プロローグ~Bad end

――好きです。


俺も好きだよ。




*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*




――髪の長さ、どれくらいがいいかな?


うーん、肩よりちょっと長いくらいかな。


――わかった!




*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*




――リョウくんって童顔好きだよね。


そうなのかなぁ。


――そうだよ。童顔って言われる私と付き合ってるんだもん。




*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*




――心理テストの結果……リョウくんは元気な人が好みです! だって!


当たってるね。


――リョウくんにとって私はおとなしく見える? 元気に見える?


元気じゃないかな。


――やった!




*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*




――髪染めてみたんだけど、どうかな?


まぁ、似合ってるよ。


――黒髪が好きなの?


……どちらかと言えばね。




*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*




――じゃーん、大人系メイク!


素が可愛いんだし、あまりメイクしなくても可愛いよ。


――むぅ




*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*




――リョウくんってさ……。


うん?


――私じゃなくて誰かを重ねてるよね?


いや、そんなことしてないよ。


――じゃあなんで私が髪長くしたり、染めたり、メイクすると喜んでくれないの?




*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*




――やっぱり別れよっか。


……うん、そうだね。




*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*



  *♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*



    *♪*♪*♪*♪*♪*♪*♪*



「それで振られたんですか?」


「いいだろ別に」


「もっとその子のこと見なきゃダメじゃないですか」


「見てるつもりだよ。ただそりゃ理想の容姿なんて訊かれたから正直に答えただけだよ」


「そういう問題じゃないと思うんですけど」


「こんな話してたらせっかくのカレーが不味くなるだろうが」


「じゃあそれ私が頂きます」


「いやいや頂くなよ。てか彼氏がいるのになんで俺とカレーを食いに行ってるんだよ」


「まぁまぁ。実験が長引いてたお腹が空いてたところに暇そうな先輩がいたもので、どうせならカレー好きの先輩でも誘おうかと思って」


「暇なんかじゃない。この後、サンプルを回収して精製する必要があるから待ってたんだよ」


「実際美味しそうに召し上がってるじゃないですか」


「……まぁな」


「ところで、先輩」


「今度はなんだよ」


「その元カノさんが仰ってた重ねられてた誰かってどんな人なんですか?」


「なんでそんなこと訊くんだ」


「だって気になるじゃないですか」


「……昔に拗らせた恋愛だよ」


「それ気になります!」


「いやだからなんでそんな話聞かせなきゃならないんだよ」


「まぁまぁまぁ。先輩がサンプル回収するにはまだ時間があるようですし、さっきも話してくれたんですから全部話しちゃってください」


「確かにまだまだ待ち時間だけどさ」


「あ、そうだ! この前の借り、これでチャラにします」


「この前の借りって……。高い利子がついてる気がしてならないんだが」


「まぁまぁまぁまぁ。いいじゃないですかー」


「別に楽しい話でもないぞ?」


「構いません構いませんって」


「そうだな……どこから話したらいいものか」


 そうして彼――広瀬亮ひろせ りょう先輩から語られる恋愛譚は、ただ聞いていただけの私にも深く印象に残った話だった。

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