始めてのバトル!!対決レッドキング

数日後。

僕は自宅の屋敷に戻っていた。


古びた僕の屋敷の周りは山と川と畑ばかり。

周囲に草花は自然のごとく茂り、風と共に揺れ。

小鳥はさえずり、日光は柔らかく降り注ぐ。

たまに猿が降りて来て、イノシシはざらだ。


うん!そうだね!田舎だね!


そして僕は!

未だにシリコ玉を抜かれたように、腑抜けとなっていた。

オークションでギリギリ落札出来ないって、結構心にダメージが来るんだね。


ビックリだ!

その後、東京観光もしたんだけど……。

うっ!!記憶が…。

あまり覚えてはいない。

そんな僕をナビィが励ましてきた?


「全く何日、腑抜けになってるんですか?

エイジさん!

いい加減正気に戻って下さいよ~。

怪獣ブリーダーとしてヤル事はいっぱいあるんですよ。」


「そうは言ってもさ~。

今はちょっと怪獣関係に関わりたくないんだよね~。」


窓辺でゲームをしながらナビィに答える。

ナビィは呆れながら、部屋へと入ってきたトン爺に助けを求めた。


「ふゥッ…。

全くトンさんも何か言って下さいよ。

これじゃブリーダーとして腐るだけですよ。」


「失敗は成功の糧とせよ。

失敗を悔やむその気持ち多いに構いません。

ただ、その悔やんだ分だけ心と知識を成長して頂く。

今はそれで十分です。

エイジ様。

ココアでもお入れしましょうか?」


「あっ!お願~い。後何か甘いモノを…。」


僕がそう答えたその時だっ!!


ナビィからもらったヘッドギアが、突如として警告音を鳴らしだした。


ビービービービービー…


その音は無機質で一定間隔で音を発しているだけだったが…。

心がザワつくと言うか、本能で不快と言うのかな?

酷く不安にさせる音だった。


「ナビィ?何これ?何なの?」


ナビィのフェイスガードが下り、何かを相互通信しているようだ。


「………………。

どうやらレッドキングが出現したようですね。

場所は荒野。

ブリーダーはベーターカプセルを使い、至急向かって下さいとの事です。」


「レッドキングの数は一匹。

町からもかなり離れているので、人に対する脅威度としてはFです。

ブリーダー下位ランク向けの仕事ですね。

どうしますエイジさん?」


僕はそれを聞くと心の中で火が灯るような…。

そんな何かを思い出した。


そうだ僕はこんな時の為に怪獣ブリーダーになりたかったんだ。

ふとトン爺を見る。


「ココアとクッキーは帰ってからお入れしましょう。」


流石トン爺分かってる。


「ヨシッ!ナビィ行こうっ!!

レッドキングを倒しにっ!!」


「はいっ!頑張りましょうエイジさんっ!」


僕はヘッドギアを装着すると、ベーターカプセルの底部スイッチを人転送へと回し確認。

頭上高くに掲げ側面のスイッチを押した!


Σピカッキラリ!!


ベーターカプセルが眩く光ると同時。

僕とナビィは草も無く岩ばかりの荒れた大地。

荒野へと転送され立っていた。

荒野特有の乾いた風が僕とナビィの間を吹き抜ける。


その風の先。

僕達の視線の遥か先には…。


「ギャオオオオオオオ…ン!!!!」


レッドキングが…。

岩山を破壊し、暴れ、雄叫びをあげている。

その体長はビルのようにデカイ。


まさしく恐怖の対象としての怪獣だ!!

だが、僕はそんな怪獣に目が釘付けになっていた。

僕の頭の中に、ある言葉が浮かぶ。


『コワカッコいい…。』


憧れは時に恐怖すら凌駕する。

それがどんな存在であったとしても…。


どくろ怪獣レッドキング。

頭は細いのだが、体がずんぐりムックリとしていて、蛇腹状のゴツゴツとした筋肉質な体と長いシッポを持っている。

顔には鋭い牙がはえてるが、瞳はつぶらで小さく不思議とそれが可愛く見えた。

レッドと名前に着いてはいるが体の色は何故か黄色い。

だが一説には、自らの敵怪獣の返り血で真っ赤になっていた所を、第一発見されたのでレッドキングと名付けられたと聞いた事がある凶暴な怪獣だ。


「あの~?エイジさん。

一つ聞いてもよろしいですか?」


ナビィが不思議そうに話しかけてきた。


「な~に~?ナビィ?」


「コチラの怪獣を出さないんですか?」


「あっ!?ダメだ~…。

つい見とれてた~。」


僕はベーターカプセルを、底部スイッチを怪獣出現に合わせる。

音声でベムラーと恐竜戦車の名を叫び、側面のスイッチを押す。


Σピカッキラリ!!


