素材クエスト?グドンとツインテール参上!

この地球の学校には、国数理英歴体の基礎学問の他にある科目がある。


それが怪獣学だ。


だいたい週に1コマ組み込まれていて、中学校からは地理か公民か怪獣学かの3種選択科目になるんだけど…。

バトルブリーダーズ資格所持者は漏れなく必修授業となる。


給食を食べ時間もたった午後の気だるく眠い時間帯…。

ふぁ~~~…。

あくびがよく出るな~。

そんな時間から始まる怪獣学。

今日の怪獣学の授業は怪獣の成長に関してだ。

白髪混じりの初老のムラマツ先生が黒板に重要な点を書きながら授業が進む。


「であるからして…。

ウルトラストーンを加工した万能DNAや属性別DNA以外にも。

鉱石由来の生命体である怪獣の成長に欠かせ無いのが、天然石に含まれる鉱石栄養素類です。

鉱石由来の機械型怪獣も強化する為には、コレらを必要としています」


「せんせ~い!

口が無い怪獣とかは、どうやって栄養を取り入れてるんですか~?」


「主に体への刷り込み摂取ですね。

今まで確認されている栄養素の種類はその形状や性質から、ハート・スパイン・クロー・ホーン・ブレイン・古代獣の化石結晶等と命名されています。

ここテストに出まーす」


一斉に生徒達がガヤつく。

書く動作をする生徒が一気に3割は増えたぞ。

僕も眠いながらも必死にノートを書き取る。


「で、更にそれら鉱石を元にして人為的に作られたのが格闘思考感情などの素材です。

コレらをカプセル状に加工した物を摂取させる事で、怪獣は成長するのです」


「では、素材クエストとは何か?」


「コレらカプセル栄養素は、ショップで買えるしろモノですが…。

鉱石を採掘し加工してできてます。

コレらの栄養成分を多量に含む鉱石を採掘出来る場所には、怪獣も本能で分かるのでしょう。

多くの野良怪獣が寄って来るのです。

それら怪獣を寄せ付けないよう討伐し、その報酬として様々なカプセルを貰う。

それがブリーダーズが請け負う素材クエストなのです」


と、先生が語った所で、丁度チャイムが鳴り出した。


キーンコーン…


「では、今日の怪獣学はココまで。

次回の授業は怪獣と食についてです」


「きり~つ…きよつけ~…れーーい」


「ハイ…ではまた次回」


怪獣学のムラマツ先生はペコリと頭を下げて教室から出ていく。


ようやく今日の授業が終わった~。

眠かった~。

怪獣学は面白いんだけど、いかんせん授業の時間帯が…。

キツい。

掃除とホームルームを終え、僕は部室棟へと向かう。


この地球の部活動は怪獣関連の部活動も結構多い。

怪獣映像部、怪獣クイズ研、怪獣漫画同好会、怪獣ジオラマ建築友の会。

そして怪獣関連の部活で一番人気は…。

そう!!

バトルアリーナ研究会だね!!


バトルアリーナ!!

怪獣ブリーダーズかつペーパーブリーダーでないなら、年齢性別全て不問で参加出来る対戦形式の怪獣格闘技だ。


バトルブリーダーズ達が育成した怪獣同士を4対4のチーム戦で戦わせるんだ。

詳しい事は後々語るとして…。

ほぼ一年かけて予選を行い。

年末の大晦日にはバトルアリーナの決勝トーナメントが東京で大々的に行われ、年末特番の定番にもなっている。

ココの地球の年末特番と言えば、紅白歌合戦か、ガキの使い笑ってはいけない怪獣総進撃か、バトルアリーナ決勝トーナメントこの3つさ。


そのバトルアリーナに向けて個々の怪獣育成方針や、戦略研究、模擬戦を突き詰めるのがバトルアリーナ研究会。

最高成績で、あと5回勝てば決勝トーナメントへの出場目前までいった実力人気共にある部活動なんだ。


で、僕が所属している部活は…。

もう分かるね?

