第2話
「うちに関りのある話しようというに、そのうちをのけ者にしようとしてはったなんて、ほんまいけずなお人やねぇ。」
僕の反応を見ながらニヤニヤしている師匠に亜美さんはしなだれかかりながら文句を言う。
場所は居酒屋「烏の隠れ家」である。
この店の名前を知ったのも今更になってからだった。
驚きで泳いだ視線の先のお品書きに書かれているのがたまたま目に入ったのだ。
いや、今はそんなことどうでもいい。
問題は旭か満月かのどちらかを生贄に殺さなければ真の力を発揮できない神剣。この神剣の詳しいことが効けるかもしれないということだ。
今日はお義父さんから男だけで話があるとここに連れてこられて、そこに師匠が居た。
師匠は大名庁に伝手を持ち、大名庁長官お義父さんから「先生。」と呼ばれている人だ。そして、神剣の問題には大名庁が絡んでいることがはっきりしている。
最初に僕はこの師匠が事を仕組んだと思っていたのだが、どうやらそれもあたりだったようだ。
「では、ここでその亜美さんとこの神剣の関りを教えてくれるととらえていいのですよね。」
「あぁ、もちろんだぜ。その為にここに呼んだんだからな。」
突然、ことが重要な話になっり緊張でのどが渇く。
「ごふおぉう!」
「ぎゃははははははははは。こいつ緊張でここが居酒屋のカウンターだってこと忘れて、おもっきし目の前にあった酒を一気飲みしやがった。」
水と間違えて焼酎を煽ってむせかえる僕を腹を抱えて笑う師匠、僕を気遣って水を差しだしてくれる亜美さん。
どっちのほうが人間らしいかは言わずもがな。
「ひーひひひひ。」
「いつまで笑ってるんですか。」
ちょっとむしゃくしゃしてきた僕は、水を避けて今度は肴の刺身をやけ食いする。
「つっーーぁぁぁぁぁあ!わさびがぁぁぁ。」
「ぎぁははははっははっははは。」
「はい、お水どす。」
「君たち、コントやってないで話を進めたらどうだい。」
「ちょっと待って、鼻がつっーんってなってて。おぉぉぉう。」
「いやぁー、この空気から真面目な話するのもきついでしょうが。」
「主様にとっては芸風やろに、ほんまいけずなお人やな。」
と、いう訳で、改めてお酒と肴をオッサン2人に挟まれながらちびちびやって、しんみりした真面目な話をする空気になるのを待っていた。
「先生、私はやっぱりランス10のヒロインはシィルちゃん一択だと思うんですよね。」
「そりゃぁ、シリーズを通して考えればメインヒロインは彼女しかいないだろう。だぁがしかし、ユーザーとしての、オレ個人としてのヒロインはサテラになる。そうゆう話だろコレ。」
しかし、オッサン2人がエロゲー談義とかしてたら無理だろ。
とゆうかお義父さんエロゲーやるんだ。
「僕はやっぱり志津香推しです。」
「よし、この話は平行線ぽいのでここまで。先生、そろそろ真面目な話をしましょう。」
お義父さん酔って居るだろ、これ。
「そうだな、空気もいい感じになってきたし。」
空気って何?もはや空気ってのがおかしなものにしか思えなくなってきたんだけど。
「では本題に入るぞ。」
「まず初めに、鬼はどこから来るのか。というところからだ。」
鬼、人類の敵にして災害。
世間の人々が認識ているのはそれくらいである。
「それが分かっているんですか?」
「分かってはいるが、ちょい難しい話になるで。」
「先生、ここはもったいぶらずにまず話してやりましょう。」
「OK。まずはここに一枚のコースターがある。この上にグラスがあるやろ。このグラスが俺たちの居る世界ってわけだ。」
「じゃあ鬼はそのコースターからやって来るってことですか。」
「残念、ハズレ。鬼がやって来るのはコースターの反対側にある別のグラスになる。」
「それって別の世界から来るってだけで違いがあるんですか。」
「あるさ。グラスの世界は三次元の宇宙たる世界。そして、コースターは二次元の宇宙になる。ただの異世界と違ってこの二次元を挟む場合には、二次元は三次元を認識できないみたいな話になる。三次元同士なら科学でもワープやなんかで移動もあるけど、二次元を挟むって場合は物質的なものにフィルターの働きをする。ってのが今わかっていることだ。」
「…………はぁ?」
「もうわかってないみたいやけどな、要は鬼は物質とは異なるものでできているとされている。って推察で研究を進めたらドンピシャ。鬼の来る世界を突き止めた。」
「ソレは―――。」
「冥府、死者の世界、地獄、そんな感じの―――黄泉の国だ。」
「黄泉の国ってのが大名庁で使われている正式名称だ。」
「そして、大名庁は黄泉の国の神話を事実ととらえ、鬼を使い日本を攻めるのは黄泉津大神、「イザナミノミコト」であると確定した。」
「で、弦ちゃんの伝手で俺に黄泉の国へ反攻するための道を作ってくれと頼まれてな。まぁ、色々あって道を作る要を作ることはできた。」
「しかし足りなくてな。」
「俺が創れたのは道を作ることと維持すること、その要が亜美なんだけどな。」
「向こうに行けても先生ぐらいしかまともに動けないのではね。」
「てぇ訳で、向こうに行っても過ごせる様にするにはどうしたらいいかって話が出てきた。」
「それを先生にお願いするには今までの負担から難しいとなって、代わりに可能にできるのは?と、計画したところ、仁君のそのその神剣だった訳だ。」
「正確に言うと、そもそれにはそこまでの力はない、生贄を捧げるのはこの計画に必要な機能を獲得させるため。で、それができる適性が認められたのが仁坊だったのさ。」
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