蜂蜜を湯煎してゐる霜夜かな

【読み】

 はちみつをゆせんしてゐるしもよかな


【季語】

 霜夜(三冬)


【語釈】

 霜夜――「霜の降りる寒い夜」(大辞林 第三版)。


【大意】

 蜂蜜を湯煎している、霜のおりる寒い夜である。


【附記】

 寒さと静寂の支配するような夜である。


【例歌】

 笹が葉のさやく霜夜に七重る衣に増せる子ろが肌はも 作者不詳(防人歌)

 君来ずは一人や寝なむ笹の葉のみ山もそよにさやぐ霜夜を 藤原清輔

 きりぎりすなくや霜夜のさむしろにころもかたしきひとりかも寝む 藤原良経


【例句】

 ぼのくぼに雁落かかる霜夜かな 路通ろつう

 傾城けいせいの母親おもふ霜夜かな 許六きょりく

 山犬を馬が嗅ぎ出す霜夜かな 其角きかく

 霜の夜にかさなり行くや雁の声 丈草じょうそう

 熊坂が長刀なぎなたあぶる霜夜かな 湖十こじゅう

 句を煉てはらわたうごく霜よかな 太祇たいぎ

 山守の月夜野守の霜夜しかの声 蕪村

 我骨のふとんにさはる霜夜哉 同

 うかうかと生て霜夜の蟋蟀きりぎりす 二柳じりゅう

 霜満て竹静なる夜也けり 闌更らんこう

 羊煮て兵をねぎらふ霜夜かな 召波しょうは

 霜の夜や鴫の羽かき尚さむし 樗良ちょら

 行燈あんどん薬鑵やくわん釣りたる霜夜哉 暁台きょうたい

 霜冴えて雀ひそかに鳴く夜かな 同

 つやつやと柳に霜の降る夜かな 同

 霜満つる夜ただ樟の匂ひかな 同

 灯火のすわりて氷るしも夜かな 青蘿せいら

 かささぎの霜のひと夜をやどり哉 几董きとう

 月落て風地に篭る霜夜かな 長翠ちょうすい

 霜の夜や前居た人の煤下る 一茶

 星一つ見えてられぬ霜夜哉 夏目漱石

 ほんのりと茶の花くもる霜夜哉 正岡子規

 篝焚く函谷関の霜夜かな 寺田寅彦

 何もなき壁や霜夜の影法師 同

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