第7話 異端I





「父さん!」




ピクニックから一ヶ月が経とうとしている今日この頃。


俺は出勤前の父さんの前で、この小さな胸を張り、両手を腰に添えてふんぞり返っていた。

横には、俺が一体何を言い出すのか気が気じゃないシュラナさんもいる。




「どうした?珍しいなアルヴィス。」




「父さん!」




「……どうした?」




「とーさん!!」




「だから要件は!?」




あ、要件言ってないや。自己完結してたw










「父さん!俺は今日、この家を出ます!」










「ーーーーえええええええぇ!!!?」




「「「「「えええええぇぇぇ!!?」」」」」




「ーーーーえええええええ!!!?」




父さんも、父さんのサポートをする従者の人達も同じ反応を見せる。そしてシュラナさんも例外ではない。


もちろん俺は父さんに首根っこを引っ捕まり、家の中へと連行されるのだった。




◇◇◇





唐突に始まる家族会議。


俺、父さん、母さん、姉ちゃん、シュラナさんの5人で食卓を囲む。

もちろん視線はこちらに集まってた。




「で、どういう事なんだ。」




と、父さんが。

脆に頬を引き攣らせてこっちに視線送ってる。




「俺は強くなりたいんだ父さん。きっと俺なら最強になれるから!」




もちろん俺とて怯まない。

俺は、へへーん!と自分の胸を小突き、ビシッと人差し指を向ける。



「つまりは、実戦!」



瞬間、父さんと母さんが大きな溜息をついて頭をかかえた。モンスター狩りに行きたいって言ってることを察したのだろう。




「もちろんダメだアルヴィス。お前はまだ5歳にもなってないんだ。戦いは危険なものなんだぞ?分かってるのか?」




父さんは俺を宥めるように話す。


が、そんなことはわかってる。




「だからこそ!経験を培うにはやっぱり一人での修行だけじゃ足りない!」




「でもお前はーーー」




「本にも書いてたよ!小さい頃の経験は大きくなっても身体が覚えてるって。

今じゃないとダメなんだよ父さん!」



もちろんハッタリだ。


そんな記述のある本など、少なくともこの家には存在していなかった。

まぁ仮にそんなモノがあれば世界観ぶち壊しだしね。




けど、一方でこのレスバに負けるわけにはいかないから、ここは使えるモノはリスクを多少冒してでも使っていく方向性で突っ切るつもりだ。


それは嘘も例外ではない。




「アルヴィス、ならばまずは基礎から鍛えるべきだとは思わないのか?

お前自身が今までそうやってきたじゃないか?」




「確かに基礎は全ての根本だと思ってるよ父さん。でもそれは基礎、つまりは土台ってことなんだ。

基礎はどれだけ繰り返しても効果はあるだろうけど、強くなるにはその土台を基に経験をつまなきゃいけないでしょ!?

だからこそ基礎に目を向けすぎたら成長が遅くなるし、むしろ体や思考の柔軟性も失わられる可能性すらある。」




俺はここぞとばかりに体を前へと出し、のめり込むようなけいたちその、言葉を続ける。




「俺も基礎は必要だと思ってる。でも最低限の能力が備わった時点で基礎は、その上のステップと同時並行でするべきなんだよ!

大切なのはだけじゃない。」




父さんは言葉に詰まる。


母さんなんて何一つ口にしない。





しばらくの沈黙が流れた時、母さんが俺に問いを投げかけた。




「アルヴィスは、どうしてそんなに強くなりたいの?」






俺は、「え?」と、まるで豆鉄砲を喰らった鳩のような表情をした、と思う。


正直、何故?と聞かれて、何を当たり前なことを、と思ってしまったのだ。




「そりゃ決まってるでしょ。」




俺は満面の笑みで応える。




「俺が皆を守りたいからだよ?」




すると今度は逆に皆が、「え?」と。






「だってこの世界って凄く危険でしょ?魔物はどこにでも居るし、盗賊や殺人鬼みたいな犯罪者だって沢山いる。

武器だって持っててもお咎めなしだよ?隣の人がいきなり切りかかってきたらどうするの?

要するにさ、ドアの鍵もせずに出歩けたり、殺人が起きただけで大騒ぎになったりする世界じゃないでしょ?

