第2話

 さて、風呂でくんずほぐれつを行っていた僕たちも、今はしっかりと汚れを洗い流した。

 そうすれば湯船につかって温まるのが風呂の醍醐味だろう。

 僕たち4人は思い思いのスタイルで湯船につかっている。


 ここで一つ。

 僕の、と言うか僕の親父の実家はかなり裕福な家だ。

 親父はあんなんだったため実家からは勘当されていたのだが、一応行動は把握されていたらしく、オヤジが失踪してすぐ僕たち兄弟と身寄りのなかった母はこの家に保護された。

 親父は実家でも評判が悪かったため僕たちの扱いも腫れもの扱いだった、その為に僕たちは彼らの援助こそは受けさせてもらったが必要以上に関わらないようにしていた。

 のだが、向こうは向こうで訳ありらしく僕たちを正式に一族に加えることになっていた。

 そのあたり母さんとは話が進んでいたらしいが、その母さんが今年に入って急死してしまった。

 大人の事情は子供の僕たちにはわかりかねるが、知らないうちに僕が跡取り候補になっていたらしい。

 進学先などにもつてがある家らしく下手に逆らうのも得策ではない、と言うかめちゃくちゃ贔屓にされている。

 天堂姉妹も含めて生活の面倒を全面的にみてもらっている。

 裏があるんじゃないかと思ったが、結果はあの神剣がらみだったらしく、僕が天堂姉妹の、旭か満月のどちらかを斬ることがこの家、ひいては裏で糸を引いている大名庁の目的なのだろう。


 正直、この神剣にそこまでするものなのかと疑っているのだが。


 なにはともあれ、特別扱いを受けている僕たちは、先の鬼退治の後始末から免除されて、悠々とお風呂を楽しんでいるわけだ。

 そしてなにより、家がデカいだけあって風呂もデカい、加えて贅沢に源泉かけ流しの露天風呂付。

 風呂の面積だけで母子家庭だったころの家より広い。

 にもかかわらず、僕は旭と満月に込み入った、いや、意気地がない話をしようとしている。

「なぁ、旭も満月もいいか、改めて聞くけど二人とも神剣の生贄になるのに抵抗はないのか。」

「仁君、ちみぃ~、間違っているよ。」

 僕は湯船のふちに両手の肘を置く殿様スタイルで話を切り出したが、正面の満月は話の基本が間違っているとダメ出しをしてきた、が、それより肩まで使っているのに満月の胸が水面にぷかぷか浮いているのが気になって仕方がない。

 Fカップすっげーな。

「仁君がここで聞くべきは、何で神剣に斬られたいのか、だよね。」

「そうだぜ、私ら二人はすでに斬られることを承知、むしろ望むところなんだからよ。」

 風呂のふちに腰かけて足を組んでいる旭が上から目線で胸を張ってそういう。

 そんなことより胸を張る旭の美乳が作る、下乳と脇腹のラインがめっちゃ絶景なんですけど。

「じゃぁ聞くけど、なんで二人は斬られてもいい―――、いや、斬られたいんだ。」


「「そんなの仁(君)が好きだからに決まってるじゃないか。」」


 何と言うか、べたな答えと言えばべたな答えだ。

 しかし二人の答えは本気なのだろう、事実として二人の声は浴室に響いてエコーが掛かってしまうほどだ。

 そんな二人の気合に当てられたのか、

「あのーー、私はお邪魔そうなので退散しましょうか?」

 少し離れたところで湯につかっていた妹の蒼が手を上げて訴えていた。

「いやそれには及ばんよ。」

「そうだよー。結果的には蒼ちゃんは私達の妹になるんだから。」

 と、旭と満月の二人に笑いかけられる蒼は、何故か恨めしそうというか、「リア充爆発しろ。」と憤る友人たちのような目で睨みつけてくる。

「それに蒼ちゃんに話てもらわなければならないこともあるし。」

「そうなんですか?」

「あぁ、仁がバカだからな。」

 誰がバカだ、と旭を睨むがその横で満月がとりあえずと前置きを入れて話し始める。

「話の前に仁君の誤解から解いておいた方がいいんじゃないかな。」

「あぁ、仁はこれを呪いの剣と思っているんだったな。」

「いや、実際に双子の一人を斬らなきゃ真の力を発揮できないのは呪われていると言ってもいいじゃん。。」

「仁君、その神剣の名前は憶えている。」

「なんだっけ、確かオオスマトラオキヒメサライノツルギだっけ?」

「スメラギノツクモノイワヒメノツルギだよ、お兄ちゃん。」

 傍観を決め込むかと思っていた妹からのダメ出しについ蒼の顔を見てみるが、僕を馬鹿にすることなく風呂の中心を見つめている。

 その目線の先には誰が持ち出したのか、問題の神剣がプカプカとお風呂の水面に浮かんでいる。

「ってかなんでその神剣が風呂に入ってるんだ。」

「えっ?お兄ちゃんが持って来たんじゃないの。」

「私は今まで全然気が付かなかったが。」

「てっきり仁君が持ち込んだとばかりー。」

「もはやひとりでに風呂に入る刀とか呪われている意外に何なんだ。」

「いやでもなぁ、鬼のち〇こ斬って返り血を浴びれば風呂に入りたがるだろ、現に私たちも入ってるし。」

「そりゃぁ人間ならばね。」

「仁君。人間だけじゃなくって女の子なら誰だって鬼のち…ち…ちん…ちん………な、汚いものをあびればお風呂に入りたいものだよ。」

 そりゃあぁ入りたいだろう、男である僕だって頭から鬼のち〇こ汁をかぶっては風呂に入らずにはいられないのだから。

 だが、この満月の言い分を聞くとまっるでこの呪われた神剣が女の子みたいではないか。


「みたいじゃなくて、この子は正真正銘の女の子だよ。」


 ここで蒼はにやりと笑いやがった、どうやら俺で遊ぶことに決めたみたいだ。

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