光りと共にベムラーと恐竜戦車は人サイズで現れる。


「ベムラー、恐竜戦車…。

やるぞ、レッドキング退治だ。」


僕は怪獣達の目を見て、そう話しかける。

すると不思議と…。


ベムラー『任せて…。』


恐竜戦車『脳筋の相手は得意さ、任せな坊主。』


二体共、言葉をしゃべる怪獣では無いけど、そう言ったような気がした。

二体の体をポンポンと軽く叩く。

ナビィも怪獣達にアドバイスする。


「レッドキングはその怪力を武器にしてきますから。

殴られれば、只じゃすみませんよ~。

油断してると岩石を投げてきますから気をつけて下さいね。」


二体共無言で頷いた。

僕とナビィはある程度怪獣たちから距離をとり。

怪獣巨大化に底部スイッチを合わせ頭上高く掲げて側面スイッチを押す…。


カチッ…


Σピカッキラリ!!


Σビュィぃーーーーーン!!


怪獣達はまばゆい光りと共に本来あるべき大きさへと戻っていた。

レッドキングも流石にコチラに気付いたようだ。


「行け!!ベムラー!恐竜戦車!!

レッドキングをやっつけろ!!」


ヘッドギアに取り付けられているマイクに向かって、怪獣達へ号令をかける!!

二体は全速前進。

荒野の大地を突き進みレッドキングへと向かっていった。

しかし…。

ナビィが何か不安そうだ。


「あの~エイジさん…。

そんな曖昧な命令で良いんですか?」


「えっ?何か変かな?」


「…………。

まあ、良いか…敵は一体だけですし…。」


変なナビィ。

何を言いあぐねていたのか分からない。

まあ、後で聞けば良いか。

そうこうしている内に、怪獣達は互いの攻撃範囲内へと近づいた。


良い具合に先手はコチラがとれた。

ベムラーがその長い首を振り回し、ヘッドバッドをレッドキングにブチかます!!


ドガッ!!


レッドキングの頭へと命中。

響くような音が遠く離れたコチラまで伝わる。

レッドキングはのけ反りよろける程のダメージを食らった。

レッドキングには悪いがコレは痛そうだ。


続いて恐竜戦車。

恐竜戦車はキャタピラを双方全速逆回転させて急旋回!!

その遠心力を駆使して、シッポをレッドキングの腹へと打ち付ける!!


ボズンッ!!


筋肉の塊であるシッポがレッドキングの腹へとめり込み。

そのビルのような巨体をぶっ飛ばした。

ベムラーの攻撃より効いている。


「ヨシッ勝てる!!」


そう僕が確信をし早めのガッツポーズをとったその時だ。

レッドキングが新しく自然出現したんだ。

図で表すと下のような感じ…。


▼←ダメージを受けてるレッドキング

△△←ベムラーと恐竜戦車




Σ▲←新しく出現したレッドキング


だが、目の前のレッドキングを倒してから、新たに現れたレッドキングに二体で対処すれば何とかなる!

……そう思った瞬間。


▼←ダメージを受けてるレッドキング

η η

↓↓

▽▽←ベムラーと恐竜戦車


▲←新しく出現したレッドキング


ベムラーと恐竜戦車は、ダメージを受けたレッドキングを倒さずにそのまま放置。

真後ろのレッドキングへと攻撃を仕掛けようと反転。

結果ベムラーと恐竜戦車は、自ら挟み撃ちに飛び込んだ形となった。


二体のレッドキングによる逆襲が始まる。


新しく出現したレッドキングは、ベムラーをゲンコツで…。


Σ殴打!バガッ!!

Σ殴打!!ドガッ!!

ΣΣ殴打の嵐!!!

正にタコ殴り状態だ。


ダメージを受けた方のレッドキングは、その怒りに任せ足元の大岩を持ち上げると…。


「ギャオオオオオオオ…ン!!!!」


雄叫びと共に必殺技「岩石投げ」を恐竜戦車へと繰り出した!!


Σドガーーーーーーーーンッ!!!


恐竜戦車は背中にその大岩を喰らい吹っ飛ぶ。

ハデに土煙をあげながら激しく横転してしまった。


「どうして…?

どうしてこんな事に…!?」


僕はワナワナと震え気が動転した。

ナビィが理由を説明しだす。


「あー…。

やっぱりこうなっちゃったかー。

怪獣を本能のままに放置したらそりゃこうなりますよ。

勝てるモノも勝てません。

怪獣への命令は小まめに出す。

ブリーダーの鉄則ですよ。」


後にこの事を二体に聞いてみた。

二体は目で語る。


ベムラー『何かね、後ろに立たれてるのイヤだった…。』


恐竜戦車『俺の後ろに立って良いのは子供と女だけさ。』


との事。

怪獣の本能はやはり獣に近いのかな?


場面を現場に戻す。

僕は慌てながらも、二体に命令を出そうとしたが…。


「ベムラーはレッドキングをえ〰️と…!ドシよ?

恐竜戦車はまずは援護?

イヤ逃げて、イヤえっと…アノ…あれ?」


なかなか上手くいかない。

焦ると、現状把握が出来ないし、適切な対処が思い浮かばないし、それを言葉で命令なんて…。

難し過ぎる。


だがしかし、横転した恐竜戦車が起き上がろうとした時だ。

ダメージを受けた方のレッドキングの真正面を向いて起き上がってくれたんだ…。


この瞬間の命令は慌てた僕でもわかった。

僕は心の底からそれを叫ぶ!!


