第5話
冗談はさておき。
旭と満月の二人から左右の頬にキスをされたわけだが、この意味が分からないなら自分はバカだと思う。
それを踏まえたうえで、僕は2人にもう一度問うておかなければならない、「僕や鬼の居ない世界だったら2人はどんな人生を歩みたかったのか。」それは僕が僕であるためには知っておきたいこと。
2人の口から聞いておきたい。
これは2人のどちらかを殺さなければならない僕のけじめだと思う。
「はい、では旭さんからどうぞ~。」
「ハイ拍手~、パチパチパチ~。」
という訳で、2人に夢を語ってもらうことになったが、またさっきみたいに段取りが悪いと言われてダチョウのコントの下りを繰り返されても困るので、今度はちゃんと旭を先に指名した。
そしたら満月からの合いの手が入ったので僕も拍手をして旭を迎える。
「…………すっげぇやりずらいな。こう言うのを改めて人に言うのは。」
確かにそんな気がするが、気にしていては話が進まないので僕と満月で旭を応援してあげることにした。
「「はーやーく、ほれ、はーやーく。」」
「……お前ら、後でおぼえてろよ。」
「ではあらためて、私にとっては仁や鬼のいない世界には興味ありません。」
「おぉ~~。これはあれだね、宇宙人、未来人、超能力者が居たらってやつだね。」
「そうか、旭の夢はSOS団結成―――
「ん~な訳、あるか~~。いいか、はっきり言うぞ。私は誰よりも強くなって、伝説になるんだ。」
星空に向かって人差し指を立ててポーズを決める旭。
に対して僕と満月は。
「天元突破?」
「伝説の平成のアイドル?」
「真面目に聞けよ。」
「爆発は?」
「落雷は?」
「ねぇよそんなもん。いい加減真面目に聞けよ!」
「「どうぞどうぞどうぞ。」」
「あぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁ~~~~~。」
流石に旭がキレそうになってきたので僕たちは姿勢を改めて旭の夢を聞かせてもらった。
「いいか、私は戦いで強者と戦って勝って、勝って、勝ちぬいて伝説になりたい。だから、もしも鬼の居ない世界、平和な世界なんて嫌だ。平和な世界なんてどうせ暴力反対だとか強い者をキ〇ガイ扱いする社会だろう。私は強いナイスガイと
〇チガイの反対語はナイスガイ。
うな訳ねぇだろうが!
そう突っ込んでやりたかったが怒られそうだったのでやめておく。
だって、旭の目が
「分かってくれるよな。」
って、聞かれたのでうなずいておく。
「改めて言うぞ、私はお前や鬼の居ない世界になんて興味もない。今の私にとっては平和な世界には夢も希望もない。だから、お前と鬼を斬っていけるなら本望だ。思う存分に使い倒してくれ。」
「さて、旭ちゃんの番が終わったところで真打登場!お待たせしました、私天堂 満月の出番です。」
「…………………………………。」
「…………………………………。」
「アレッ?ノーリアクション。ここは「私は前座なんじゃねぇ。あんまなめってぇと消毒しちゃうぜ。」って言うところじゃないかな。」
「いや、別に問題ないし。あと私は世紀末のヒャッハーかってツッコんどこう。」
「さっきの旭ちゃんの話を聞いたらどう考えても世紀末覇王伝に挑もうとしてたよね。あと、仁君も何かツコンでよ。」
「いやな、ページ数と言うか…尺が足りなさそうなので巻きでいこうかと。」
「むしろ尺余ってるから。伸ばしってッてサインが見える気がするんだけど。」
「それはたぶん、…幻だ。」
「満月、疲れてるんならお姉ちゃんに任せて休んだ方がいいぜ。」
「今度は私がいじられる番かぁ。あと仁君、自分を刺してお姉ちゃんて言うとむしろお姉ぇちゃんになっちゃうから。」
「……どうだ仁、尺は稼げたか?」
「ぼちぼちでんなぁ。」
「流すなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
「まぁともかく、そろそろ満月の夢とか聞こうじゃないか。」
「そうだな、仁や鬼の居ない世界だったら何になりたかったか?ってやつの満月バージョン。」
「いいわよ、2人がそういうなら聞いて笑いものにするがいいわ。」
「それではエントリーナンバー2番、天堂 満月さんに謳っていただきましょう。」
「……仁、ブーメランって言葉知ってるか?」
知ってまーす。投げたモノが自分に返ってくるアレだろ、―――ふっふっふっ、楽しみではないか。
「私がもしも平和な世界に生まれていたら、イラストレーターとしてメジャーデビューして、オー〇ットやでぼの〇製作所のように女社長兼メインイラストレーター活躍してやるのよ。」
皆さん、満月のキャラがおかしくなったように感じているでしょうが、残念ながらこれが素である。
お淑やかな新妻感は何処へやら、「はっはっはっはっ。」と高笑いするときはム〇カみたいに笑おうとするガチで痛いほうのオタクである。
満月が先に挙げた二つのブランドであるが、確かに女性が社長業とメインイラストレーターをこなしていることで有名なエロゲブランドである。しかも凌辱モノとかのガチでエロい奴も出しているところである。
何を隠そう、(一応隠している。)満月はそういうエロいのが大好きなタイプのオタクであった。
もう一度言おう。
満月はエロいのが大好き。
「ハハハハハハ、思う存分いじるがいい。」
「っあ、もう余裕が無いから巻きでいくな。」
「だとおもいましたー(泣)。」
「次は仁の番だぜ。」
「フフフ、ブーメラン、ブーメラン。ジーン君にブーメラン。」
満月よ、悔しいのは分かるがヒトを出世のために装甲の厚い相手に勝手に突っ込む奴にするな。
「おほん、まぁなんと言いますか前置きは省きますが、ぶっちゃけ僕には夢なんかない。だからこそ―――
僕の言葉を遮るように2人が僕の手を取り微笑む。
2人は僕の言いたいことを解っているのか、視線に、吐息に、女の子を感じさせる熱を伴って僕に問うてくる。
「「君が欲しい夢は、どっち?」」
その時、世界は音を立てて崩れ去った。
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