第5話
「この神剣の名前ってなんだっけ。」
と言う話で始まった
この世界には鬼が居る。
鬼の居ない世界もあるかもしれないが、この世界には厳然として鬼が居る。
そして鬼は鬼らしく町を襲っては人を食らう。
これらの鬼がいつ現れたかと言うと、世界の始まりまでさかのぼる。
世界の始まりは二人の神によってもたらされた。
二人の神は多くのモノを生み出した。
その中には命ある者達もいた。
詳しいことは割愛するが、ある時、一方の神がもう一方の神を裏切って激怒させてしまったのです。
怒った神は、「あの野郎、ぜってーにブッ殺す。」と完全に頭に血が上ってしまい、怒らした神が生み出した人間をはじめとする生き物たちにも八つ当たりをはじめ、自ら生み出した生き物たちにも人間たちを苦しめて殺すように命じました。
これが鬼と呼ばれる者たちの成り立ちです。
人間を生み出した神様はこの怒らせた神様をなだめようとしましたが、火に油を注ぐ始末。
一説にはこれが原因で人間への八つ当たりが始まったという。
しかしてこりゃ駄目だと怒らせたダメ神は逃げ出した上に鬼やその親の神様を地底に閉じ込めたのである。
この時点でどっちが悪いものかはわかると思うが、だからと言って自分たち人間も黙って殺されるわけにはいかない。
人間側も地上に残った鬼たちと戦ってきた。
結果、千年前に大きな戦いを経てからは鬼の数もめっきり減った。
しかし、この21世紀の日本に鬼たちが再び姿を現した。
最初は手を貸そうかと日本に恩を売ろうとしていた他国も、各国由来の物と思われるモンスターの出現が確認されると、「自国内の脅威に対抗するのは主権国家としての義務にして責任である。」的なことを言い手のひらを返し、自国内の対応でいっぱいになった。
補足であるが、鬼たちに対しては近代兵器による攻撃は有効でなく、剣や弓矢などの中世的攻撃手段が有効である。
近代兵器は戦力の展開や通信技術などでは大きな成果を上げていたので無駄にはなってないが、今の戦場では人が戦うのが当たり前になっている。
これに伴い日本は防衛省の在り方を対国家から対鬼戦を主体とするものになった。
これには自衛隊の存在をどうするかが問題視されたが、自衛隊は鬼に限らず災害などから国民を守るためにある。として組織として変更することはなかった。
代わりに日本は鬼と戦うものを武士(ぶしとももののふとも言い方が2つあるが。)とすることにした。
武士は階級でなく警察などと同じ官職であり、これをまとめる組織が武士社会に倣って大名庁と言う。(幕府と言う案もあったがそれでは国政も武士が担うのかと却下された。)
ここまで長々と神剣と関係なさそうな話をしてきたが、関係大ありなのである。
だって
僕はてっきり田舎の町興しの為に用意されたものだと思っていたら、残念、本物でしたぁぁぁぁぁぁ。
これ仕込んだのに絶体に
多分僕にはこの神剣を扱う適性が確認されていたのだろう。
で、あの人のことだから素直に渡すより遊びを入れないと気が済まないのだろう。
そして、妹も親父の実家の人だけじゃなくて村の人みんなもグルだったのだろう。
たぶん、観光客のほとんどが用意された人なのだろう。
この展開について僕が憤っている理由がこの神剣にある。
だってこれ呪われてるじゃん。
なに、真の力を発揮するには双子の娘の内、一方を斬る必要があるだと。
それ完全に呪いじゃん。そのままでもそこそこ強いんだからそのまま使えよ。―――はっ?、そのまま使い続けると罰が当たる。
そんなもんをお膳立てしてやれば喜んで使うと思うか。
後、問題なのが生贄に選ばれた双子だ。
前述のとおり双子は僕の幼馴染だった、この二人が生贄に選ばれたにもかかわらず嫌がっていないことだ。
旭も満月も二人で声をそろえて「ねぇ、私を斬って。」なんて言われた時は二人の正気を疑ったほどだ。
ちなみに言われたのが「ねぇ、私を食べて。」だったらそれこそ大喜び、ルパンダイブで飛びついちゃっているだろう。その時は僕の正気を疑った方がいいが。
ともあれ、二人が洗脳ないし何かされていないとも限らないが、これを仕込んだのがあの師匠ならそんなことはしないだろう。
仮に勝手にやった奴がいたなら、そいつはすでに僕の前に、最悪死体になって師匠に転がされているはずだ。
それを踏まえると、二人が互いをかばい合っているという可能性がある。
が、なんか違うんだよな。
なんて言うかおままごとのお嫁さんをどっちにするかを迫ってきているような感じだ。
僕に斬られることが不利益にならず、逆に利益になるからだとすれば納得がいくのだが。
斬られた方は何か願い事が叶うのか?
僕が知る限りこの二人に命を捨ててもかなえたい願いがあるのだろうか、と考えても思いつかない。
何はともあれ、僕は旭か満月のうちどちらかを斬らなければならない。
逃げ出せるなら逃げ出したいがそれは敵わないだろう。
二人とも僕に斬られる方を選ばせることを望んでいる。
そして僕は二人から逃げられる自信が無い。
なれば、僕は二人のうちどちらかを選ばなければならない。
これが、呪いでないなら何だというのだ。
この神剣の名前を後日偉い人に聞いてみた。
スセラギノツクモノイワヒメノツルギ。
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