そう!!

バトルアリーナ研…。

の隣りの隣りの部室の…。

怪獣写真同好会です…。


うん…。

人気のある部活動ってね。

全員入れる訳じゃあないんだよ。

入部希望者が人数過多になると、もれなく抽選になる。

体育会系の部活だと運動テストだね。

で、僕は抽選に落ちて怪獣写真同好会へと入部する事になったんだ…。

トホホ…。


「遅れました~すいませ~ん」


引き戸をガラリと開けて部室へと入ると、僕と同学年の女子。

ユーキ・トキノが部室で本を読んでいた。

文庫本サイズだからラノベだろうか?


「あれトキノンだけ?

先輩達は?」


小学校まではずっと同じクラスで、見知った仲だから、僕はトキノの事はトキノンと呼んでる。


「ん…。

部長が今度のバトルアリーナ対策で自主休部するって言ったら皆帰った」


「部長まだ決勝トーナメント進出諦めてなかったんだ…

もう後は30連勝位するしか道は無いだろうに…。」


「じゃあ伝えたから、私も帰るわ…」


トキノンはそう言い終わると本を閉じて、

帰り仕度をし始める。


そうなのだ。

怪獣写真同好会はほぼ幽霊部員で構成された…。

幽霊部活動になっているんだ。

それもそのはず。

バトルアリーナ研究会に入れなかった人が、仕方なく別の部活に入るパターンは多い。

そうなると、その部の活動自体も曖昧になってくるよね。

特に文化系部活動では。

その典型が怪獣写真同好会。

ウチの部長自体がそうだから困る。

良いのかな?こんな感じで~?

まあ、僕が言えた義理じゃあないんだけどね。


その時だ。


部室の引き戸がガラリと開かれた。

一瞬ビクッてなる僕ら二人。

やって来たのは怪獣写真同好会顧問のムラマツ先生だった。


「おや君達二人だけかね?」


「先輩方は外へ撮影に行ってますよ」


トキノンは焦る事も無く平然と答える。

こういう所は凄いよな~。

そんな眼差しをトキノンに向ける僕。

そして、ムラマツ先生は困った表情を見せた。

何かあったのだろうか?


「そうか…。

君達は確か二人ともブリーダーズ資格者だったね。

君はグドンを育成しているかね?」


地底怪獣グドン!!

見た目は、直立二足歩行出来る毛の無い狼と昆虫を足して2で割り、全身を黄土色した見た目。

どちらかと言えば虫よりかな…。

顔つきは赤い目をした犬みたいで、ちょっと凛々しいぞ。

頭頂部には細長く黒いツノが二本突き出てて。

胸部と背中全体からシッポと腕にかけ大きなトゲがポツポツ生えてる。

両手はムチ状で、コレを振り回して攻撃したり、震度させ地面を掻き分け地底内を移動しているようだ。

そして、コレはとてもとても有名な話しなのだが…。

ある怪獣が大好物なんだ。


ムラマツ先生に質問された事に僕は返す。


「あ~僕は育成してないですね」


ムラマツ先生は次にトキノンへと向き直ると同じ質問をした。


「キミは?どうかね?グドン?」


「私…育ててますよ…グドン」


「そうか…。

…………………。

なら二人とも…。

少し手伝いをしてくれないかね?」


「「………………」」


断るのも何か悪い気がして、僕らは先生の手伝いをする事になった。

僕らは部室を出て廊下を歩く。

不意に先生が質問してきた。


「君達、ツインテールは好きかね?」


髪型のツインテールしか知らず。

コレが怪獣の名前だと認識していない人が聞いたら、セクハラだと思うだろうギリギリの質問だな~。


古代怪獣ツインテール。

名古屋城の金のシャチホコって見た事ある?

