第6話
「それはお前が爆発すればいいんだよ。」
海で偶然に出会ったお坊さんに僕は神剣、スセラギノツクモノイワヒメノツルギについて、幼馴染の双子の片割れを生贄にしなければならないことをかいつまんで説明した。
そしたら先の言葉である。
助言じゃなかったのかよ。
「別に僕の人生はリア充と呼べるものではないぞ。」
現在抱えている問題や、あのクソ親父のことを考えれば明らかにマイナスだと思う。
「悪い、悪い、つい女日照りの坊主のひがみが出てきてしまった。」
相談相手を間違ったかな?
「多分な、怯えているんだ。」
節儀の口から出た言葉に僕は納得半分、そんなことかと思ってしまった。
「そんなの当たり前だろ、殺されるのが怖くない奴はいないだろ。」
「そっちじゃないよ、俺はその二人に会ってないから断言はしきれないけど、きっと二人とも覚悟を決めてるぜ。」
「じゃぁ、誰が怯えてるって―――
「お前だよ、お前さんが怯えてるんや。」
「!」
「殺されることはもとより、殺すことにも覚悟がいる、兄ちゃんの問題は兄ちゃんが答を出す以外にどうしようもないものや、そのうえでの助言や。」
「それで迷いは断てるのか。」
「断てるわけない、いやむしろ迷いを持たずに生き物を殺したらいかんのや。」
「それじゃまるで迷いながらなら殺してもいいって言っているみたいだぞ。」
「生きるということは迷うこと、生きるためには生き物を食べねばならない、つまりは生き続けるために迷いを食らい続けることが必要なんだ。」
「……すっげぇ、マジでお坊さんみたいだ。お前、ホントに同い年。」
「てめぇ、今まで信じてなかったのかよ。」
「いや、……だってハゲてねぇし。」
「ハゲじゃねぇよ、剃髪だよ。ちなみにこれズラな。」
そう言ってカポッと頭に乗っていたズラをはずしてみせる。
なるほど、こうして見れば確かにお坊さんだ。
「つまり迷い悩んで答えを出すのが僕の責任と。」
「ちゃうわい、ボケが。」
「は?」
「迷い云々の話も大事やけど兄ちゃんに必要な助言はそこやない、兄ちゃんは何のために鬼を退治するんや。」
「……あっ!」
「生きるため、皆の命を守るためやろ。そのために命張る
「…………………………。」
「これが俺からの助言や、これが生かされることを願うで。」
「ためにはなりそうだ、礼は言っておく、が、なんで途中から関西弁みたいな喋りになるんだ。」
「いやぁー、コレ癖でな。真面目になるとつい出てまうんや。寛仁な。」
意外と気の合った坊主の助言を受けて、その間に釣れた魚を分け合った僕たちは次は学校で会おうと挨拶を交わして分かれた。
「そう、怯えないで。ほら、森へお帰り。」
「僕は虫か!」
「
本当に坊主みたいだなコイツ。―――いろんな意味で。
そのあとは海辺の道を魚の入ったバケツ片手にペッタラペッタラと歩いて待ち合わせの砂浜に向かう。
ちなみに砂浜へ行くための手段について何も言われてないのだから、別にタクシーを使っても構わないのだろう、が、残念ながら財布は車の中の荷物と一緒だ。
別に着払いなのだから構わんだろう、って気もするが、それはそれでなんか悪いことしている気がした。
何より生きた魚が入ったバケツをもってタクシーに乗るとか迷惑すぎるだろう。
多分、普通に断られる気がする。
まぁ、そんなことよりも先ほどの坊主、彼の助言をもとに自分の考えを改めたいと、そう思っていたので浜辺までの道中はちょうどよかった。
これぞ渡りに船と言う奴だろう。―――海に落とされただけに。
僕の考えているのはたぶん他の人からしたらバカなことなのかもしれない。
だけど、僕が殺さなければならない二人、旭も満月も幼馴染なのだ。
幼馴染、つまり小さいころから仲が良く数々の思い出を共有してきた家族に近いものなのだ。
思い出すものだ、あのクソ親父が出て行ってからは特に天堂家にお世話になっていた。
多くの幼馴染は思春期になるとよそよそしくなるとか聞いたりするものだが、蒼を入れて俺たち4人でよくつるむのも中学に入るまでだった。
そして、僕にも男友達が居ないわけでは無いが、ハーレム野郎のレッテルを張られていた中学時代は距離を取られていた。
そんなこともあり女子3人の中に男1人で混ざりに行くのが恥ずかしかったため、次第に僕は孤立していった。
これにより僕は1人の男として、―――オタクに覚醒したのだ。
孤立していた僕をオタクに導いた人はまさしく救世主みたいだった。
出会いは鬼に襲われた時に助けらたことがきっかけ。
僕が孤立しているのを知ればオタク道に導き、たくさんの仲間を紹介してくれた。
そして、オタク趣味が二人にバレた時に、―――いや、今は師匠のことを考える時じゃないだろ。
師匠のおかげで僕はまた旭と満月と仲良くなれたのだが、そのどちらかを犠牲にしなければならないことになった。
僕はそれがすごく悪いことだと思っていた。
しかし、さっきの坊主の助言で一つ気づいたことがある。
生きていればいつかは死ぬ、僕が殺らなかったために二人だけでなく多くの人が望まない死に方をするかもしれない、ということに。
そして、二人は僕に斬られることを嫌がるどころか、それを望んでいる。―――望みの死に方を選んでいる。
なのに僕が彼女たちを斬るのを悪いことと嫌うことは、―――好きだから、一番でありたいから斬ってくれと告白してきた二人を嫌いだとフルようなものではないのか、それ以上に二人の命を無碍にするのでは、なんて考えが生まれた。
ならば、そもそもが僕は二人のことが好きなのだから。
考え事をしながらながらも目的の砂浜にたどりついた僕はすぐに満月を見つけた。
そばには蒼がおり、旭はパラソルの下でくつろいでいらっしゃる。
満月は草薙家の使用人とBBQの準備をしていて、僕に気が付くと楽しそうに手を振ってきた。
僕は手を振り返しながら、決意したのだ。
その時が来るまで余計なことは考えないで、精いっぱい二人と
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