一人あたりの命が軽すぎるこの世界で大切な人を守るためには、どんな相手にも負けられないんだ!

なら、最強になるしかないじゃん!」




想像するのは前世の世界。

地球にも危険地帯はたくさんあったけど、この世界ほどじゃない。特に日本なんかは。


最後に、「ね?簡単なことでしょ?」と付け加える。




ポカーンとする父さんと母さんとシュラナさん。姉ちゃんは……よく分かってないらしい。

ま、7歳には難しいか。




「……はぁ、分かった。アルヴィス、ならばこうしよう。」




しばらく間を開けてため息をついた父さんが提案をだしてくる。




「お前がお父さんに勝てたら外に行っていいってのはどうだ?」




「却下!」




当たり前だろう。

そんな条件呑めるか!




「何故だ?アルヴィスは最強になるんだろう?父さんに勝てないとーーー」




「ーーー待って父さん。俺は最強になるって言ったけど、今の俺に父さんに勝てる実力がある、なんて馬鹿なことは言わないよ。

ちゃんと自分の力量は理解してるし、だから実力を付けるために魔物と戦いに行きたいんだ。

それじゃ結果と過程が逆転しちゃってるよ!

あと、父さん忙しいから毎日相手してくれないでしょ。」






父さんはそれを聞くと、「………釣られなかったか。」と悔しがる。




当然でしょ。




「じゃあこういうのはどう?

アルヴィスはこの家を抜け出すことを目指す。でも家には警備騎士の方が駐在してるからその人達に捕まったらその日は諦める。」




「おお、名案だなクレスタ!それで行こうか!」




父さんは母さんの提案に賛同した。


この感じ……母さんも俺を外に出す気は無いな。

普通に考えて4歳児が大人に適うはずないからな。






大人ってせこい!






ま、それくらいなら問題ないんだけど。




「分かった!じゃあ早速今日からね!

準備してくる!」




「……え?」


「……え?」




呆然とする両親を後目に、俺はこの部屋を飛び出し自室へと走った。












部屋に戻り、最低限、動きやすい服を着て水分だけを用意し、自作のショルダーバッグに入れる。




水とそれを入れる器さえあれば遭難しても、暫くはどうにでもなるからね。

人間、水分の不足だけはどうしようも無いからさ。




「よし!」




パンッ!と両手で顔を叩き、気合を入れる。




これから命を狩りに行くんだ、怖くないわけが無い。が、この世界ではそれが普通だし、俺の実力アップにも経験として欠かせないのは自明。




「行くか!」




そう呟いて自身に喝を入れ、俺はドアに手をかけたのだった。




◇◇◇




「おい、今日の仕事がアルヴィス様の捕獲って本当かよ……」



「あぁ、部屋から出てきたら捕まえてくれってお達しがあったの、お前も知ってるだろ。」




そんなやり取りをするのはアルヴィスの部屋の前に張り込む警備騎士。


突然の全体報告、仕事が普段の敷地警備からアルヴィス捕獲に変わったのはつい20分前のこと。




このリアノスタ家の敷地はやはり貴族と言うだけあってそこそこ広く、警備は15人も雇っている。


いつもならその15人が死角なく敷地を見回るのだが、今日は門に2人以外はアルヴィス捕獲へと駆り出されていた。




とは言え、本職は警備である。




比較的見晴らしのいい場所から2名をアルヴィスの部屋の前へと配置し、他の者は警備を軽く行いつつ、アルヴィスがそこを抜けてきた場合にのみ対処する、という形で機能していた。