あれの魚の部分のディテールを、全て虫に寄せるとツインテールになるよ。

色はザ・土色って程の全身が土色で…。

顔は鼻と髪が無い人の顔に近く、目は分度器逆さまにしたの?って位に座っている。

口は左右にデカく大きくトゲ歯なんだ。

その顔と頭の部分が地面側にあり、胴体部分は地面から離れて垂直に反り立っている。

人で例えたら、まず腹這いになり首から下を垂直に空へと反らした格好さ。

尻尾の部分がムカデのような長い二股の触角になっていて、地面と接地している腹側の部分から尻尾までにびっしりと小さなトゲが無数に生えている。

そして、コレはとてもとても有名な話しなのだが…。

なんとエビのような味なんだ。


「ハイ!大好きです!!」

「私は苦手です」


僕とトキノンの答えは真っ二つに分かれる。


「えっ!?どうしてっ!?」


「どうしてって…。

あの顔と、虫に近い造形と、触角と…。

特にあのびっしり生えてる無数のトゲが苦手…」


トキノン…それ…。

ツインテールの全部じゃないか…。

ムラマツ先生は話しを続ける。


「私はね、怪獣の中でツインテールが一番好きなんだ。

あの愛嬌ある顔、体型、行動、味も含めて全てが大好きなんだ」


ツインテールは確かに食用として、人にも食べられている。

味は濃厚なエビのような味で。

僕も大好きだ。


「昨日の祝日の事だ。

私が育てている怪獣の為に、久しぶりに素材クエストを請け負う事にした。

そうしたら、向かって来る怪獣達の中にツインテールが二匹いたのだよ」


「どうやらその二匹はツガイのようで…。

忍びないのでツインテール以外の怪獣から先ずは倒していき、残るはそのツガイの二匹だけとなった時だ。

ツインテール達が繁殖行動を始めた」


「ツインテールの繁殖行動はね。

まるでハートを描くように顔同士近づけ、互いのお尻の模様部分を密着させ触手を絡め合い、そして…」


僕は先生の説明を頭の中で想像してしまい物凄い後悔した。

想像してご覧!

ツインテール同士の濃厚なキスシーンと絡みを…。


「…うっぷ…!」


「先生!!

トキノさんが具合悪くなってるからやめて下さい」


トキノンも頭の中で想像してしまったようだ。

御愁傷様。


「ああ、すまない…。

私とした事がつい…。

なので仕方なく産卵をするまで待つ事にしたんだが…。

いくら待っても産卵行動をとらない」


「繁殖行動から産卵までの期間が長いんじゃ無いんですか?」


「それは無い。

私の読んだ論文からは、繁殖行動から2時間もしない内に産卵を始めているのが確認されている。

どうにも討伐を長々と躊躇っていると、なんだか可哀想になってきてね…。

だが、怪獣ブリーダーズとしては討伐はしなければならない。

ならばせめてグドンの血肉にでもと思ってね…」


先生のその説明からトキノンはある結論を確認する。


「あの…それは……つまり…。

私のグドンに、そのツインテール達を食べさせようという事ですか?」


「そうだが…」


そうなのだグドンはツインテールが大好物なんだ。

とてもとてもイヤそうな顔をするトキノン。

察して先生はこうつけ加えた。


「ただでとは言わん。

私の持ってる素材カプセルを君達に譲ろう。

素材クエストだと思ってくれたまえ」


そう言われても露骨にイヤそうな顔を続けるトキノン。

それを更に察するムラマツ先生。


「部活動内内申点は確実に上がる!!

どうかね?」


「分かりました。お手伝いします」


トキノーーーン!手の平返すの早や!!

