第3話
と、いう訳で―――お待たせしました。皆さんお待ちかねの水着回です。
「ひゃっっっっっっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉう!」
先に水着に着替えた僕は一人で砂浜に来て、テンションアゲアゲでみんなが来るのを待っていた。
てか、つい先日には風呂に一緒に入って裸を見たのに何で水着にそこまでテンション上がるんだ?
と、思う人もいるだろう。
てか皆さんは現実にラブコメ空間を体験したことが無いのでぇすかぁ?
いいか、ラブコメではたとえ全裸の入浴シーンであっても湯気さんの働き次第では水着以下の露出度しかなかったりするのだ。
だからこそエロゲにも精通している僕にとってすら、ヒロインの水着とは眼福ものなのだ。
ヒロインが水着に着替えたならば、男子、刮目して相対すべき。
我が師の尊き教えである。
覚悟を決めて
いっそ海パンを脱ぎ捨ててでもいいくらだ。
「お待たせぇー。」
「水着さん、いらっしゃぁーい。」
「……お兄ちゃん、キモイん駄けど。」
「なんだ、蒼一人か。あとなんか”だ”の発音がおかしいぞ。」
「おかしいのはお兄ちゃんの頭のほうだと思うけど。あと、私の水着なんかじゃ興味もありませんか。」
いえいえ滅相もございませんよ。蒼の名前に合わせたのか夏の青空の様な蒼色のビキニを着て、いじけている姿は我が妹ながら欲情してしまいそうに可愛いものである。
「そんなことない。すごっく可愛い。」
「ふーん、本当に。…………まぁ、一応信じてあげる。」
こいつ、一瞬目線を下にやりやがった。ナニを確かめたのかはわかっているが、納得いくものではなかったはずだがそれでも鉾は収めてくれたらしい。
「確かにお前は可愛い、けどわかるだろ。」
「なにが?」
「せっかくの水着のお披露目なんだから小出しにせずに、こーう、ドーン!っと来てほしいんじゃ。こう、どーん!と。」
「あんた、―――マジ、キモイんですけど。」
さげすみの目を向けてくる妹がもはやお兄ちゃんと呼んでくれなくなった。
お兄ちゃん悲しい。
人気の某アイドルアニメのプロデューサーをイメージしてやったんだけどダメだったか。
「ソレで他の二人はどうした。」
「ん?あぁ、私はパパにかって貰った水着に決めてたからすぐに着替えられたけど、お姉ぇ達はパパたちが用意した沢山の水着の中から好きなの選んでいいよって言われて迷ってる。」
「あぁ、女の子はそうゆうの迷って時間かかるって言うしな。」
「誰のために迷っているのか分かってるのか。」
「ハイ、解っております。」
「―――まぁ、水着を決めてもそのあとに時間がかかったりすることもあるけどね。」
「はぁ、なんだって?」
「あんたが知る必要ない。」
まだお兄ちゃんに戻らないことに結構ショックを受けてる僕であった。
女の買い物は長い。
女の支度は長い。
然るに、その二つが合わさったような好きな水着を選んで着て来るとは、それは真に長くなるものに相違ない。
武士言葉になってしまうのは、暑いからである。
炎天下に長いこと待ちぼうけを食らっていてはおかしくもなる。
と、いう訳で。
ここはせっかくなので妹の蒼でも観察して皆様にその魅力を伝えたいかと思います。
さて、
その蒼でありますが、これがまた小柄なのですよ、ハイ。
出るとこはそこそこ引っ込むところが結構、なもんだからなんだかフィギュアのようなバランスの体形で、どこか現実感が無い。
肌はきめ細かく、例えるならシルクのように。という定型文で表わしたくなる。―――実際にはシルクなんて触ったことないけど。
そんな蒼は中性的な顔立ちをしていて、長い黒髪をポニーテールにしていることもあって、さながら源氏の若武者「牛若丸」のようである。
実際にこの妹は飛び級で武士の士官学校に入っているし、筋肉もしなやかで強いものが見て取れる。
これだから男子より女子に持てるのだが、それでもストレッチをしている妹の姿には女を感じさせるものがあり、お兄ちゃんとしてはちょっと複雑である。
ここがプライベートビーチでなかったら今頃この妹にはナンパ野郎が群がっていたであろう。
そうなっていたら僕は黙っていられなかっただろう。
「お前らソレ相手は犯罪だぞ。」っと。
……いや、無いか。
コイツのミニマムスレンダーボディーに釣られる奴なんかいないだろ。
「おいアソコ見てみろよ。すっげーイイ女がいるじゃん。」
「マジマジ、マジじゃん。コレ声かけねぇとか―――プュ。」
「おいどうしゅふぅ―――っ。」
はいはい残念でしたぁー。
コレでもうちの妹はもういいとこのお嬢様になってるんですよ。
勝手に他人家のプライベートビーチに入り込んでナンパしようとする輩は、忘れられないひと夏の思い出を植え付けられることになるだろう。
「お兄ちゃんー、どこ見てんのかなぁー。」
哀れな男に代わって妹の水着姿を眺めていたら妹から胡乱な目を向けられた。
「ただ待ってるだけが暇だったら、妹の為にサンオイルでも塗ってくれたりしないのかなぁ。」
「……いいだろう。お兄ちゃんが余すことなく妹を守ってやろう。」
「なにから守るのよ?」
「夏の太陽、そして、それに当てられたバカ。」
「……それ、お兄ちゃんも入ってない。」
ならばその僕が恐ろしいものであることをその身に教え込んでやろう。
僕はサンオイルを両手に絡めて無防備に背中を見せている妹の背後に立った。
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