尚且つ、流石に4歳児相手に警備騎士が遅れを取るなどと誰一人として思ってはいない。

だから2人いれば十分だろうと。


それはアルヴィスの両親、レオンとクレスタも同意見。








ただ、付き人のシュラナを除いて。








警備騎士は気づかない。


今、こうしてだべっている最中、自分達の背後に、床のタイルの隙間から、ぷかぷかと浮かび上がってくるその複数のシャボン玉に。








ーーーパチン






シャボン玉は弾ける、が、尚も2人がそれに気がつく様子はない。


その時、アルヴィスの子供部屋の扉が開き、彼は瞬時に駆け出した。




「気づいてましたか!」




「もちろん!」


「あなたを捕まえますよ!」




2人は舐めていた。


相手は4歳児、捕まえられない方がおかしい。




そんな甘い考えは一瞬で砕かれる。




一人がアルヴィスを捕らえようとした、その時ーーー






「ーーーあ?」




視界の端に、何かを補足した。


気にしなくていいもの、なのにも関わらず何故か視線が吸い寄せられる。

しかし視線を飛ばすがそこには何も無かった。



その一瞬の躊躇、彼が視線を戻すとアルヴィスの拳が眼前にーーーー






「ッブゥゥゥ!!!」






その男はアルヴィスに顔面を殴られ、その勢いのまま床に叩きつけられる。


そのパンチは4歳児にしては……いや、普通にその騎士をノックダウンする程度には強力だった。






「お、おい!」




何故だろう、もう一人の男は脳内で不思議に思う。

俺は何故、アルヴィス様を優先すべきなのに、コイツの元に駆けつけているのかと。



そう、もう一人の警備騎士は気を失ったそいつに駆け寄り、アルヴィスに目もくれず膝を着いていた。










「ごめんね、ちょっと痛いだろうけど。」




顔を上げると同時に、アルヴィスの蹴りが彼の顔を捉え、ぶっ飛ばしていた。




「おやすみなさい。」










◇◇◇












シャボンが弾けた瞬間、2人の騎士はその場に倒れ込んだ。


2人に外傷はない。






"睡泡ー夢魔"




幻術系統の魔法であり、sektに格付けされる魔法。この程度の幻術では、強度は強くないし幻術内での合理性も欠ける。




自分の思考と反する行動をする、なんてことも起こる。




紙切れは容易に切り刻まれるし、濡れると破れるし、尚且つ燃えやすい上、簡単にぐちゃぐちゃになる。

この幻術魔法は、まさに紙切れ同然だ。




ほんのちょっとの衝撃、ほんのちょっとの魔法で幻術の世界は崩壊を始める、その程度。






つまりは欠陥だらけ。



魔力の大半も封印してしまったし、加えて今のアルヴィスの魔力制御はまだまだ訓練不足。


下手に魔法の位階を上げたら相手を廃人にしかねない。要注意なのだ。








だが、重要なのは理解度。


眼前の事象が幻術だと分かっていなければ?また、違和感を感じながらも対処法が分からなければ?