あっ!僕こういう状況なんていうのかネットで見た事あるよ。

即堕ち2コマだコレ…。


「では靴に履き替えて正門へ集合してくれ。

私は少し準備がある」


僕とトキノンは、靴へ履き替え正門で先生を待つ。

そして、ムラマツ先生のベータカプセルを使って荒野へと転送。

その荒野の先に、件のツインテール達はいた。


「もう産卵してるんじゃないんですか?」


「イヤ、論文で見たような状況にはなっていない。

体も両方とも全体的に膨らみふくよかなままだ。

産卵はまだしていないようだ」


トキノンは一つため息をつくと、仕方なく…。


「グドン…おいで…」


自らのベータカプセルでグドンを呼び出し巨大化させる。

そしてメガネ型ヘッドギアを装着。

僕と先生も自らのメガネを装着する。

このメガネは複数の衛星カメラとリンクしていて、俯瞰視点や別角度からの様々な視点から怪獣達を捉える事が出来るんだ。


Σ「……!?」


グドンはツインテールを見つけた事でヨダレをタラ~と一筋垂らす。

よっぽどツインテールが大好きなのだろう。

準備を終えたトキノンは、一つため息を吐くとグドンへと命令する。


「グドン!!

ツインテール食べて……ヨシっ!!」


そう命じられたグドンはまるでお預けを食らっていた犬のように大ハシャぎ。


「グゥワォオオ~ーーーンン…」


雄叫びを高らかにあげ、ムチ状の両手を地面へと激しくΣバシンΣバシン何度も打ちならし。

土煙が柱のように空へ舞い立ち、その喜びを全身で表現する。

そんなグドンに気づいたツインテール達はなんと!!


「グァァァ~ン~」

「グワヮヮグァァァ~ン~」


二匹は鐘のような鳴き声を一斉に上げ。

そして、一匹のツインテールが…。

なんとグドンへとイキナリ全速力で猛突進!!!!


「えっ?なん?ちょっ!ちょっ!まっ!」


そして!!

尻尾を左右へと小刻み振り回しタイミングを取り…。


「えっ!?まって!まって!!!!!」


空高くへ大きくジャーンプ!!

ツインテールは自らの彼女を守る為なんだろう!

なんと自らの天敵たるグドンへと飛びかかったのだ!!


ツインテールの必殺技!!

フライングバイトだ!!!!!!!


Σバドゥーーー~ーーーン!!!


アノ顔面からグドンのボディへ雪崩れ式に突っ込む!!!

まるで、自分から食べられに行っているようだ。

イキナリ体当たりされ吹っ飛ばされるグドン。


「キイャァャャアアーー~ーんん……!!」


怪獣の鳴き声では無い、トキノンの悲鳴である!!

この攻撃で誰が一番驚いたって…。

トキノンが一番驚いたのだ!!


これには僕もムラマツ先生もビックリ!!

そして、卒倒し気絶するトキノン!!


いったい何があったのか!?

トキノンのメガネの設定を良くみたら…。


「あっ!!

トキノンのメガネの視点設定が怪獣視点になってる!!!」


「ぬっ!?ツインテールに飛びかかられる体験をしたのか?

なんと!!なんと!!うらやましい!!」


説明しよう。

衛星から複数映像をダイレクトレンダリングしCGを瞬時に合成する事で、自らが指揮する怪獣に近いカメラ視点も選択出来るのだ。


つまり、ほぼグドンと同じ視点を共有し、ツインテールの顔が高速でドアップに向かって来る恐怖体験をトキノンはしたのだった。


想像してご覧…。

大型犬程の大きさのゴキブリ+ムカデのクリーチャーが、自らの顔面へと飛びかかって来る瞬間を…。

これに近い!!

これは…。

トラウマものだな…。

ムラマツ先生以外…。


「仕方ない!!ムラマツ先生。

トキノさんの代わりに僕が臨時でグドンを指揮します。

トキノさんを頼みます!!」


「ああ、分かった!!頼む!!」


「トキノン、ベータカプセル借りるよ!!

トラブル申請!!

主ブリーダー負傷により。

ブリーダー登録番号578885558が代理指揮を勤めます!!

グドン行け!!反撃だっ!!」


グドンは余りダメージを、受けていないようだ。

さすが防御力には定評のあるグドン!!

