先輩、素直にはなれましたか?

岡 紅葉

まえがき

 恋愛小説というものがある。Boy meets girlの典型に則った何かしらの運命的な出会いがあって、これまた運命的な出来事があって、より親密になり、時にはすれ違いを含みつつ、最後は付き合ったり結婚してハッピーエンド――そんなきっと誰しもが読んだことのある小説だ。

 私はそうした小説を読むことはあっても経験はない。女子高出身だからというのもあるけれど、流されて生きているから、今付き合っている人ともそういった流れに流された結果だと思う。

 そんな私だからこそ、ありふれているが素敵な恋愛小説が好きであり、友達から聞く恋バナも喜々として聞いているのだろう。

 これから綴られるのは、そんな流されている私とは違う、人生の半分と言っていいほどに悩んでは苦しんだ一人の男の人の恋愛譚だ。それは決してハッピーエンドな話ではないし、むず痒くて呆れる話であるかもしれないし、あるいは理解ある話かもしれない。少なくとも私にとっては嘘のような本当の話であり、人間臭いけれど、どこか綺麗な、そんな話だった。

 私は彼から聞いた話を、許可を貰った上で可能な限り書き表してここに綴る。

 しかし再度の忠告ではあるが、この物語はハッピーエンドとは言い難い。早い話バッドエンドである。そのことを踏まえた上で、どうか次のページをめくって欲しい。


2019年3月 岡

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