そう、裏を返せば、タネを知られるまでは、この程度の幻術魔法でも有効に使えるという事だ。






「さて、じゃあ行きますか。」






この1ヶ月弱で、アルヴィスは先日手に入れたスキル、"Sixth sense"を使いこなせるようになっていた。



このスキルは、周囲の気配を感知する、というものでは無い。

いや、確かにその機能もあるが、本筋は別にある。





その性能とは、限られた空間全てを、生命体、物体に関係なく認識する、というモノ。


そのため、アルヴィスは部屋の中にいながら外で警備が2人いた事も分かっていた。


だからこその幻術魔法による先手。





そしてその2人が倒れたのをスキルで確認したアルヴィスは堂々と部屋を出て廊下を走りだした。







しかし音は、走っているにしては非常に小さく、短い。せいぜい布や紙が何かと擦れる程度の音でしかない。


これは先日、たまたま訓練中に取得した隠密系スキル、"忍び足"と言うもの。


熟練度は全く足りないが、それでも足音は大幅に軽減され、自身の気配までも希薄になる優れもの。




アルヴィスはそのまま廊下を駆け抜け下階への階段へと差し掛かる。

足は止めずに Sixth sense で障害物を無視しつつ周囲を把握。




玄関内に3人、玄関外すぐの所に2人、計5人を察知したアルヴィスは階段を飛び降りて、そのまま直進する。






現時点でのアルヴィスが Sixth sense を制御できる範囲は精々半径10メートル程。残念ながら家の裏や門前までは流石に感知網を伸ばせない。








そしてアルヴィスが玄関のドアを開いた時、先に感知していた警備騎士の全員の視線がアルヴィスへと向かう。




庭から門にかけての場所には更に2人の警備騎士。




「おい!アルヴィス様だぞ!」




「アイツらは何してんだ!」




「お前ら、何でアルヴィス様が外に出てくるまで気づかないんだ!!」




「アルヴィス様!今どこから湧いた!?」




それぞれが思い思いに声を上げる。


とは言え、大人7人に子供1人、まず負けることは無い。




それが全員の共通理解。








しかしそれは勘違い甚だしい。


今回、アルヴィスの勝利条件はこの屋敷の敷地から捕まえられることなく外に出ること。




何も戦闘をする必要は無い。




例え戦闘が起きたとしても、この戦力差がありながら勝敗は五分ではあるが。










「7人、か。」








アルヴィスの声は冷静、顔には笑み。


高揚感、そのせいでむしろ、彼の感覚はどんどん研ぎ澄まされていっている。




「アルヴィス様を捕まえろぉ!!」




その号令で前方、後方から3人の警備騎士が魔法行使を始める。



「顕現せし泡沫、連鎖紡げば洗練の鎖、穢れを滅し、浄化せよーーーー」



同時に門番以外の他の警備騎士もアルヴィス目掛けて走り出していた。






「ーーーーfirs、バブルチェーン!!」




これはfirsクラスの水魔法。放たれたのは鎖のような造形の泡。

魔法自体の拘束力は無に等しいが、触れるとベタベタになり、時間経過と共に粘性を持ち始める。


その粘性は足取りを多少重くし、今回のように仲間のサポートをする程度には役に立つ。




ただ、その粘性も工具用の接着剤よりも多少強いくらいのもので対処法も無数にあるため、本当に大した足止めは出来ない。元々firsクラスの魔法は生活する上で利用されることが殆どである。この魔法も普段は酷い汚れなどを取り除く為に利用されるのだ。


