13年目の誕生日プレゼント
月見里と再会してから季節が1週した6月12日のことだ。
何度でも言うが俺は自分の誕生日が嫌いだ。今でもあの日のことを思い出すし、そもそも自分の誕生日を期待しすぎるから嫌いなのだ。
この年の誕生日だってそうだった。当時付き合っていたカノジョからお祝いのメッセージくらいくれたっていいじゃないかと期待していた。
140文字投稿するSNSでのアカウントで、知り合いからちょいちょい祝われてもらえるくらいだった。
嬉しいには嬉しかったが、1番肝心のカノジョからのメッセージは来ないものかと思いながら夜を過ごしていた。
そうしているとケータイにメッセージが届いた通知が来た。
〈月見里 真子さんからプレゼントが届いています〉
月見里からメッセージSNSで使うスタンプのプレゼントがあったのだ。
正直、目を疑った。何せ前回に連絡を取り合ったのが5ヶ月くらい前だ。何の前触れもなさすぎで理解が追いつかなかった。
〈え、なになにどうしたの!?〉
なんだったら口調もおかしかった。
〈え、あげる〉
〈なしてこのタイミング?w〉
わかっていても納得はできていなかった。
〈風船飛んでたから記念に笑〉
思わずぽかーんとしてしまっていた。
既読だけつけて返信を返せていないと月見里からすぐに次のメッセージが来た。
〈いいから黙って受け取りなさい!〉
そう言われてしまえばそれ以上の詮索はできなかった。
〈13年目にして初めての誕生日プレゼントwww〉
一体過去何度、彼女に期待したことか。それを13年目になってついにであった。
〈ありがとう!〉
〈どういたしまして! っていうかお礼言うならどうせなら使ってよ!!ww〉
それもそうかと思い、俺は貰ったスタンプを使って感謝の意を表した。
〈まったく、10年遅いんだよww〉
〈SNSやってねーよww〉
〈一言おめでとうって言えってことだよ〉
10年前にそう言ってくれていたら変わった未来もあったことだろう。そんなことを考えても無駄だろうけれど。
〈ああ、そういう意味か。おめでとう〉
〈びっくりしすぎて眠気が取れたわw〉
あまりにも唐突すぎて驚いたのだ。まだ寝る時間でなくても、1日の疲れからくる眠さがこのときは吹き飛んだのだった。
〈これこそがサプラあぁぁあイズ〉
〈確かにサプライズだったよw〉
やられたからにはやり返す必要があるだろう。
〈君の誕生日に何か仕返してやろうと思ったが、俺が同じことやってもサプライズにはならんのよな〉
だからそれまでに彼女を驚かせる方法を考える必要があった。
〈そうかなぁ? 予想しないものをしてくれたらサプライズだと思うけど〉
〈想像力に欠けるからな。努力はしてみますけど〉
ただユーモアに欠ける俺に一体何ができるのかというのが問題だった。
〈期待してる!〉
〈無茶なプレッシャー掛けんなしw〉
サプライズを思いつくまでに時間はまだまだあるというのもあったが、だからと言って期待されても困るのだった。
〈期待しないで待ってくれ。今日はありがとう〉
〈どういたしまして〉
こうして俺は彼女の誕生日を祝うために考えを巡らすこととなったのだった。
ちなみに付き合っているカノジョが祝わってくれたのは日付が変わったあとであった。残念な気持ちもあったが、祝われないよりマシである。嬉しいことに変わりはなかった。
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