第5話

「なんやかんやあって、水着がドーン!じゃい。…………あんな感じです。」


「なぁ、お前それで済ます気やないやろうなぁ。」

「もちろんそんなつもりはございませんよ。」

「仁君の為に選んだ水着なんだから、ちゃんと見てくれないと怒っちゃうよ。」

「大丈夫だってちゃんと見るから。ただちょっと最初にネタぶっ込んどこうと思って。」


 どうしよう、散々前振りかましといて「女の子の水着には詳しくない。」なんて言わしてもらえない様子。

 しかも二人の水着姿と言ったら学校のスク水で見慣れてるから大丈夫、なんて思ってましたけど――――ヤバイ。

 なんと言いますか刺激がヤバイんですけど。

 妹のビキニとは全然違う。

 エロゲーやエロコメマンガなんかではもっと肌色成分が多いのに何でこう、―――くるんだろうねぇ。

 幼馴染だから?

 メインヒロインだから?

 なんにしても二人は確実に勝負を仕掛けてきている。

 僕以外にはわからなくても僕にだけは分かる。

 これは二人に僕への特効効果が付与されているんだ。


「きょろきょろしてないでちゃんと私を見ろ。」

 がっしりと両側から顔を掴まれて旭の方を向かされる。

 そうすると目の前に旭のオッパイが、水着一枚だけしかない旭のオッパイが目の前にぃー。

 特に旭の水着は肩ひもの無いやつ、後で知ったけどチューブトップという奴らしい。

 しかもこれ、正面の真ん中が網目、というのか靴ひものアレみたいになっているから胸の谷間がドーン!じゃい。

 水着の生地が黒色で、向かって右側、つまり旭の左乳の部分に白で花の柄が入っている。

 ちょうど心臓のあたりだが、アレは椿の花かな。

「どうだー私の水着は、似合ってるかー?」

「今のままだと胸しか見えないんだが。」

「おぉー、そうだったすまん。」

「――――――なんで一回胸の谷間に顔を押し付けてから離した。」

「ソレはあれだ、セックスアピ-ルってやつだ。」

「セックスって、お…ま……」

「セックスアピールって、異性を魅了する力。つまり魅力ってことなんだぜ。仁のソ・ウ・ゾ・ウ、したやつとは違うんだなぁー。」

 くそう、二重の意味で手玉に取られている感じがするぜ。

 とは言え、頭を放してもらって距離が開いたことで僕は旭の下半身を見ることができた。


 ――――――今更ながら、自分の表現力がバカっぽいなって思えてしまった。

 下半身ってなんだよ、思春期丸出しじゃないか。

 オッパイオッパイ言ってた僕はどこ行ったんだよ。

 そんなに女の子の下半身に興味あるのかよ。そんなに下半身が見たいのかよ。

 ハイ、見たいです。見たいにキマッテマス。

 そして僕は見た。

 その結果がこれだ!―――――――――――――――――以上。


「おい、仁。なんかお前……目がキマッてんぞ。」

「ダイジョウブ、スコシシタラモトニモドルカラ。ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 僕はやばい薬か強烈なパンチを食らったかのような衝撃を受けていた。

 やばい薬は前にサバイバルの訓練中に重傷を負ったとき、手当の際に痛み止めとして打たれた。

 パンチは子供のころにクソ親父に打たれた。

 どっちも思い出したくない記憶である。

 そして今回の衝撃はパンツである。

 ……いや、正確には水着だからパンツじゃないんだろうけど、何と言うか分かんないから水着のパンツでってことにしとこう。

 ん?水着の下半身部分はボトムって言うの。ナルホドナー。え、下着の腰回りを覆うものもボトム、つまりパンツもボトム?ボトムとはパンツ?つまり水着のボトムはパンツと同じ。ナルホドナー。

 僕は実際宇宙的な何かを受信していた。

 宇宙の深淵よりもたらされる宇宙的真理。

 それは水着のボトムも下着のパンツも同じもの。

 つまり、今僕の目の前にあるものはまごう事なき旭のパンツだということだ。

「ありがたやぁ、ありがたやぁ。ナンマンダブ、ナンマンダブ~。」

「拝むな!」


「ハッ、いったい僕は?……頭がいったい?」

「まぁだボケてるみたいだしもぉ一発くらい殴っとくか?」

「ごめんなさい、なおりました。だからぶたないでぇ~。」

「……お前の場合シャレになんねえからやめろよ、それ。」

「ういっす。」


 なんやかんやあったけど正気に戻って、旭の水着について語ろう。

 ボトムと誰かから教わったそれはトップと同じ黒い生地になっている。

 向かって左の腰に白色で菱掛け模様ひしかけもようが入っており、右側の腰の端でトップと同じ靴紐みたいな感じで結んである。

 結び紐はトップとボトムでお揃い、鮮やかな緋色の組紐で、黒、白、緋色の三色で着物のようなイメージが感じられた。

「旭、ちょっとクルリと回ってくれ。」

「うっし。」

「何でカポエラみたいにするんだ。普通だ、普通でいいんだよ。」

「いやぁー、いっちょヤッてみっかって思ったんだけど、砂浜だと無理だな。」

「当たり前だ。あと砂浜でなくてもお前は髪長いんだからやるなよ。ほら髪に砂がついてる、払ってやるから。」

「おっ、サンキュー。」

 髪についた砂を払ってやってから改めて回ってもらった。

「ふむ、すまんが後ろ側をもうちょっとよく見たいから向こうを向いて、こう髪をかき上げてくれないか。」

「こうか。」

「そうそう、これで背中も見える。」

 ちなみに僕はオッパイだけじゃなく腰の括れくびれや背中からうなじにかけてのラインにフェチズムを感じる。むしろこっちが本命だったりする。

「うむ、素晴らしい。」

 改めて旭の背中を、水着姿の背中を鑑賞する。

 トップの背中側には縫い目はなく一枚布のフロントホックになっているようだ。そして柄もなく黒一色だ。

 そして下のパンツ、―――あれ?ボトムだったような。まぁ、パンツでいっか。

 そのパンツには表にあった白い菱掛け模様が側面からグルリお尻の真ん中まで続いていた。

 まぁ、全体を見た感想としては、


「粋でいなせじゃないか。」

「意味わかってるのか。」

「江戸っ子弁で格好いいてことだろ。似合ってるぜ。」

「ふふぅーん、そうだろうそうだろう。

 腕を組んでうなずいて見せる旭だが、口がにやけて頬が赤くなっていたりで、可愛かった。

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