去年よりも数まさるべし曼珠沙華

【読み】

 こぞよりもかずまさるべしまんじゆしやげ


【季語】

 曼珠沙華(仲秋)


【語釈】

 曼珠沙華――彼岸花。


【大意】

 彼岸花の株の数は去年より増えているに違いない。


【附記】

 私的にまずまず満足の行くできばえである(類句や類想句がすでにある場合はこの限りではない)。すこし前まで彼岸花は晩秋頃と思っていたが、今年2019年は9月9日に初めて花を見た。「彼岸花」という和名もあるのに、万葉調を謳う短歌でもその漢語をつかうのはどうしたものだろう。


 なお、「去年」は新年の季語の由。


【例歌】

 鯰江の繩手をくれば田のくろのまめのなかにも曼珠沙華赤し 長塚節

 わらべらが遊ばずなりて曼珠沙華ますます赤く動かであるも 北原白秋

 風に靡く径の狭さよ曼珠沙華踏みわけ行けば海は煙れり 若山牧水

 曼珠沙華か黒き土に頭あぐ雨やみ空のすめる夕べに 木下利玄


【例句】

 燃るかと立寄る塚のまんじゆしやげ 涼菟りょうと

 まんじゆさげ蘭に類ひて狐啼く 蕪村

 草刈の薙ぎ倒しけり曼珠沙華 村上鬼城

 曼珠沙花あつけらかんと道の端 夏目漱石

 日の落る野中の丘や曼珠沙華 正岡子規

 曼珠沙花野暮な親父の墓の前 同

 愁ひつつ旅の日数や曼珠沙華 河東碧梧桐

 曼珠沙華二三本馬頭観世音 寺田寅彦

 悔いるこころの曼珠沙華燃ゆる 種田山頭火

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