例のブツが行方不明 まぁ、拾ったのが卵でよかったなっつーことで

 そして翌日の夕方。

 それなりに身なりを整えた母子と、相変わらずリースナーにスリスリしてるガンジュウ。

 ところでこいつの名前、決めてないのか?

 まぁどうでもいいが。


「みなさん、今までお世話になりました」

「こっちこそいろいろ助かりました」

「面倒事もあったけど、それはリースナーさんのせいじゃないからね」


 コーティの言う通り。

 でも何となく毒を含んでるような言い方に聞こえるのは……普段の言動のせいだな。


「いえ……そんな……」


 遠慮の言い合い程、不毛なことはない。

 とっとと用件済ませて追い出すに限る。


「で、だ。こいつを持ってってくれ。十二時間は持つと思うし、消費し切れるだろ。出来立てだし。夕食と夜食。余りそうだったら、付き添いの冒険者達の誰かにあげてやんな」

「そ、そんな……」

「おぉ、その手があったかぁ」


 テンちゃんが感心してる。

 温かい、と、あったか、をかけてるつもりじゃないだろうが、何となく寒く感じるぞ?


「……本当に、今までいろんなお気遣いを……」

「ありがとうございましたっ」


 ガキの方は、来た時とは見違えるほど礼儀正しく挨拶をしてきた。

 ドーセンにいろいろ叩き込まれたな?

 だが、それは多分、これからのこいつらの仕事に、よほど役立つ武器になるんじゃねぇかなぁ。


「んじゃアラタ、この二人と一匹の出発を見届けたら報告に来るぜ?」

「んな大仰にしなくていいよ。俺らの役目はここで見送ることで終わりだかんな」


 十五人くらいの冒険者達に守られながらの出発。

 暴れようとしたガンジュウの素材で、どれほど恩恵を受けたんだろうな、こいつら。

 そこんとこはちょっと興味がある。


「じゃあ……みなさん、今まで本当にありがとうございました。また何かご縁があったら、お世話になります」

「そんときゃこっちが、そっちが起こした事業の世話になる時、ってことになってほしいもんだわ。……達者でな」

「またねー」

「バイバーイ」

「お元気で」

「また来なよー」


 みんなからの声に送られて、そして冒険者達に守られながら店の前から去っていく母子達。

 そして……。


「さて……槍衾も完全に外されたし、集団戦も手伝いの連中も、明日から再開すんぞ」

「おお」

「がんばんべかな」

「しょーがないわね」

「はいっ。頑張りましょう!」


 またいつもの日常が始まる。

 そして待望の、俺ののんべんだらりな毎日も。


「アラタも手伝いにやらせてばかりじゃなく、手が空いたら何かお仕事してよね?」


 やってくることに期待する。

 今まで散々頭脳労働してきたんだからいいじゃねぇか……。

 それにしても、うんこと卵を間違えて、それからここまで問題が発展したか。

 もしあの母子が見つけた物体がうんこだったなら。

 うんこってことは、その魔物のお通じがよかったってことで。

 くそ、つまらなかった出来事。

 つまり、くっそつまんねぇことになってたかもしれねぇ、と。

 ……普通のうんこってことは、脱水症状じゃないって訳だから……。


 下らねぇこと言ってんな、俺。

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