第2話
十五畳ほどの広い座敷で僕と旭、そして満月の3人だけの朝食を済ませた。
食事を済ませたら洗い物が出る。
洗い物については満月が行い、その間に残った僕たちが他の仕事をする。
旭は庭で洗濯物を干している。
季節は夏。
燦々と輝く太陽が綺麗に乾かしてくれるだろう。
そして僕は山に芝刈りに―――行くわけでもなく、座敷の掃除だ。
軽くはたきをかけてから掃除機をかける、が、いかんせん部屋が広いのでそこそこ時間がかかるものだが仕方ない。
僕たち3人の自室と共用の内この座敷の掃除、炊事と洗濯は基本的に僕たち3人が自分たちでする決まりだ。
自室は各自でやるので掃除はここだけだと考えればまだましである。ちゃっちゃと終わらそうと思う
わけ合って3人で暮らしているが先の3つ以外の家事は使用人がやってくれている。
てかホントは全部やってくれるはずだった。のに、満月が最低限それぐらいは自分たちでやるべきだと言い出して、そこでわがままを言えなかった僕たち2人も頑張ってます。
で、その満月さんについてですが、姉の旭と並べるとイメージが全然違うのに基本的な骨格などはさすがの双子と言えるだろう。
ただし、元は同じでも性格からくる体形の違いが要所要所に見られる。
姉の旭がモデルのようにすらりと引き締まったモデルのようなスタイル、例えるなら平成スタイルとでも言ってやりたいところだ。
それに対して満月はぽっちゃり系とまではいかないが、全体的に柔らかかそうなよく女の子らしいと言われるスタイルだ。
もちろん旭の例に例えて満月のことを秘かに昭和スタイルと呼んでいる。
蛇足ではあるが将来、令和生まれの若者が目指すスタイルが生まれたとしてそれはどんなスタイルなのだろうか?
今現在は赤ん坊か精子、ないし卵子でしかないんだけどね(笑)
皆さん、健やかに育ってください。
ともあれ。
満月の見た目についてだが。
身長は旭と同じ150㎝くらい、体重は―――言わないでおこう、洗い物を済ませて昼ご飯の下ごしらえを進めている満月から包丁が飛んでこないとも限らないからな。
「仁君、なんか呼んだ?」
「いえ、何にも言ってません。」
「そう。」
触らぬ神に祟りなし。
とりあえず満月の体形について言及するのは避けよう。
ここはあれだ、アレについて語ろう。
おっぱい、おっぱいである、つまりパイオツだ。
なにを隠そう満月の胸囲は100㎝越えのFカッ―――
ズダッァァァァァ!ンゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
「ごっめぇん。手が滑っちゃった。」
何がどう手が滑れば
勢いでカッ飛んでくるのか。
ズボっと柱に刺さった包丁を満月がひっこ抜くときに、
「ぜんぜん掃除が進んでないぞ。おさぼりはメッだぞ仁君。」
とたしなめられた。
その顔が悪鬼に見えたのは気のせいだろうか。
とりあえず掃除はしっかりしようと決めて、そのうえで満月のことを見る。
満月はさっきの所業が信じられないくらいシャキッとした所作で台所に立っている。
その姿は昭和の若奥様―――と言ったら包丁が飛んできそうで怖いが、そう言えるだけの安心感のあるいで立ちをしている。
体形についてはもう言わないが、基本は旭と同じなハズなのに丸みを帯びた優しさが各所から感じられるのだ。
髪型もショートボブに後頭部に尻尾みたいな一房の御下げが伸びているのがまるでお母さんみたいだ。
服装も薄桃の明るい色のフリルがたっぷりのワンピースを着ている。そこに、これまたフリルのついたエプロンをつけている。
今は若奥様的コーディネートであるが、満月はかなりのお洒落さんだ。
色々な種類の服を持っていていろいろな組み合わせを見せてくれた。
すごいのは自分で服を作っちゃうこともできるとこだ。
料理を始め家事全般が得意な女子力の塊だ。
もちろん、学校では男子にモテモテなのだ、ファンクラブがあるくらいなのだが、それが幼馴染であるからと僕を目の敵にされて困ったものだった。
まぁ、幼馴染だけあってあいつらの知らない秘密を知ってるんだけどな。
アレを知ってどれだけのファンが残るのか、と興味があり暴露してみたくなる時があるが、後が怖いので実行することはないだろう。
「洗濯物終了。おっ、仁のほうも掃除が終わったのか。」
「あぁ、鬼の居ぬ間のなんとやらだよ。」
「たっしかになぁー。こんな日にはおもいっきり遊び倒したいよな。」
今日は干した洗濯物が気持ちよく乾きそうないい天気だ、僕も旭に倣って背伸びをする。
「二人とも、遊ぶのはいいけどせっかくの天気なんだからお布団も干そうよ。」
「あぁ、たしかに。お母さんが言うなら布団も干さないといけないよな。」
「あぁ、母さんが言うならしかたないなぁ。」
と言うわけで3人で庭に布団を干しに出た。
「私はお母さんじゃないよ。」
そう言って頬を膨らませる満月、それを見て僕と旭は顔を見合わせて笑い合っていた。
そう、この時は僕たち3人は幸せだったのだ。
僕たちの幸せな日々には制限時間がある。
その時が来るまで仲良く3人で楽しく過ごすのだ。
それが―――と決められた契約だった。
しかし、そいつはそんな僕たちのささやかな幸せなど知ったことかと土足で踏み込んできた。
そいつは僕の父親だったものだ。
それは僕と母さんを捨ててどこかに消えた何かだった。
それは母さんと僕をよく殴っては笑っている奴だった。
現にいまもニヤニヤと下卑た笑いを浮かべている。
「何しに来た。」
「いぃやぁねぇ~、お父さん聞ぃちゃったぁんだよぉ~。仁くぅ~んがぁ~、神剣にぃ~選ばれたってぇ~さぁ~~~~。」
「それで
「あぁ?ガキが口の利き方に気をつけろよ。俺様はぁ~てめぇ~の父親様だぜぇ~。ガキが美味しい目を見てたら~、おこぼれに期待しちゃうだろぉ~。だからぁ~、わざわざ俺様がテメェ~に貢がれに来てやったんだからぁが、だぁかぁら、もっと!歓迎しろやガキ!」
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