テーマの描き方がお見事。禁忌と知りつつもどうしようもなく惹かれてしまうという罪深き欲求、人間の性。この矛盾と相対した時に物語は生まれる。登場人物の感情と同調し、臨場感を持って物語の終焉まで読ませるようになっていて、テーマをただ言葉だけでなく体験的に感じることができた。随所で語られる知識にもセンスが光り、美しい幻想としての二人の世界に浸らせてくれる。物語を纏め上げる確かな筆力を感じさせる一作でした。