第2話

「君たちにはちょっと早いからね、もう少し大人になってから楽しみなさい。」

 そう言って叔父さんを奥の部屋に放置したまま僕は義叔母さん部屋を出てきた。

 色々聞きたいことはあるけれど、とりあえずは蒼を落ち着かせてから事情を聴くべきだろう。

 そして旭と満月によって落ち着きを取り戻した層の話を聞くことになった。

 僕たちの前にはメイド服を着た義叔母さんが入れてくれた紅茶があり、その紅茶を一口飲んでから蒼ぽつぽつと話し始めた。


「パパ……叔父さんと最初に会ったのは今年の初め頃、お兄ちゃんが受験で忙しかったころです。」

 確かに今年に入ってからは受験の追い込みで忙しかった。

 そんなこんなで母さんが死んでからの手続きなどは蒼に任せっきりになっていたが、つまりその時に二人の間に面識ができていたのだろう。

 他の人からしたら、母親が死んでからのことを全部妹任せにしていた僕を薄情者だというだろう。

 けど、言い訳をするなら受験にいそしむことが生前の母さんとの約束だったんだ。

 だからこそ士官学校に合格出来て、母さんのお墓に胸を張って合格を報告した。

 そん時に雑事を任せていたはずの蒼が一緒に合格して同級生になることが告白された。

 叔父さんが大名庁の長官で師匠も絡んでのことだったのだろうが、あの時の僕の敗北感はどれほどのものだったかは想像にお任せします。

「一応その時に私とお兄ちゃんを養子にすることが決められていたから、「これからはパパと呼んでちょうだい。」って言われてたから。」

「確か、僕が草薙家の次期頭首候補になったとか言うのがあったなぁ。」

 別に蒼でもいいんじゃないかと思うがそこは旧家ならではの男尊女卑なんかがあるんだろう。

「そういえば叔父さんに子供っていないのか。」

「あの人なら何年か前に子供ができなくなってしまったのです。」

 そう義叔母さん―――いや、義母さんがそう説明してくれた。

「ぶっちゃけ戦場で球と棒を落っことしてきて以来できなくなったのです。」

「そこまで言わなくていいですから。」

 とはいえこれで分かった。

 叔父さんに子供がいないのに、子供ができないとなれば跡取りをどこかから用意しなくちゃなくなる。

 たぶん分家の中からも何人か候補が選ばれていたのだろう。

 それと、腐っても一応は本家の血筋だった親父の子供を叔父さんの養子にする案とがあったのだろう。

 そして僕の場合は血筋より性格がどうかが問題視されていたのだろう。

 それを士官学校の試験で調べようとしたわけだ。

 きっと母さんもいちまいは噛んでいたのだろう、だから生前に自分のことより受験に専念しろと言われたのだろう。

「つまりあれですよね?」

 僕は義叔母さん―――お義母さんとなる人に尋ねておきたかった。

「叔父さんの古傷に電気あんまとかやってたってことですよね!」

「良い子は真似しちゃいけませんよ。」


「ははは、仁君もこれからは叔父さんなんて他人行儀な呼び方などせずに、パパなりお父さんと呼んでおくれよ。」

「せっかくのキメ顔も膝がカクカクしてたら台無しだよ!」


 その後、改めて僕たち兄弟と天堂姉妹はおじ―――お義父さん達に挨拶を行った。

「ところでお義父さん、なんでお義母さんはメイド服を着ているんですか?」

「あぁ、妻はもともとがこの家で働くメイドだったんだよ。」

「なるほど。手を出しちゃったのか。」

「違うよ。ちゃんと私から告白して付き合ってからの話だよ。」

「それが今もメイド服を着ているのは?」

「もちろん。私の趣味だよ。」

「ですよねぇー。」


「ねぇねぇ旭ちゃん、なんでここでもちろんなの。」

「わっかんねぇよ、私にも。てかこの人ら一向に真面目な話になんねぇな。」

 旭さん、満月さん、あなたたちも他人の家だというのに遠慮がありませんね。


 なにはともあれ。

 流石に旭たちの物言いももっともなので僕とおじ―――お義父さんは真面目な話をすることにした。

「なんかこうして「お義父さん。」なんて言ってると、「娘さんを僕にください。」って言いに来たみたいだよね。」

「ははは、確かにな。でも、仁君と蒼ちゃんは実は血のつながった兄妹だったから結婚は無理なのだ。」

「そっ、そんなぁ!」

「「だから真面目にやれっつってんだろ。」」

「「ごめんなさい。」」

 僕とお義父さんは早くも仲良く旭とお義母さんに怒られたのでした。


 take・2

「仁君、君はこれから私の息子として、―――っあ、この場合あっちのムスコって意味じゃないよ。」

「わかってますよ。ははは。」

「ははは。」

「「ゴホッン。」」

「「はい、すんません。」」


「仁君、君はこれから私の息子として、そして草薙家の次期頭首として生きてもらうことになる。」

「はい。」

「本来ならばこの草薙家の流儀と言うものを一から君に教え込まなくてはならない、しかし、君はすでに武士として士官学校に入ることが決まっている身である。」

「はい。母との約束もありましたけど自分自身で選んだ道と胸を張って言えます。」

「うむ。だがしかし、君には入学前にもう一つ大きな試練、いや、やらなければならない任務がある。」

「…………」

「これは大名庁としての任務であるので家族としての情けをかけることはできない。何としても任務を成功させるように。」

「拝命いたしました。」

「うむ。―――とわいえ、任務に人の手を借りてはいけないということはないからな、家族として最大限の助けをしたいと思っている。今回のこれもその一環だ。彼女たちと大いに親睦を深めるがいい。」

「ありがとうございます。」

「それと一つ、これは草薙家の当主として、そして父としての厳命だ。」

「…ごく、それは何でしょう。」


「いいかい、男としてヤレルときにヤッておけ。頭首になる以上後継ぎは早い目に作っておけ。これは、男としてマジなことだ!後で後悔せぬように。」

「‼‼!ハイ。ガンガンイキたいと思います。」

 直後僕たち二人は仲良くどつかれた。


 ちなみにお義父さんは童貞らしい。

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