直ぐ様立ち上がると、そのムチ状の腕を大きく振りかぶり…。

ツインテールへ向けて攻撃!!


Σバシーーーーーーーン!!


ムチ状のその腕が、ツインテールのボディへと当たりはしたがまるで効いていない。

仕方ない!

僕は高らかに叫び命令する!!


「グドン!必殺技ウィップラッシュだ!」


「グゥワォオオ~ーーーンン…」


僕の命令にグドンは応え、力をタメ…!!

次にその巨体を左右へ大きく揺らしつつ、ムチ状の腕を全力で振り回し…。


Σバシーーーーーーーン!!

Σバシーーーーーーーン!!

Σバシーーーーーーーン!!


ツインテールへ向け連打!連打!連打!!

確実にツインテールに当たってはいるのだが、効いてる素振りがまるでない…。

ツインテールのお尻の辺りがプルプルと揺れてるだけだ。


あれっ?おかしいな?これってなんだか…。

トキノンのグドン…もの凄く弱くない!?


「トキノーーーーーーン!!!!!!

君!グドンをどうやって育ててたの!?」


Σ「……へっ!?えっ!?へっ?」


僕は思わず叫んでいた。

そしたらその叫びで思わず飛び起きるトキノン。

僕の疑問に答える。


「どっ!?どうやってって……………。

主にドッグフードとカッパえびせん食べさせて育ててたんだけど………。

ダメだった?」


……ドッグフードって…。

……カッパえびせんって…。


顔の見た目確かに犬ッポイけど…。

そりゃ弱いままのはずだよ…。

怪獣の成長や強化に絶対必要なカプセル栄養素が、まるで摂取されてないんだもの…。


ツインテールはコレ幸いにと、何度も何度もグドンへと飛びかかる。

グドンは身を屈め腕で顔を覆いガードしつつ何とか耐え忍ぶ。

あれじゃまるでイジメられてるみたい。

これ、グドンがツインテールを食べるどころか、逆にツインテールがグドンを食べる勢いだ。

このままでは押し負けてしまう。


「仕方ない!!

ブリーダー認識番号578885558のサポート怪獣をサポーター枠で召喚!!

出でよ!!デスレムさん!!!!」


僕はデスレムさんをサポーター枠で召喚する事にした。

ベータカプセルの強い光と共に顕現するデスレムさん!!


「あっ!もう少し腰の辺りを強めに踏んで頂けますか?Σんっ?」(デスレムさん)


Σ「んんっ!?」(僕)


Σ「んんんっ!?」(デスレムさん)


寝そべったままで腰に按摩マッサージ店のバスタオルを乗せ顕現するデスレムさん。

そうだね…。この状況…。

アレだね…。


「何で私がボディケアしてる最中ばかり呼び出すんですか!?」


「ゴメン!!!

けど緊急だったんだって!デスレムさん」


「お願い!私のグドンを助けて!!

このままじゃ私のグドンが食べられちゃう!!」


トキノンに半泣きで頼まれ改めて冷静になるデスレムさん。


「なるほど…ツインテールにグドンですか…」


デスレムさんはツインテールに襲われているグドンを見て瞬時にこの状況を看破する。


「……ふむ……。

もしかして、繁殖期のツインテールにグドンが襲われ、負けかかってるんですか?

珍しいですね…」


「そうなの!!だからお願い!!

私のグドンを助けて!!」


トキノンはデスレムさんへお願いし、僕はベータカプセルのフラッシュで元の大きさへと戻す。


「全く、仕方ないですね。

秒で終わらせますよ…」


元の大きさへと戻ったデスレムさんはそう言うと…。

全速力でグドンの元へて助太刀に行く。

そして、大きな左手から炎を繰り出し、グドンへと飛びかかっているツインテールへと浴びせた。


Σゴゴゴゴゴゴゴゴォォ……


Σ「グァァァ~ン~」


油断していたのかマトモに喰らい鳴き声を上げながら倒れこむツインテール。

一撃でかなり弱ったようだ。


「今ですよ!グドンさん!!

