フェチズムの犠牲者
第1話
さて、浜辺でBBQを楽しんだ僕たちだが、いったん宿泊施設である草薙家の別荘に行くことになった。
てかさっきまで僕らがBBQを楽しんでいた砂浜は草薙家のプライベートビーチだったらしい。
どうりで周りに人がいないわけだ。
てか、草薙家って僕が思っているよりすっごい家だったのかも。
そんな風に思いながら僕たちが砂浜に隣接している旅館かと思っていた建物にその答えは待っていた。
「はじめまして、仁君。私は君たちの叔父にあたる、草薙 弦十郎です。せっかく会いに来てくれたのにこちらの都合で先延ばしにしてしまって、すまなかったね。」
弦十郎さんはあのクソ親父の弟にあたる叔父さんである。
今までこうして顔を合わす機会が無くて、直に挨拶するのは初めてである。
「初めまして、仁です。」
親父と違って叔父さんは人のよさそうな笑顔をした紳士であった。
しかし、その服の上からもわかる鍛えられた肉体と、岩のごとき大きく静かな気配に、僕の様な未熟者でもこの人がただ者でないのがよくわかる。
「つかぬことをお伺いしますが―――」
「ははは、そんなにかしこまらないで。我々は家族なのだからもっとフランクに行こうじゃないか。」
大物感漂う笑い声をあげる叔父に、それではと僕は訊ねてみた。
「叔父さんは普段何をなさっているのですか?」
「ははは、私か?私などしがない大名庁の長官だよ。」
「ハハハ、なるほど、大名庁の長官ですか。」
「そうなんだよねこれが、ははは。」
「ハ、ハハ……ハ。」
やべぇ、てっきりヤの付く自由業の人かと思ってたのに、もっと大物が出てきちゃったよぉ。
流石に驚いた僕が、ふと、蒼と天堂姉妹のリアクションが気になってみてみれば。
三人とも「知ってましたよー。」と言わんばかりの顔をしていらっしゃる。
「パァパー、久しぶりー。」
「蒼ちゃん久ぶりー。元気してたぁ。」
「もちろん元気だよぉー。今日もこの後にみんなと海水浴するんだ。」
「そっかぁ、よかたぁよ。私も今日は仕事が休みだから仲間に入れてくれるかい。」
「もちろんだよ。あっ、そうだ。実は今日はこの前パパに買ってもらった水着を用意してるんだ。」
「おぉー、それは楽しみだなぁ。」
「ねぇー。」
「ちょぉっと待てやコォラー!」
「お兄ちゃん痛い、うめぼしが痛い。」
僕が蒼のこめかみをグリグリしている間に、叔父さんは傍に控えていたメイドさんにバックドロップを決められていた。
「仁、蒼へのお仕置きはその辺にして、事情を聴いてはどうだ。」
それもそうだと蒼を正座させてから叔父さんのほうを見ると、バックドロップを決められたままの姿勢で伸びていた。
「皆さん、うちの主人がについてはわたくしが責任をもって問いただし、しかる後に相応の制裁を加えておきますので、どうかお気になさらず。」
メイドさんが叔父さんの足首を掴んで引きずっていく、その途中に振り向いてこう言った。
「申し遅れました。わたくしは草薙 弦十郎の妻、草薙
義叔母さんがどうしてメイド服を着ているのかはわからないが、とりあえず今は置いておく。
二人が奥の部屋に消えたのを確認してから、僕たちは床に正座している蒼に事情を聴くことにした。
「ごめんなさい、ごめんなさい、お兄ちゃん、痛いことしないで。」
しまったぁと、涙をたたえて怯えている蒼を見て僕は自分のうかつさを思い知った。
蒼だってあのクソ親父の暴力の被害者だったのにだ。
ついカッとなってうめぼしをしてしまったが、あの場はいつのノリツコッミのつもりだったが何かが蒼のトラウマに引っかかったようだ。
いつもは腫れもの扱いするほどでないのに。
鬼や他人ではこうはならない、鬼相手ならむしろ勇敢な方だ。家族である僕からの暴力に対してだからこそ過剰な反応をしてしまったのだろうか。
………あっ、もしかして昨日の親父がストレスになって心が弱っていたのか?
ホント済まない。自分のことばっかで気づいてやれなくて。頼りないお兄ちゃんだよな。
「大丈夫だよ、痛いことしないから。だから、叔父さんとのことお兄ちゃんに話してく―――――
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!痛い痛い痛い。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「ひっ、ひぃぃ。」
奥の部屋から響く叔父さんの叫び声に蒼が一層怯える。
「大丈夫だからな蒼、お兄ちゃんは蒼の事イジメたりしないから。」
僕は蒼の肩を抱いて落ち着かせようとする。
「本当に?」
「本当だって。僕と蒼は家族なんだから―――
「ぎゃぁぁっぁぁぁ、待って、待て待って。私達家族だよね、なのにそれは―――ぁぁぁぁっぁっぁぁぁぁぁ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁらめぇぇぇぇぇぇ!」
「いい加減にしてください。蒼が怯えているんですけど。」
怯える蒼を旭と満月に任せて奥の部屋の扉を開いた僕の目に飛び込んできたのは……。
「おっと是はお恥ずかしいところを見られてしまいました。」
メイド服を着た義叔母さんがひっくり返った叔父さんの両足を掴み、こじ開けた股間の間に足を突っ込んで、ガガガガガガガガガガガガガガっと踏みつけていた。
通称電気あんま、または電気ハンマーとも呼ばれる大人の遊びである。しかし、大人のと付いているのに広く世間の子供たちに普及してしまっている遊びでもある。
一見、プロレス技にも見えなくはないが実際は反則技であり、無敵超人の間でも使われなかったほどである。
実際に叔父さんは泡を吹いて気絶していた。
これには正直どう返していいか分からなかった。
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