神剣双娘生贄譚～二者択一の殺意＝愛

第4話

「で、結局のところどっちでもいいわけでは無いんだろう。」

「勿論、このイワヒメの力を解放するにはお兄ちゃんの一番ラブな人でなければなりません。」

「もしも僕がほかのだれかをラブったらどうするんだ。」

「残念ながらお兄ちゃんには他に女の子と仲良くなれる気配が無いから、陰陽寮もその卦が無いと断じたから、うん、だから大丈夫だよ。」

「なにが大丈夫だよ。そんなことを確信をもって言われても悲しいわ。」

「仁、贅沢だぞ。世の中には生涯女性と仲良くなれない人たちもいるのに、お前は幼馴染の双子である美少女に告白されたんだぜ。」

「告白って、……何時？」

「ほら、仁君に「じゃぁ聞くけど、なんで二人は斬られてもいい―――、いや、斬られたいんだ。」って聞かれた時に、「「そんなの仁(君)が好きだからに決まってるじゃないか。」」って。」

「あれが告白かぁ。」

「返事はその刀でお願い。」

「仁の好きな方を斬ってくれ。」

「ロマンスの欠片もないな。」

「お兄ちゃんの恋愛事情がバイオレンスな剣について、―――本にしたら売れるかな。」

「売れるか、そんなもん。」

「件と剣が掛けてあるのがミソ。」

「知るか。―――そんなことより、僕がどちらも切らないってのもありなのか。」

「残念ながら確実に斬るとみられてるぞ。―――どちらがかは分かってないらしいが。」

「お前らは本当にそれでいいのかよ。」

「あぁ、もちろんだとも。」

「むしろ、二人とも仁君のことが好きになっちゃっていたから都合が良かったかな。」

「最初はどっちが仁告白するのが先かで揉めていたんだよな。」

「私たちはどっちも譲る気はなくて。」

「で、そこにこの話が来たから―――

「「勝った方が仁(君」に斬られて、負けた方が仁(君)のお嫁さんにしてもらうってことになった(の」。」」

「負けた方が嫁って何それ、普通逆でしょ。あとさらっとお前らのどっちかを嫁に取らなきゃならんのかよ。」

「「私じゃいや(か)？」」

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。」

「そこで黙っちゃうあたり、お兄ちゃんってヘタレだよね。」

　ダマレ、妹のセリフにそう思わざるえなっかたが、自分のことなのにヘタレだと思ってしまうので口に出すことができない。

「仁、一つ誤解の内容に言っておく、私も満月もお前のことが好きなのは本当だ、むしろ好きすぎるくらいなものだから恋人やお嫁さんになる以上にお前の一番になることが重要になってしまったんだ。だから私たちは一番である証としてお前に斬られたいんだ。」

「そして、負けた方はせめてもの慰めとしてお嫁さんにしてもらおうって。」

「それ、僕の都合を無視しすぎじゃない。―――そもそも、なんで二人はそんなに僕のことが好きなの。」

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。」

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。」

「そこだよ、そこでだんまり決め込むから二人のことが信用できない、って言うか、この話に納得がいかないんじゃないか。」

「お兄ちゃん、女の子の秘密を暴こうとか最低だね。」

「お前はどっちの味方だよ。」

「私は女の子だよ。お兄ちゃんより旭姐さんや満月姉さんの味方に決まってるじゃない。」

「まぁここは、据え膳喰わねば男の恥ってぇ言葉もあるだろ。」

　素っ裸のくせに仁王立ちを決める旭は確かに男らしかった。

「こっからは私と満月で交互に仁の好感度を稼ぐためにあれやこれやの勝負をする。仁はおとなしくソレに付き合ってただ単純にどっちが好きかを考えればいい。時が来れば仁の心に従って選ばれた方が斬られる。そこには恨みっこなしで挑もうや。」

「また、それじゃぁまるでその時が来たら―――」

「はい、残念ながらその時が来たらお兄ちゃんがどれだけ惨めに拒絶しようと、お兄ちゃんの好きな方をお兄ちゃんは斬ることになるのです。」

「マジかよ………。」

「マジです。」

「覚悟きめろよ。」

「私はできれば一番になりたいから、お願いね。」

「あっ、ずりーぞ満月、私だって一番になりたいんだから、抜け駆け何かさせねーぞ。」

「と、いう訳でこれよりお兄ちゃんの心争奪戦が始まりましたが、これについてお二人に意気込みを聞いてみましょう。」

　まずは満月さんから、と言うそのの言葉と共にマイクを向けられる仕草ををされた満月は、

「えっ、私。えっと、その、……そうだ、私こそ仁君の一番になります。旭ちゃんにはできないエッチいことだって何でもしてあげますから、どうぞよろしくお願いします。」

「なっ、満月お前何言ってんだ。」

　妹の宣言に姉の方は真っ赤になってうろたえているが、当の妹の方も真っ赤になっている始末。

　そんなことはお構いなしとばかりに、我が妹の蒼は涼しい顔して旭のほうにマイクを向けるしぐさをする。

「妹の満月さんからのエッチも辞さない発言に姉である旭さんはいかな思いでしょうか。」

「いやぁ、あの、………その。」

　珍しく顔を真っ赤にした旭がしどろもどろになっているのは見ていてほほえましいものがあるが、蒼よ、すこしやりすぎではないか？

「どうやら姉の旭さんはエッチなことには乗り気じゃない様子、そう言うのはすべて満月さんに譲る様で御座います。」

「譲らない。エッチなこともそうでないこともみんなあたしがする、満月には負けない。」

「ハイ、ご覧の通り天童姉妹はどちらもやる気十分のご様子。これを受けて渦中の我が兄、草薙　仁ははいかなお気持ちですか。」

「………話はまた後にしてもらおう。………流石にのぼせてきた。」

　そう言って僕は逃げ出すように風呂を上がった。

　その背中に何か悪態の一つもあるかと思ったが、残りの三人も無言で風呂を上がってきた。