ホラっ!美味しいご飯が食べれますよ!」


デスレムさんのその掛け声で、ガードを解き気力を吹き返すグドン。

そして倒れているツインテールに対し、またもグドンの必殺技ウィップラッシュを叩き込む!!


「グゥワォオオ~ーーーンン…」


Σバシーーーーーーーン!!

Σバシーーーーーーーン!!

Σバシーーーーーーーン!!


自らを奮い立たせる雄叫びと共に、ムチ状の腕を何度も何度も叩き込むグドン!!

なんかイジメられっ子が腕をブンブン振り回して反撃してるかのようだ。

その内の何発かはツインテールの顔面へと打ち込まれた。

コレがクリティカルとして効いたのだろう。

ツインテールは、その逆さ分度器のような座った瞳を静かに綴じて行くのだった。


「ハイ!エイジさん終わりましたよ。

人間大へと戻して下さい」


「デスレムさん!もう一匹!

もう一匹ツインテールは居ますよ」


「あっちはたぶん大丈夫ですよ」


そうデスレムさんが断言した時だ。

倒れ付しているツインテールを、グドンがおもむろに貪り食べ始めたのだ。


「グドン待て!お預け!お預け!!」


トキノンの言葉はもう完全に聞こえていない。目の前のツインテールに夢中だ。


ΣバキバキΣグシャボリむしゃむしゃクチャ…ニチャぁ


堅いカラごとエビを食べるかのように、咀嚼音がやたら大きくエグい…。

しかし、とても美味しそうに食べているのは、端から見ててもハッキリと分かる。

とてもとても良い笑顔なんだ。

美味しい!!その言葉は発せずとも伝わるね。

だが、トキノンは完全に目を瞑って見ないようにしている。


「ムリムリ…私…見れない…」


まあ、そうだよね…。

見ようによっては、ペットがゴキブリを食べてるようにしか見えないよね…。


そのグドンの食べ始めと同時だ。

もう一匹のツインテールの様子が明に変化しだした!!


「グワヮヮグァァァ~ン~」


大きな鳴き声をあげると…。

反り立っていた体を力一杯頭の側へと屈めて、なんと涙を流し始める。

ツインテールは体の姿勢は コ の字のようにして…。

お尻の模様部分を、これでもかと頭の上へと近づけ。

力み始めた。


「これって…まさか?」


「そう!産卵です。

ツインテールは産卵のトリガーとして…。

おそらく仲間のツインテールがグドンに食べられなければならないんでしょう。

先程倒したツインテール。

グドンに食べてほしくて突っかかっていましたよ。

要は繁殖の為の異種族共生関係ですね」


ウソではなさそうなので僕はデスレムさんを人間大へと戻す。

しばらくすると…。

1メートル大はあろうピーナッツ型の岩のような卵を、粘り気があり粘着質の液体と共に、自らの頭の上へと無数に産み落としてゆく。

その形と大きさと物質から、モコモコとツインテールの頭の上へ卵鞘(らんしょう)状に積み重なり。

まるで巨大なアフロヘアーかの如く、黒く大きく形成されてゆくのだった。


「スゴい!こんなの初めて見た…」


僕は感心しっきりさ。

ツインテールは全ての卵を体内から産み落としきったのだろう…。

コ の字状に曲げていた体を、ダラリと力なく地面へと投げ出し。

うつ伏せ寝をしているかのように、自らの生涯にその幕を降ろした。


「もしかしてご存知なかったのですか?

グドンまで用意して…」


「ご存知も何も初めて知ったよ。

デスレムさんはどうして知ってたの?」


「前に一度だけ、似たような状況に遭遇しましたから…。

ですが、あちらの方はしっかり撮影をされてますよ」


デスレムさんの指し示した方向を見ると…。

ムラマツ先生が一心不乱にツインテールの写真や動画を撮影している。


「…素晴らしい…なんと…いう…尊さ…」


ツインテールを写真に撮影しながら、尊みの涙をハラハラと流すムラマツ先生。


「あの…ムラマツ先生?