「恐竜戦車ーーーーーーーーーー!!

三連装砲一斉射!!!!!!」


恐竜戦車『Σ………………!!』


Σドン!Σドドン!Σドドン!Σドドン!!!


恐竜戦車の三連装戦車砲から一気に弾丸が放たれる。

その弾丸がレッドキングへ何発も何発も…。


頭!顔!腕!腹!太腿!!…

体中あらゆる場所へと命中した!!


「ギャオオオオオオォ…ン……!!!!」


ダメージはもう蓄積していたんだ。

レッドキングは堪らずにダウン。

完全に沈黙した。


恐竜戦車『…………………。』Ⅲガクッ…Ⅲ


だが、恐竜戦車もまた力尽きた。

かなり距離は離れているが、僕はベーターカプセルを恐竜戦車へと向けると…。


「恐竜戦車ラボへ戻れ。」


側面スイッチを押した。

恐竜戦車は光りに包まれラボへと戻っていった…。


「ありがとう恐竜戦車。」


残る敵は新しく出現したレッドキングを残すのみ…。

ベムラーも必死に反撃するが、攻撃力が全く違う。

このままではヤバい押しきられる。


「ベムラー逃げろ!!」


その命令でベムラーは踵を返し、レッドキングから逃げだした。

ナビィがある提案をしてきた。


「エイジさん?討伐を中止して帰りますか?」


「僕はただ逃げているだけじゃ無いんだ。

ベムラーの必殺技ペイル熱線砲を撃てるチャンスを掴む隙を作りたいんだ。」


「なるほど、それは良い作戦ですが…。」


だが、逃げるベムラーを追うレッドキング!!

なかなかその隙が出来ない。


そんな時だ。

装着しているヘッドギアへ通信が入る。

サングラス部分に相手の情報が表示される。

通信相手は?トン爺だ!


「エイジ様。

ただ今マーケットから連絡がございました。

落札者がインペライザーの購入をキャンセルされ、次点のエイジ様に購入権利が移りましたが…。

どうされますか?」


これぞ僥倖!!

必殺技の如く即座に叫んだ。


「買うーーーーーーーーーーー!!!」


「分かりました。

そう仰ると思いまして購入待機しておりました。

Σターーーーン(エンターキー押す音)

ハイっ!!

今、振り込み終了です。

インペライザーは今からエイジ様のモノです。」


「ありがとうトン爺!!」


怪獣マーケットでは購入キャンセルが発生すると、こういう事も起こるんだ…。

僕は早速インペライザーをこの場に呼ぶ。


「出でよ!インペライザー!!」


召喚されたインペライザーを即座に巨大化!

ベムラーの援護へと向かわせる。

レッドキングまでかなりの距離があったが…。


インペライザー「……………!!」


土煙を巻き上げ巨大なSLかのように、インペライザーは一気にその距離をぐんぐんと詰めた。

早い!!流石インペライザー!!早い!!

そしてインペライザーは…。


インペライザー「………………!!」


Σボゴォッ!!


レッドキング「ッ????!!!!」


鉄の塊であるその拳を、レッドキングの横っ面へと叩き込む!!

苦悶の表情を浮かべのけ反るレッドキング!

隙が出来た!

その間隙は絶対逃さない!!!


「ベムラー!!

ペイル熱線砲!!!!!!!!」


ベムラー「………!!!!!!」


ベムラーは一端口を閉ざすと、首を回しつつ頭と背筋をのけ反らす。

自らの全力を有らん限り集中させ溜め込み…。

我慢の限界を越えたと同時だ!!

全力は青く眩い熱線へと変わり、その大きく開かれた口から、一気にレッドキングへと放たれる!!


ギュワーーーーーン!!

ドゴーーーーーンン…!!!


ペイル熱線砲はレッドキングへ命中!!


「ギャオオオオオオオオオ…ン…!!!!」


吹っ飛ばされ、地面へと叩きつけられるレッドキング。

最後の雄叫びと共に完全にダウンした。

僕にはそれが少し悲しく聞こえた…。


2体のダウンしたレッドキングを怪獣ラボへと送るため、ベーターカプセルを取り出しその光りを当て続ける。

動いていると転送出来ないそうで…。

これが結構面倒くさい。

その作業の最中、ナビィにある質問してみた。


「ナビィ。

レッドキングはこれからどうなるの?」


ナビィはその質問にさらりと答えた。


「野良の怪獣ですからね。

マーケットへ売られるか…。

怪獣DNAへと戻されるか…。

その二択ですね。」


「何だか可哀想だな…。」


「…………。

人類が怪獣と共に生き残る。

この地球では、誰かがやらなければならない仕事です。

ブラーヤ・エイジさん。

改めて聞きます。

怪獣ブリーダーというこの仕事…。

続けられますか?」


その質問にはナビィの意思というのかな?

力のようなモノを感じた。

僕はそれに決意と決心と共に答える。


「続けるよ。

僕は怪獣が好きだからね…。」


怪獣が日常としている星。

地球

僕らはこの地球で生きている。

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