スナッフ・フィルム4
動画は進む。少女は拘束され、道具が用意され、その時へと近付く。少女は困惑の中に苛立ちと不安を混じらせながら、自身の持ち主に声をかける。しかし、持ち主であろう男性は何も答えない。寧ろ、嘲笑しているような空気さえ滲ませていた。
巨大な針や鋸、ナイフ等の様々な道具が少女の前に安置されていく。その間も少女は、その目に涙をたたえながら、悲痛な声を上げる。男性は何も言わず、粛々と作業を進める。
男性は少女の口にガムテープを貼り付け、鋸を手に取る。少女はガムテープ越しに叫ぶが、もはやそれは呻き声でしかなかった。
そして、それはついに始まった。
少女の右手、傷一つないその指に、鋸があてられる。少女がその場から逃げ出そうとするが、拘束具は外れない。ぎり、ぎり、と鋸の刃が少女の指へ食い込む。少女は絶叫する。しかし、鋸が止まることはなかった。男性は何も言わず、少女の指を鋸で擦り切ろうとする。刃は指の中ほどまでに達し、骨へ辿り着く。音質が変わり、硬い物と硬い物とが擦り合わされる音が鳴る。その瞬間、少女の身体は痙攣し、一瞬白目を剥いた。
それを見た瞬間、私の背筋に、冷酷な感覚が伝っていった。怖気が走るような、吐き気にも似た重苦しい感覚であったが、この感覚が何処か快楽に似ているということについて、私は自覚的でなかった。
やがて鋸は指を切り、その下にある長い肘掛けの表面に至る。すると男性は鋸でもって切り落とされた指を払い落とす。少女の指の断面が露となる。切り口は赤く、白い骨が真ん中に通っている。
その時点で、私は動画を閉じた。すぐにパーソナルコンピュータの電源を落とし、曝け出された禁忌の元から逃げ出した。
禁忌は、やはり禁忌であった。そしてそのすぐ側には、見てはならない死が存在していた。
私は恐れていた。何故なら、あらゆる神話において、禁忌に触れた者たちは皆、自身の命を短くし、死に果てていったからだ。
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