第6話

 我ながら旭と良い関係になっていると思う。

 普通ならこのまま二人で浜辺に繰り出して遊び倒すとこだが、しかし僕にはもう1人彼女がいる。

 ……字ずらだけ見ると僕って最低の二股野郎な気がしますが、そこはやむなき理由あってのこと、そこがまかり通ってこそのラブコメである。

 とりあえずは、もう一人のヒロインである天堂 満月さんに出てきてもらわなくては話が進まないのだが。


「むぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。」


 満月はパラソルの軸、その向こうに身を隠して顔だけをこちらに出してうなっていた。


「満月、その水着似合ってるぞ。」

「むぅぅぅぅ、見えてないはずだもん。荷物に隠れてるから仁君には見えてないはずだもん。」

 バレテーラ。

「だったらそんなところに隠れてないでさぁ、僕に水着を見せに出てきてくれよ。」

「むっ、無理だよ。」

「何でかな。」

「さっき仁君は旭ちゃんの水着をべた褒めしてたもん。宇宙からの毒電波を受信しておかしくなっちゃうくらいにキマッてたもん。だから、そのあとに私が水着を見せても「おぉー。」とか一言で終わらしちゃう塩対応になっちゃうんだよ。どうせ私はミジンコです。ミジンコの塩焼きはお好きですか。」

 どうやら僕が旭のことばかり構っていたせいでいじけてしまったようだ。

 めんどくせー。

 って、ここで思ったら男としてダメなんだろうな。

 さてここでどうやって満月を引っ張り出すかで男の格が決まると思う。

 てか、Fカップもあってミジンコは無いだろ。

 それだと日本のほとんどの女性がミジンコになってしまうじゃないか。

 ん?この考えってつまりは女性の価値を胸で測ってるってことじゃん、これだと僕は最低男みたいになる。

 いかんな、これを改めて満月を説得する誘い文句はっと。


「満月。」

「?」

「お前の価値はオッパイだけじゃないぜ。」


「仁君に自慢のオッパイを否定されたー。」

「そう来たかー。」

 満月を説得しようかと悩んでいたら、荷物をあさっていた旭が僕の首根っこを捕まえてきた。

「おめぇー、まぁだ満月の説得できてねえのかよ。」

「まだ5分と経ってないと思うんだけど。」

「そんなの関係あるか。」

「あと、ミジンコの塩焼きって美味しいと思うか?」

「それこそ関係あるか!」

 怒られた。

 まぁ、理由はよくわかるが。


「仁君がー、また旭ちゃんとだけ仲良くしてるー。」


「オイ、仁。満月がすっげー恨めしそうにこっち見てるぞ。どうにかしろよ。」

「どうにかって、具体的にどうしろと?」

「そこは自分で考えんだよ。」

「ごめん。手詰まりです。」

「お前、オッパイのこと以外何もいってねぇよな。―――しゃぁねえ、これなんかどうだ。~~ごにょごにょ。」

「いや、お前それは大丈夫なのか。」

「満月の性格なら大丈夫だ。なぁに、失敗しても責任は私にあるから。お前が嫌われたら私がお前に斬られるだけだよ。」

「………………………………………」

「そんな黙んなよ。ほら行ってこい。」

 旭に背中を押された僕は一歩満月の前に出る。

 満月はそんな僕に警戒とも期待ともつかない表情で見てくる。

 そんな満月に僕は――――


 荷物を蹴散らして満月に襲い掛かった。


「きゃぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!」

「ハァーハハハ、これで抵抗はできまい。」

 僕は押し倒した満月の両手をまとめて押さえ、体の上に馬乗りになって動きを封じる。

「じ、仁君。優しくしてね。」

「旭さーん、この後どうしたらいいですか。」

「剥いちゃえばぁー。」

 旭は荷物からガリガリ様を取り出してかじりついている。

「それだと水着が見れません。」

「剥いてから横に並べてながめりゃいいだろ。」

「了解でぇぇぇぇ!」


「ちぇすとぉぉぉぉぉぉ!」


「見せればいいんでしょ。水着姿、普通に見せるから、ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」


 僕を突き飛ばした満月は心からの叫び声をあげて水着姿を僕に見せてくれた。

 対する僕は。

「—――――――南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。」

「仁君が拝み始めたよ。」

「私ん時も拝んでただろ。良かったな、満月の水着姿でも電波受信しておかしくなったじゃん。」

「観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時~~~~~~~~~~~~~」

「どうすんのこれー。」

「な~な~め~45度から、こうやっって叩けば治るハズ。」

「てい。」

「―――ッ、……僕は今、光を見た。お釈迦様が水着姿でご降臨あそばされた。」

「仁よぉ、それは乳なる者だよ。」

「なに!ではやはり神と呼ばれるものは人間の解釈によって違いが出ているだけで実はもともと同じものだ―――ッ。」

「ななめ45度。」

「ヘブシッ!―――いかん、またトリップしていた。」

 僕は頭を振って改めて満月の水着を見る。

「眩しいな。」

 満月の水着は白を基調とした鮮やかなビキニだった。

 特に胸の大きさを強調したアダルティーなデザインになっている。

 対してパンツのほうはフリルをあしらった可愛らしいデザインとなっていて、全体的には大人と子供を合わせてカラフルにしたアバンギャルドなデザインだった。

 ちなみにアバンギャルドとは芸術では前衛的というが、元は軍隊の前衛である。

 まさにその前衛をオッパイが担っているようだ。

 旭と同じように満月にもターンしてもらったが、背中側にはトップスにもフリルがあり南国の波の様だ。

 僕が感じたものとしては、波をかき分け襲い掛かって来る巨大ザメをオッパイで表現している。というものだった。

 まさにオッパイドーンである。


 てか何でそれで僕はお釈迦様なんかを幻視したんだろう。


「で、感想は?仁君。」

「最・高・デス。」

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