どちらにせよ、firsクラスの魔法では大した威力を捻出できないのには変わりない。








「灯火」








が、アルヴィスに至ってはそうとは限らない。


その一言でアルヴィスの背後で、まるでアルヴィスを守るかのように巨大な炎の塊が6つ。






「ーーーえ?」






アルヴィスに目を向けていた者全員が、同時に一言。


全てのバブルチェーンは消滅し、そして背後から迫っていた2人も咄嗟に足を止めざるを得なかった。






この世界で魔法の行使となれば必ず詠唱が必要になる。


極一部、それを必要としない者達もいるが、その者達は人智を超えた魔導師として見なされる。




しかし今、騎士達の眼前にいるのは産まれて、ほんの4年の子供。






しかも、魔法の同時展開。




優れた魔導師が、巨大な魔法を使えるのは分かる。


が、そんな魔導師でも魔法を同時に展開出来る者など、それこそ詠唱破棄よりも少ないのだ。






さらにその上での異常な威力のfirsクラス魔法。このクラスとしては本当に有り得ない火力。



これまでクラス別での火力は個人の保有魔力差で多少の違いはあろうと、平均から数十倍も火力が違うなんて話は存在していないのだ。




まさに前代未聞、騎士達の頭の中は混乱せざるを得なかった。












詠唱破棄、術式改良、多重展開。








最早異次元。








とは言え、このままでは任務であるアルヴィスの捕獲が失敗に終わる勢いだ。


今、アルヴィスの斜め前から走ってくる一人、そしてその奥の門の番として立っている一人。




何としてでもアルヴィスを止めなければ警備騎士の矜恃に関わる。






「行かせはしませんよ!!」






タイミング的に、門へ辿り着くまでには十中八九、アルヴィスはこの騎士に捕まってしまう。




が、もちろん、このままでは、だ。




「バブルチェーン。」




その一言と共に手を突き出す。

すると指先から5本の泡鎖が放たれた。


詠唱破棄、その上での多重展開。先に続いて連続行使だ。周りの魔導師達は再度目を剥くのも必然的。




「ふんッ!こんなもの喰らいまーーー」






その間、アルヴィスに向かってきた騎士は回避行動に移る。ただそれは最低限での回避という意味。追撃までもが彼の脳裏にはセットで保管されている。




だがその警備騎士は、その言葉を止めざるを得なかった。








5本の泡鎖は一点に収束し、そこから蜘蛛の巣のように、そして警備騎士を包み込む様に発散し、収束。




「ど、どうなってんだよ!?」




こんな軌道、正しくありえない事。




さらにーーーー






「う、うおおぉぉ!!!?」




アルヴィスは走りながらステップを踏むことで重心を移動し、体を回転させる。


するとバブルチェーンに捕まった騎士が泡鎖に引っ張られてーーーー




「ウェェェェ!!!?」




ーーーー宙に浮いた。






一同騒然。




バブルチェーンにそこまでの拘束力があるはずがないからだ。確かに対象の行動を僅かに制限させることは出来るが、ここまでの強度に、通常ではなり得ない。








一方アルヴィスは攻撃の手を緩めない。一瞬立ち止まり、その回転の遠心力を利用して警備騎士を門番をしている騎士へと投げ飛ばした。




バブルチェーンはアルヴィスの指先の付け根から離れているため、門番がこの投げられた騎士に接触すると強力な粘性のせいで満足に動くことは出来やしないだろう。








その時、既に走り出していたアルヴィスは小さく一言ーーー




「シャドウ」




ーーーと。










それと殆ど同時、門番の警備騎士は飛んできたそいつを避け、アルヴィスへと視線を向けた。






のだがーーー






「ーーー!!!!」






アルヴィスはすぐそこまで迫っていた。


スキル瞬足、アルヴィスにとって数メートル程度は距離ゼロに等しい。




「させ、るか!!」




そうして門番はアルヴィスへと手を伸ばす。




届く、やったぞ!




騎士はそう、思った。










「ーーーは?」






騎士の手は視覚内で確実にアルヴィスを捉えていた。


が、実際には指先には感触はなく、空を切っていた。




その視線の向こうでアルヴィスは ニッと笑顔を向けていた。








シャドウ、これも幻覚魔法である。


階級はfirsに位置する。


幻覚魔法の類は習得に時間はかかるが、この魔法は規模が小さい分消費魔力が少ない為、制御しやすいのだ。




シャドウはもう一人の自分を投影する魔法。

今回、アルヴィスは門番の騎士の視線の先、自分に近い位置にシャドウを出現させた。




本来のシャドウは色が薄く、騙されるなんて有り得ない。





が、アルヴィスはこれを逆手にとった。





騎士の視線の先にシャドウを写す、そうすることでシャドウの背後のアルヴィスが透けて見える。





故に、実際にはそこにいないが、まるで手前にアルヴィスがいるかのように錯覚してしまう。





更には周囲からは距離が離れているためにシャドウの姿は見えない。

僅かに騎士の手がアルヴィスを捕らえられなかった、そんなふうに映る。










アルヴィスはそこで跳び、大人二人分の門の上部に悠々と足をかけ、もう一度跳躍。




「ぁぁぁあああ!!!??」


「なんてジャンプ力だよ!!」


「嘘だろぉ!?」


「まさか身体強化か!?」


「い、行かないで下さァァい!!!」


「アルヴィス様ァァァ!!!」






そんな警備騎士達の悲鳴など何のその。


アルヴィスは着地と同時に走り出す。






そしてーーーー






「ヤッッホォォォォォ!!!!」




「「「「「「「アルヴィス様ァァァ!!」」」」」」」






ーーーアルヴィスは街へと飛び降りた。






領主、リアノスタ家はこの街、レイティアの出入口の付近にあり、そこは小高い丘のようになってある。


本来は舗装されたなだらかな道があるのだが、それを外れるとそこは崖。




高さにして50メートル程度とそんなに高くはない。


だが落ちれば確実に死ぬ。




警備騎士達はそんな場所から意気揚々と飛び降りるアルヴィスを門越しに目にした。




門自体は隙間のない重厚なものではなく鉄を輪郭として綺麗な紋様を仕立てているため、門の向こう側は丸見えなのだ。






警備騎士達は頭を抱えるのだった。










一方アルヴィスは楽しすぎておかしくなりそうだった。




普通50メートルなど、どんな物体でも3秒と少しで落ち、木っ端微塵になってしまう距離。


だが今、アルヴィスはと言うと。






「アハハハハハハハ!!!」






下方からの呆気に取られた視線など完全に無視して、指先から放たれたバブルチェーンを頼りに、ケラケラと笑いながら空中を縦横無尽に駆け回っていた。












今日ももう一話いきます!

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