もしかして、この撮影をしたくて僕達を連れて来たんですか?」


「半信半疑…。

もしかしたらと期待して考えてはいたよ。

学会や研究論文でも、産卵条件は良く分からず議論は分かれていたしね。

なので、検証したくて君達に手伝ってもらった」


「そんな事の為に…。

そんな事の為に私のグドンを巻き込まないで下さい!!」


「そんな事?

君らは知るまい…。

食糧不足で全人類が困窮し、もはや怪獣を食べるしか無いとなった、あの絶望し追い詰められた状況を…。

そしてその時に食べたツインテールの美味しさを…。

君らは知るまい……」


怪獣が出現するようになって、この地球の食糧生産や食糧消費が大変な事になったんだ。

全人類食糧難…。

かなり酷い状況だったとテレビで見た事がある。

その時に食べれる怪獣が調べられ、ツインテールは食用に適していると判断された。

グドンへと食べさせる分まで、人類の食糧へと回され、ツインテールの繁殖の仕方が検証し辛くなったのだろう。

怪獣混乱期の話しを持ち出されると…。

僕らは反論し辛い。


「なら先生は、ツインテールを養殖したくて、この検証をされたんですか?」


「そんな事決まってるだろう!!

ツイッターとインスタでバズッて、ネットのツインテール倶楽部で自慢するのだ!!!」


「「……………………」」


知の探求…。

本来であればもっと高尚な事なのだろうが…。

この日本という国。

そして日本人というちょっと変わった人類は、自らの仲間界隈で自慢したいというのが、第一行動原理として成立するようだ。


そして後日…。

またも怪獣学の授業が始まる。


「…という経緯があっりまして…。

ダダ星人のミクロ化銃の原理をついに解明。

怪獣をソフビサイズへと縮め食糧提供する事で、人類は食糧危機を免れる事に成功し怪獣共存の道が拓けたのです。

後にこれを法令化。

怪獣の成育及び一般生活怪獣に限り。

飲食の際にミクロ化銃を使用し、小さくなって良い事になっています。

この全人類食糧危機からミクロ化銃実用化までの…。

この出来事を1973年怪獣ショックと言われてます」


「先生!!僕も怪獣みたいに!!

小さくなって、プリンにダイブしてみたいで~す。

何で人間はミクロ化銃で小さくなって、食べ物を食べてはいけないんですか~?」


「そこは…。

食品栄養学と食品流通経済学が関わってきますね。

詳しくは高校で習いますが…。

それを国単位でやって失敗した国があります。

当時の旧共産圏の多くでそれは起きたのです。

ココに一つの栄養のある惣菜パンがあるとします。

この一つのパンを、ミクロ化された人10人で食べ、皆お腹いっぱいになったとします。

ですが…。

食品の栄養で言えば、元と同じ10分の1の栄養しか摂取出来てないのです。

ミクロ化し腹は満たされても栄養まで補える訳ではなかった。

気付いた時には既に遅く。

食糧品が必要量経済として回らなくなっていた。

ついには、慢性的な栄養失調と食糧難の二重区が重なり餓死者を沢山出したのです。

ウルトラストーンからなる鉱石生命体と、我々人類が必要とする栄養素は違うのです。

人類にとってバランスを欠く発想と行為…。

それこそが人類生存の最大の脅威となるのです」


ムラマツ先生の授業は続く。

そして僕は空をポカリと眺めながら、ある事を考えていた…。


『ツインテールのアフロ…。

似合ってたな……』


ココは怪獣と人間が共に共存している地球。

僕らはこの地球で生きている。

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ウルトラ怪獣バトルブリーダーズ同人小説 @ei6

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