。
シロを押さえつけている間にマキは部屋の鍵を開けていた。
早速部屋に入った二人の眼の前にあったのは広い部屋に大きいベット、そして外には小さくではあるが露天風呂まであった。
あぁ、なんて素晴らしい部屋なんだろう・・・あの時福引きをして本当に良かった。
シロもお菓子を没収されていたことを忘れ、はしゃいでいた。まぁ、はしゃぎたい気持ちもわかるわね。
それよりも、早く温泉に行きたい。マキはシロのお菓子をシロに返してからすぐさま温泉へ行く準備を始めた。
その様子を見て察したシロもお菓子を片付けてから準備をし始めた。
お風呂セットの準備ができた二人は早速温泉へと向かって行った。広いお風呂は何年ぶりだろうか。
ずっと行きたかった温泉、こんないいところで入れるだなんて。
二人は早々と服を脱ぎ始めた。その時、シロがチラチラとマキを見ていた。
「あのさ、ずっと聞きたかったんだけど・・・あんたのそれ、でかくない?」
「え、そうかなぁ・・・普通くらいじゃない?」
「・・・高校の時よりは大きくなってるでしょ」
「あー、そうだね。それがどうかしたの?」
「理不尽だわ・・・」
「え、な、なんかごめん・・・」
「謝らないで!私が不憫になるから!!」
そんな会話をしながら二人は早速温泉に入った。
中はさすがと言わんばかりの広さだった。そして何種類もの温泉が広がっていた。
っと、でも入る前に先に体を洗わないと。マキはシロを手招きして呼んだ。
そしてそのままマキはシロの体を洗い始めた。シロは嬉しそうに椅子に座っていた。
マキがシロを洗い終わると今度は交代してシロがマキを洗い始めた。
周りには仲睦まじい姉妹にしか見えないだろう。実際は姉妹ではないが、これは今に始まった事ではなく昔からやっていたので二人には当たり前のようだった。
二人とも洗い終わればいよいよ温泉へ入る時間となる。お互いに好きなところに入るよう決めて、時間が経ったらまた集まろうということにして一旦二人は別れたのだが、最初に行き着いた場所は二人とも露天風呂だった。
部屋に露天風呂があると行っても温泉の中にもあるのならそこからの景色を楽しみたいという気持ちがたまたま一致していたのだ。
ここから見る景色はとても綺麗だった。広大な海、周りに広がる大自然、そして手前にはハイビスカス。
もはや露天風呂だけでも満喫できてしまいそうだった。数分後、景色を堪能したマキは露天風呂を出て別の場所へと向かった。
さっきあたりを確認した時に肩こりに効く効能がある温泉を見かけて、ずっと気になっていたのだ。
早速入ってみた。・・・あぁ、気持ちいい。なんか効いてそうな感じがする。
その後、30分ほど浸かっていると、シロがこちらに向かって来ていた。
「そろそろ、出ない?」
「そうね、そろそろ出ましょうか」
「温泉もいいけど夕飯に遅れるのは嫌だから先に行ってるよ!」
「ああ、そういえば時間近かったわね。私も行きましょう」
温泉から上がり、旅館から借りた浴衣を着て部屋に戻る。
すると、部屋の中には既に夕食の準備がされていた。シロはすぐさま自分の席に着いた。
そして私が席に座るのを待ち望んでいた。全く、相変わらず食い意地が張ってるんだから。
まぁでもせっかくの旅行だし楽しまないとね!
お互いのコップに飲み物を注ぎ入れ、コップを手に持つ。
「「乾杯!!」」
カーン、と心地よい音が鳴り響き二人は夕食を食べ始めた。
鯛の刺身や一人用の小さなお鍋、そしてカニ。他にもたくさんの料理が並んでいた。
私達は二人で楽しみながら食べ進めて行った。しかし、カニを食べる時だけは何も喋らなくなっていた。
美味しいんだけど、カニの時だけはどうしてもこうなっちゃうのよね。
ちなみにマキが食べきれなかった分はシロが全て食べ切っていた。
その後は食後の運動も兼ねて一階にある卓球場やゲームセンターへ出向いていた。
卓球はマキが勝つのだが、ゲームとなるとシロの方が強くなる。
たくさん動いて疲れ切った二人は部屋に戻ってから今度は部屋の露天風呂に二人で入り、その後ベットで眠りについた。
こうしてマキとシロは大満足の一日を過ごしていた。
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