先輩、素直にはなれましたか?

「これで満足か?」


「途中、特に大学生のときとかかなり端折られた気がします」


「言ったろうが、あんな暗黒時代のこと人に話せねえよ」


「けれど……まぁ満足しました」


「まったく、なぁんでこんな昔の拗らせた恋愛話をする羽目になったんだか」


「とても良かったですよ!」


「おまえの言う良かったってのは面白いって意味だろうが」


「バレました?」


「バレるバレない以前の問題だ」


「それにしても先輩のインドカレーの話がつい最近のことだとは思いませんでした。地味に私も話に出てましたし」


「元々は欧風カレーが好きだからな。インドカレーは興味こそ持ってても行ったことがなかったんだよ」


「それは意外でした」


「そうかい」


「ところで先輩」


「今度はなんだよ」


「先輩のその話、私がまとめてみてもいいですか?」


「はぁ!?」


「いやぁ、ちょっと私だけ聞くにはもったいないかと思いまして」


「……何がどうもったいないんだか」


「その真子さんも言ってたじゃないですか。小説にしたら見せてよって。私が作っちゃいますよ?」


「あのなぁ……」


「どうです? 先輩も読んでみたいとか思いません?」


「……確かに読んでみたい感はある」


「でしたら作りましょう!」


「バカなこと言わなきゃよかった」


「あ、そうだ先輩」


「なんだよ今度は」


「先輩、素直にはなれましたか?」


「そりゃあの頃と比べりゃ素直になっただろうな」


「私的には素直じゃないと思いますけどね」


「……勝手に言ってろ」


「それじゃ先輩は戻って実験の続きですね」


「そうだった。おまえにこんな話をしてる場合じゃなかったんだよ」


「頑張ってください!」


「おまえも自分の研究をやれ!」


「あはは……」


「現実から目を背けるなよ」


「はーい」

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